保護猫subは愛されたい

あうる

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番外3 にゃんにゃんにゃん

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「なぁ~んて、ね?」

ふっと力を抜いた榎本は、「俺のタイプってもうちょっと可愛い系なんだよね。おにーさんも悪くはないけど、俺が今から育て直すのはちょっと無理そうだし」と、紅茶を飲み干しギャラリーになっているボードを指さした。

「ま、ゆっくり見て行ってよ。
内容が内容だけに招待客以外は貸切にしてあるし、なんならここでプレイしてくれても全然オッケーだから」

目の保養になるしねと空になったカップを指にひっかけカウンターへと戻っていく。
後はご自由に、ということなのだろう。

人気の少ない室内は、昼間であるにも関わらずどこか薄暗い。
雄吾に連れられ展示物のボードを見て回りながら、そこに見知った顔を見つけた晶は「あ」と小さく声を漏らす。

「これ、鈴鹿さんのパートナーの方……ですよね」
「これは彼女の店で撮られたものだね。よく撮れている」

薄暗い証明の中、むっちりと肉付きのいい裸体を晒したスポーツマン体型の男性が、太いあら縄で全身を縛られ、曲芸師のように宙に吊るされている。
顔を紅潮させ、恍惚とした表情を浮かべる男の汗までが感じ取れるような迫真の一枚だ。
他にも緊縛だけではなく、とてもではないが表に出せないような写真が多数。
秘部の修正さえもされぬまま、堂々と素顔をさらし映り込んでいる。

「彼らは殆どプロだからね。
縛る方も縛られる方も見せ方というものをよく理解しているよ」
「そーゆー奴等のこと、ロープバニーってゆーの。縛られずきな兎さんだな」

カウンターに肘を掛けた榎本が頭の上に手首を載せ、兎の耳のようにぴょこぴょこと両手を前後に動かす。

「あ、ちなみにそっちのはドミトレスクの正装ね。どぎつい衣装でしょ?海外のそっち系の店のナンバー1に撮らせて貰ったらしい。
ドミトレスクってのはまぁ、平たく言えば女王様かな」

それは丁度、晶の目の前にあったボンテージ姿の女性の写真のことだろう。
狭い店内はうまく出来ていて、榎本のいるカウンターからは、死角一つなく全てを見渡せる作りになっていた。
榎本は晶達がどこにいるのかを正確に把握し、その場で気になるであろう事象に補足を付け加えている。
つまり全ての行動が榎本には筒抜けなのだが、ここまで来ると逆に見事だと感心するしかない。
これも彼の持つ性質ゆえのものなのだとしたら相当に厄介だ。

「今、彼にパートナーがいない理由がわかるだろう?」
「……頷いてしまっていいものかどうか悩みますが、subであっても正直なかなか……」
「落ち着かない」
「………はい」

その通りだ。
常に監視されている。
雄吾と晶、二人もまた相互に依存し合う関係にあるが、あれはまたそれとは違う。
一挙手一投足、という言葉があるがまさにそれ。
悪意こそ感じられないが、なんともいたたまれない空気に常時さらされている。
勿論、今のこの会話も全て丸聞こえなのだろうが。   
それでも、ようやく一通りの写真を眺め終わった所でその異変は起こった。


ガチャ……。

「え~とおじゃまします~」

聞こえたのは、妙に間の抜けた若い女性のクスクスという笑う声。
まだ20代だろう、幼さの残る顔が赤らみ、酒に酔っているのだろうと想像がついた。

しかし…誰だ?
横を見れば雄吾ですら困惑した表情を見せている。 

「悪いけど今は貸切だよ、扉に書いてあるの見えなかったかな?」
「え?そうなんれすか?え?」

カウンターから出てきた榎本に諭され、キョロキョロと周囲を見返す小動物じみた動き。
身長は150センチ前後、真っ黒な長い髪に、モモンガのような変わった形の茶色の上着を羽織っている。
足取りはふらふらと頼りなく、やってきた榎元の前にぐらりとフラつき倒れ込む。

「あ……れ……?」
「君、大丈夫?こんな時間からこんなに酔って普通じゃないよ?なにか事件なら警察呼ぼうか?誰かに無理やり飲まされた?」
「けーさつ」
「そう、お巡りさんだ」
「……う?」
「なんでそこで首を傾げる?」
「けーさつは嫌いれす、私は大人、れす…」
「あーなるほど、補導されかけたんだな…?」

頑是ない子供のように、黒目がちなくりっとした目を動かし、「う?」と唸る女性。
意思の疎通ができないレベルの泥酔具合から見ても、どうやら完全なる闖入者のようだが、店の主である榎本が妙に楽しげに相手をしているのが気になる。

「酔ってらいれすよ」
「酒量がわからない若者はオッチャンキライだなー」
「……キライ、れすか」
「え、そこで泣いちゃうの?君、ウチに顔出すの始めだよな?」
「初めて…ひっぐ…」
「だよな、君みたいな子がいたら絶対に忘れない自信がある」
「おそまつさま…?れす?」
「う~ん、何を言いたいのか良く分からないが、ヤバい」
「ヤバイ…?ん~?ばいばい…?」
「あ。まて。バイバイじゃない、ほらこっちおいで」

意味不明な言動をしながら再びふらふらと歩き出し、店を出ていこうとする女性。
その肩を掴み、己の胸の中に抱き込むと、「あーくそ、参ったな」と余裕のない様子でボリボリと頭をかく榎本。
ふと彼が振り返り、こちらと目があった。

「なぁ、結構本気で気に入ったんだが……。この子俺が貰っていいと思うか?」
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