婚約破棄してきた強引御曹司になぜか溺愛されてます

田沢みん

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裏 あしながおじさまは元婚約者でした

婚約破棄 2*

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 雛子が達したばかりの弛緩した身体をシーツの上に投げだしていると、まだ熱の残るソコに何かが押しつけられた。

――あっ……。

 軽く頭を上げると、朝哉が自分のモノを握り締めて雛子の割れ目にあてがっているところだった。
 いつの間に装着したのか、立派な剛直が薄いゴムで覆われている。

 目が合うと、朝哉は劣情と理性の狭間で揺れる複雑な瞳で見つめてきた。

「ヒナ……お願いがあるんだ」
「ん……なぁに?」

「今後何があっても、たとえ俺を恨むことになったとしても……今日、これから俺がヒナにすることを全部覚えていて」

――えっ、どういう意味?

 戸惑う雛子から目を離さずに、朝哉は言葉を続ける。

「憎んでも恨んでもいい。だけど俺と結ばれたことだけは後悔しないでほしいんだ」
「えっ、朝哉……んっ!」

 朝哉は雛子が質問する余裕を与えずに、屹立をヌルヌルと数回滑らせると、愛液を十分に纏ったところでツルリと先端だけし入れてきた。
 十分に濡れていた入口は朝哉の突起部分を難なく呑み込んだ。しかし処女の膜がそこから先の侵入を頑なに拒み、押し返す。

「ん……っ!」
「ごめん、痛いよな」
「ん……だけど、最初はみんな…痛いんでしょ?」

「いや、みんなというわけじゃ……くっ……狭いな。ごめん……もうちょっと俺が上手くできたらいいんだけど……」

 朝哉だって初めてだ。いくら知識はあるといっても、痛がっている女の子相手にどこまで強行していいものか測りかねているんだろう。
 雛子の反応を探るように少し腰を押しつけては止まる。

「ごめんな……だけど俺は……やめる気はないから」
「いいの。やめないで」
「ヒナ……」

 腰を一旦止めた朝哉の背中に腕を回して、キツくしがみつく。

「朝哉となら痛くたっていい……朝哉じゃなきゃ嫌だ…」
「ヒナ……俺は……っ」

 痛みに耐えながら薄っすら開いた瞳には、朝哉の切なげな顔が映っている。

――どうしてそんな顔をしているの?

 今日の朝哉はなんだか辛そうな表情かおばかり。
 久し振りに会えたのに。やっと1つになれるのに……。

「朝哉……私は大丈夫だから」

 朝哉の首に手を回し顔を引き寄せると、自分から口づけて舌を差し出した。
 彼の肩が驚いたようにピクリと上がったけれど、すぐにキツく抱き締め返され唇を貪りあう。

「好き……」

 涙の粒と一緒に言葉が溢れでた。

――この人のことが好き……痛みも喜びも深く刻みつけられて、彼のこと以外何も考えられなくなってしまえばいい。

「朝哉……愛してるの…」
「ヒナ……っ!」

 震える声で呟いたその刹那、上体を起こした朝哉が腰を一旦引き、その勢いのままにズンと奥底まで突き破ってきた。

「ああぁっ!」

 目の前に火花が散る。
 身体の中心を矢で射られるような感覚。熱いような焼けるような……。
 汗ばむ身体に夢中でしがみつき、汗ばむ背中に爪を立てる。

「ハァ……ヒナ……奥まで入った」
「入っ……た?」

「ああ、ヤバい……女の子のナカってこんなに熱いんだな。熱くて柔らかくて……想像してたよりずっと気持ちいい。腰から溶けちゃいそうだ」

「気持ち……いいの? 本当に?」
「本当だ。すぎて……すぐにイっちゃいそう」

 ――そうか、朝哉はちゃんと気持ちいいと思ってくれてるんだ。

 そう思うだけで幸福感で胸が満たされる。同時に子宮がキュンと疼いた。

「うわっ! 凄い締めつけっ……駄目だ、ヒナ、そんなに締めつけたら……」

 少しかすれた余裕のない声。いつも以上に色気のある声音に下半身がゾクゾクする。
 奥の方から愛液がどんどん湧いてくるのが自分でもわかった。

「朝哉、いいよ、イって」
「大丈夫か? 動くぞ」
「うん……いっぱい動いて……朝哉」

 雛子に名前を呼ばれ、朝哉の漲りが中でグンと膨張する。
 凄い圧迫感。だけど自分の中に朝哉がいるのだと実感できる喜びと感動のほうが大きい。
 隘路がキュッとせばまって、朝哉自身を締めつける。

「くっ……ヒナ…ヒナっ、雛子……っ!」

 何かが吹っ切れたかのように、雛子の細い腰を抱え上げ、朝哉が激しく突き上げる。
 初めて同士の荒い行為は雛子に激しい痛みをもたらすものの、次第に甘い快感へと変わっていく。

 いつしかお互いが更なる高みを求めて腰をぶつけ合い、グチュグチュと粘着質な音をさせながら夢中で接合部を擦り合わせていた。
 ベッドの軋む音と喘ぎ声だけがホテルの部屋に響き渡る。

「ヒナっ、もう……!」

 朝哉が呼吸を乱しながらフィニッシュとばかりに抽送を速めると、子宮からブワッと快感の波が押し寄せて、雛子が嬌声を上げた。

「あっ、いやぁっ!……もう、駄目っ!」
「ヒナ……俺も……イくっ!」

 雛子が大きく背中をのけ反らせて叫び声を上げたのとほぼ同時に、朝哉が「くっ……」と喉を鳴らして動きを止めた。
 雛子の中でペニスがビクンビクンと震えながら数回に分けて熱い精を吐き出している。
 それがおさまると、「ハァ…」と呼吸を整えながら、固く抱き締めあった。



 フッ……と意識が戻ると、髪を優しく撫でる暖かい手のひらと、「ごめんな……」と繰り返す切なげな声。

――朝哉……どうして謝ってるの? 私が痛がっていたから? 大丈夫、私は幸せよ。朝哉と結ばれたこと、絶対に後悔なんてしないから……。

 ぼんやりした頭のままゆっくりと目を開けると、想像以上に至近距離に愛しい人の顔があった。色素の薄い瞳が揺れている。

「朝哉……泣いてたの?」

 涙は出ていなかったけど、なぜだかそんな気がした。

「ん……ヒナを抱けて良かったな……って」
「……良かった?」
「うん、良かった……本当に」

 雛子がフニャッと相好を崩すと、朝哉も釣られてフワリと微笑む。

「……ねえヒナ、あとをつけてよ」
「えっ?」

「俺の胸にキスマークをつけて。クッキリと濃いのがいいな」

 雛子の髪を一撫でしてから自分の左胸を指差して言う。

「ふふっ、濃いのって……」
「うん、しばらく消えないくらいのやつがいい。5年でも10年でも……一生残るくらいの」

「いいの?」
「ああ、今日の記念に」

 朝哉の胸元を見つめてから、心臓の辺りにゆっくり唇を押し当て、強く吸った。
 チュウッと短い音をさせてから離れると、そこには親指の先ほどの赤紫の痕がついていた。

「ヒナ、ありがとう……ごめんな」
「今日の朝哉は謝ってばかり。私は朝哉と結ばれて嬉しいんだから、謝ることなんてないのに」

 朝哉は薄っすらと微笑むだけで、それには何も答えなかった。


 幸せな時間が過ぎるのは矢のように速くて、気づくともう午後3時半になっていた。
 あと30分で帰らなければ、外出制限の5時間を過ぎてしまう。

「……もう行かなきゃな」
「うん、あっという間だね」

 急いでシャワーを浴びると車で寮に向かう。
 離れがたい。帰りたくない。

「身体……キツくない?」
「うん、少し違和感があるけど大丈夫」
「そうか……」

 帰りの運転中、朝哉はとても無口だった。思いつめたような横顔を眺めながら、彼も寂しいと思ってくれているのかな……と考える。

「来週は会えそう?」
「……ヒナ、着いたよ。バッグを忘れないようにね」
「………うん」

 先に降りた朝哉がいつものようにドアを開け、手を引いて降ろしてくれる。何故か彼の指先が冷たくなっていた。

 雛子同様、外出時間ギリギリで帰って来た生徒が何人か門の内側に駆け込んで行く。

「ほら、ヒナも行かなきゃ」
「うん、でも……」

 何がどうとはハッキリわからない。だけど目の前の朝哉に違和感を感じ、このまま行ってはいけない気がした。

「もう時間だ。早く行って」

 残り3分。早く建物の中に入り、寮母さんに帰寮の報告をしなくてはならない。

 後ろ髪を引かれる思いで門の内側に入り、振り返ったその時……

「ヒナ……」

 門の向こう側から名前を呼んだ彼が、信じられない一言を発した。

「ごめん、婚約を解消させてほしい」


――えっ?

 あまりにも突拍子もないことだったから、聞き間違いだと思った。
 思いながらもさっきからくすぶっていた不安が胸いっぱいに拡がって、心臓がドクンと嫌な音を立てはじめる。

「朝哉、何を言って……」

 一歩門に近づいた時、もう一度ハッキリとした言葉が耳に飛びこんでくる。

「ごめん、婚約はなかったことにして」

 まるでいつもの『じゃあまたね』と同じ口調で、今度はサラリと告げられた。

「冗談……」
「本気だよ。婚約を解消したい……いや、解消する」

 提案でもお願いでもなく『断言』だ。

 震える足をもう一歩前に出したところで、そこから先に進めなくなった。
 門の向こう側から見つめる瞳が真剣だったから。

――えっ、嘘、どうして?

 だって、今日は2人でデートして、思い出のホテルで愛を確かめあって、ついさっき結ばれたばかりで……。

 瞳を大きく見開いたまま茫然としていると、朝哉が口角を上げて語りだす。

「俺、クインパスを継ぐことにしたんだ」

――自分は会社を継がない、お兄さんに任せるって言ってたのに?

「大学生活も折り返し地点になってさ、改めて自分の将来を考えてみたんだよね」

 どうせなら人に使われるよりもトップになりたい。
 会社を継げば嫌でも注目されるし行動が制限される。なかなか羽目も外せなくなるから今のうちに遊んでおきたい。
 色んなことを経験しておきたいし、もっと広い世界を見てみたい。
 彼はそう、スラスラと語った。

「だから、2~3年海外をブラついて見識を広めるのもいいかな……って思ってさ」

「海外……に、行っちゃうの?」

 朝哉は笑顔で「うん、まだ行き先は決めてないんだけど」……とうなづく。

「日本での思い出作りはできたから、今度は留学という名の自由時間で思い出づくり?……かな」

――思い出作り?

「私は置いてかれちゃうの?」
「置いて行くっていうか……連れて行くって選択肢は最初からないから」

 ハハッと笑いながら言われて心臓が凍りつく。
 この人は何を言ってるんだろう。目の前にいる人が全然知らない他人のようだ。
 彼は恋人で婚約者で、ついさっきすべてを捧げた人のはずで……。
 

「ごめんな、婚約ごっこは今日で終わりだ」
「……ごっこ? 朝哉はずっと婚約ごっこをしてたつもりだったの?」

「ヒナは可愛いし一緒にいて楽しかったから、別に結婚してもいいかなって思ってたよ。結納を交わしてたらそうなってたかも知れないけど……実際はそうならなかったんだから仕方ない」

――結婚してもいいかな・・・・って……。

「ヒナを抱いたことは後悔してないよ。素敵な思い出ができた。めちゃくちゃ気持ち良かったよ、ありがとうな。今日のことは一生忘れない」

 もうなんの言葉も出なかった。
 雛子が恋愛だと思っていた日々は、朝哉にとっては思い出作りの一環だったんだ。

――今日のことも……。

 愛する人に捧げた初めては、彼にとっては留学前のひとときの思い出。海外で羽目を外す前に童貞を捨てておきたかった……ということか。

 今聞いた言葉を脳内で反芻するうちに身体が震えだす。思わず両手で耳を塞いだ。もう何の言葉も入ってこない。

「ヒナ……本当にごめんな」

 最後に彼の唇がそう動いたような気がしたけれど……それももう雛子の耳には届かなかった。

 茫然と立ち尽くす雛子に「じゃあね」と右手を上げて、朝哉はさっきまで雛子を隣に乗せていた愛車で去って行く。

 それが朝哉と雛子の別れになった。


 しばらくその場から動くことができなくて、雛子が寮に戻ったのは帰寮予定を20分も過ぎてから。

 罰則として1カ月間の外出禁止になったけれど、別に構わなかった。
 だって週末に出掛ける予定も楽しみも、雛子にはもうなくなってしまったのだから……。

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