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四
しおりを挟む「リィウス、起きている?」
しばらくして、相手がもぞもぞと寝台の上で身体を動かしたのがわかった。
「ああ……」
「ご指名だけれど……大丈夫?」
寝台上にどうにかリィウスは起きあがった。その顔色はひどく悪い。
だが、だるさと眠気を振りはらうように首をかしげる仕草がなんとも色っぽい。これは男たちが夢中になるわけだ。ベレニケは納得してしまった。
彼のもの憂げな表情から、目が離せない。寝台の上に、世にも痛ましく、それでいて世にも貴やかな純白の花が咲いているようで、妬ましさと哀れさに胸がつまる。
一瞬、リィウスは起きれそうにないとディオメデスに伝えに行こうかと、ベレニケは真剣に考えた。
今までにも客に指名された娼婦が月のものなどで体調が悪いときは、丁重にお断りして、別の娼婦をタルペイアがあてがっていたのを見たことがある。
ベレニケ自身、不調のときは、タルペイアに頼んで断ってもらったことがある。勿論、あとで叱られはしたし、ひどいときは罰金を課せられたりもしたが、断ることも可能だ。
憂鬱そうにリィウスが息を吐いた。
「客は、誰だ……?」
「……ディオメデスよ」
リィウスの顔にどんな表情が浮かぶのか、つい観察するような目をしている自分にベレニケは気づいた。
リィウスは唇を噛んだ。浮かんだ表情は、苦悶と諦めと、……そして、かすかな、本当にかすかな安堵のようなものだった。すくなくともベレニケにはそう察せられた。
「お断りする?」
一瞬、彼は驚いた顔になった。
「そんなことが出来るのか?」
「どうしても無理ならそう伝えてみるけれど」
勿論、それでも相手がどうしてもと望めば、金額を吊り上げて承諾する女もいる。断ってしまうと、客の機嫌をそこねてしまったり、他の娼婦に客を取られてしまうこともあるので、なるべくなら断りたくないという事情もある。
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