燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
235 / 360

しおりを挟む
 エリニュスは一瞬たじろいだが、血を舐めたかのような赤い唇は、笑みの形をつくっている。タルペイアや先ほどのアキリアもなかなかの烈婦だったが、この女はまた凄まじい気性を持っているようだ。リィウスは新たに背に汗が走るのを感じた。
 だが、じきに意識はべつの方向に向く。
(あっ、トュラクス、暴れないでくれ……)
 心のうちで哀願するような言葉を吐いてしまうのは、彼がこれ以上エリニュスを刺激するのが怖いせいもあるが、なにより微妙な震えがリィウスを責めたてるのだ。
 俯けた顔やトュラクスの胴をきつく挟みこむようにしている白い脚に何かを感じたのか、エリニュスが痛快そうに首を反らして、笑った。
「ほほほほほほ。馬の乗り心地は良さそうね、リィウス。そんなに気持ち良さそうな顔をしないでちょうだい。見ている私の方が恥ずかしくなるわ」
 こんな女に人前で名を呼ばれるのは本当に嫌だった。せめて目を閉じて今の現実から逃れようとしたが、それを許さない、というように女の細い手がリィウスの顎に伸びて来た。
「ちゃんと目をあけてご覧なさい。どう、お前の馬は? 悪くないでしょう。悦んでいるじゃない、ここが、」
「ああっ!」
 惨めな悲鳴があがってしまう。
 恥ずかしいことに快楽を示しはじめていた分身が、エリニュスの手にやんわりと包まれてしまう。
「まぁ、可愛いこと」
 嬲るような声にリィウスはまた頬を熱くした。
「は、放してくれ!」
 女の手に力を感じて、悲鳴をあげそうになった。
 相手はそんなリィウスを笑い、視線をウリュクセスに向けた。
「乗っているだけでは、物足りないでしょう? 前回の女奴隷のように、走らせてみたらどう、ウリュクセス?」
 訊かれたウリュクセスが苦笑する。
「今夜はさすがにそれは許してやってくれ。まだリィウスはこの手の乗馬が得意ではないのだ」
「あら、それでは見ている私の方が物足りないわ。それにリィウスだとて、こんなに悦んでいるのに……、ほら」
 先端を指でいじられ、リィウスは泣きじゃくりそうになった。こらえぬくことのできなかった涙が頬に流れる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...