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 マヌグスは食い入るようにして、いかにも気位の高そうな貴公子が乱れる様を凝視した。一瞬たりとも目を離すことができない。
 そのリィウスの背後で、彼と繋がれ、ともに苦悶の呻きをはなっている男の姿も壮絶だった。
 戦士が、いや、男が、人がとってはならない姿を取り、まともな人間なら正視に耐えないような浅ましい格好を晒し、トュラクスは迫りくる崩壊と必死にたたかっていた。
「ううっ、うううっ、ぐぅぅぅぅ!」
 だが、歯をくいしばって堪えようとしてみても、結局は逃れられる状況ではなく、いつしか、背後の青年を押すトュラクスの腰の動きに、奇妙なうねりが混じってきたことが、マヌグスには知れた。誰もが感じたろう。揶揄の言葉もなく、嘲笑も響かず、皆、二人の官能にあふれた舞踏を鑑賞した。見ようによっては二人が命賭けで戦っているようにも見える。
「うう……ん」
 トュラクスの揺れる腰に奇妙な優しい動きがまじる。相手を攻撃するのが目的ではなく、優しく説得するように。
リィウスも、おなじように腰にどこか甘やかなものをにじませ、返礼のようにトュラクスに腰を押し付ける。
 なんとも異常な様子だった。
 互いに背と腰をつかい、臀部に押し込まれた道具を押し付けあう。やがて二人とも、たかぶりきった身体が放つ熱の出口をさがしはじめている。
 もはや、二人とも理性は保てなかった。
「ううっ、くぅー」
「ああ……、ああっ、ああ……トュラクス、ま、待って、待ってくれ」
「だ、駄目だ、リィウス、俺はもう……」
 ごくり、とその場にいた誰もが、自分が唾を飲んだ音が耳に聞こえそうだ。
「うう……うっ!」
(お、いくな)
 マヌグスは目を見張った。自分までも激しい波を迎えて、そのまま流されそうな心持ちだ。
 トュラクスが目を閉じて、首を振る。
「あっ、ああっ、ああああっ!」
 したたる汗にみずからを全身琥珀のように輝かせ、ローマ最強とうたわれた男は、背後の青年と快を極めた。
 熱い吐息の波が地下牢を満たした。
 マヌグスは感嘆に息を吐いた。
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