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時の変わり目 一
しおりを挟む「くそ!」
ディオメデスは、血はつながらないとはいえ、醜悪な兄弟相姦図を見ていられなくなった。いや、別の男がリィウスを抱くということに耐えられなくなったのだ。
中央に向かって走り出そうとした瞬間、だが彼の腕は、強い力で引っ張られた。
驚いて振り向くと、そこにいたのはアウルスだ。
「はなせアウルス!」
「待て、……もうすぐ来る」
「……? なんのことだ? 誰が来るんだ?」
アウルスはいつになく思い詰めた顔をしている。彼のこんな顔を見たのは初めてだ。
「俺の仲間だ。新しい時代と世界をつくる連中だ」
さらにまた思いもよらない言葉に、ディオメデスは驚いて目を見張った。
アウルスの様子はどこかおかしい。目つきも顔付きも尋常ではないことにディオメデスは気づいた。
「な、なにを言っているんだ、アウルス?」
言ってから、ふと、気づいた。
そういえば、アウルスが以前からローマ軍の下級兵士たちとしばし会っていることに。
何人かはディオメデスも顔を知っている者もいるが、彼らは一部で評判が悪い。素行がどうのこうのというのではなく、なにかと皇帝への不満を口にし、現状の政治を批判するのだ。ある意味、たんに行いが粗野であるよりも物騒で危険な連中である。
だが、今それを気にかけている余裕はない。
「はなせ!」
「待て、まだだ。もうすぐ来る」
「お、おまえ、何を言って……!」
それ以上、ディオメデスは言葉をつづけることができなかった。凄まじい音が響いてきたのだ。
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