サファヴィア秘話 ー闇に咲く花ー

文月 沙織

文字の大きさ
17 / 65

蕾責め 五

しおりを挟む
 はなれるどころかドドはいっそう強くラオシンの乳首を吸い、舌で舐め、しゃぶり、ディリオスたちの目も気にせず、ラオシンの胸あたりに甘えるように頬ずりしたり、肌や乳首を甘噛みしたりする。
「ひぃっ……」
 ドドの顎鬚がラオシンの、武芸で鍛えはしていても、生まれの良さからくる繊細さをうしなわない肌を蹂躙し、髭の感触にラオシンは眉をさらに強くしかめる。油のもたらす刺激とあいまって、いっそう微妙に感じてしまうのだろう。
「ねぇ、男好きの男って、相手が男でもやっぱり胸が好きなのかしらね?」
 マーメイが笑いながらこっそりディリオスに囁く。
「普通の男が女の胸をこのむのと同じなんだろう。軍隊で女を抱けないあいだに、しかたないから男同士で片付けるというのとは違うんだろうな、ドドの場合は。あいつは根っから本当に男好きだからな」
「あら、それじゃ、そういう相手に調教を手伝ってもらうのは、殿下にとってはいいことなのかしら?」
 マーメイはさすがに娼館の女主らしく、奇妙なところで真剣だ。
 はたして本当の男色者に仕込ませることがラオシンにとって良いのか悪いのか……? 
 彼女は長い黒眉をしかめ、あの黒曜石のような印象的な目をまじめに光らせて首をひねる。その様は教育熱心な女教師が、生徒をどう教えればその生徒にとって一番なのだろう、と悩んでいるようで、ディリオスもまじめに答えた。
「悪いことにはならないだろう。殿下に男の欲望を教え込むには、仕事と割り切っているような調教師より、ああいうドドのように仕事ぬきで本当に殿下が欲しいという奴の方がいいのかもしれないぞ。絵師に本物の情熱があってこそ、すばらしい絵が完成するものだ」
 聞いている者がいれば滑稽に思うかもしれないが、二人はしごく真面目で、そばのリリも神妙な顔をしている。
「ああ……よせ! もう、よせ!」
 嫌がるラオシンの声は涙声になってきている。帝国の男たちは人前で泣くことを禁じられており、まして王族として厳しく躾けられたラオシンがああいう声を出すことは、相当追い詰められている証拠だ。ディリオスはひとまず区切りをつけることにした。
「乳首だけでイケるものか?」
「ふぅ……、さすがに今日はまだちょっと無理かもしれませんね」
 一瞬、理性をとりもどしたドドが少しラオシンから身を離すと、ラオシンは、ああ……、と哀し気な吐息をたちのぼらせる。その美しい横顔は、どこか寂しそうにさえ見えた。
(ふうむ)
 腕をくんで見ていたディリオスは、笑いながらリリに指図する。
「リリ、道具を持ってきてやれ。ドド、褒美だ。今日はおまえが殿下を道具でいかせてやるといい」
「へい」
 ドドは魂をぬかれたような顔になって、眼下の美貌の生贄をながめ、本当に舌なめずりしている。ラオシンはディリオスとドドの会話が聞こえているのか、いないのか、目を虚ろにさせてぼんやりしていた。だが、さすがにドドが受け取った道具を鼻さきで見せびらかすと、身をよじった。
「よ、よせ! やめろ……」
「殿下、そのままでは辛いでしょう? これでちゃんと天国にいかせてあげますからね」
「やめろぉ!」
 あがいても玉綱は切れることなく、ラオシンのそこに象牙の道具――先日のものよりやや大きめのものがあてがわれる。
「痛い思いはさせないでよ」
 マーメイの言葉に気をきかしたリリが香油の瓶を手にラオシンに近づき、準備をてつだう。
「ああっ……!」
 ラオシンは身をよじったが、どうにもならず、リリの指を避けることはできなかった。
「ううむ……ちょっとこれだとやりづらいですな。ディリオス様、いったん足をほどいていいですか?」
「ああ」
 とディリオスが許可を出すと、ドドはさけんでいた。
「おおっと! いてえ!」
 右足の玉綱がゆるめられた瞬間、ラオシンがなけなしの力で足をふりまわしたのだ。
 さらに彼は卓から逃れようとしたが、手首を戒められたままでは逃げれるわけもなく、結局いたずらに腕を痛めただけだった。だが、ふりまわした足はドドの顔にも当たり、ドドは顔を赤くして怒りをしめしている。
「ちきしょう! せっかくいい気分にさせてやったっていうのに、これはないだろう?」
「まったく殿下は相変わらずやんちゃだな」
 ディリオスが笑いながら加勢し、ドドとふたりがかりでラオシンのひきしまった脚を持つ。
「はなせ! はなせ!」
 神がかりにでもなったようにラオシンは狂乱して全力で拒絶する。つい先ほど乳首を雑兵になぶられ桃色の吐息をこぼしていた様子が嘘のようで、その変わりようにディリオスはほとんど感心しながらラオシンの脚をつかみ、大きく広げようとする。
 なにをされるか悟って、ラオシンはさらにあえぐ。
「うう、さわるな!」
「騒ぐんじゃない。こら!」
「ああっ……! はなせぇ、さわるな、下種!」
 ぴしゃり! と肉を打つ音が響く。
 ディリオスがラオシンの太腿をかなり強めにひっぱたいたのだ。
「リリ、マーメイ、玉綱を手首のところにそれぞれくくりつけろ」
 女たちは言われたようにそれぞれ左右にわかれてラオシンの両足首にからまる玉綱を手首のところにつないでしまう。
 当然ラオシンはその辱しめをいとうて死ぬほど暴れるが、両脚はそれぞれディリオスとドドにおさえこまれ動かすこともできず、とうとう脚を大開きにされた姿をさらす羽目になった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...