昭和幻想鬼譚

文月 沙織

文字の大きさ
11 / 190

秘色の屋敷 五 

しおりを挟む
「ほれ、もっとこっちへ来い」
 貼りついたような笑みをうかべたまま、望は祖父に引きずられるようにして布団の上にくずれた。
 明日死んでもおかしくない年寄りの、いったいどこにこんな力があるのか、不思議でしかたない。老人の飽くなき生と性への執着を見せつけられた気分だ。
「可愛いのう……」
 庭の躑躅の花を愛でるときと同じように目をほそめた祖父は、だが花を観賞するときにはない濁った欲望を、かわいた双眼にたぎらせている。
 指が、望のシャツの上から背に触れてくる。しばし布の感触をたしかめるようにさすり、やがて直に肌に触れて来る。
 望は目を閉じた。
 いつものことだ。小等部の頃から、祖父はこんなふうに望を愛撫する。
 これがけっして祖父が孫を慈しむ尋常な行為でないことに望は気づいていた。
 衣服をうばわれ、体中をまさぐられる。
 身体の中心に触れられたときは、いっそうきつく目を閉じる。
 少しの我慢だ、と自分に言い聞かせた。
(良いですか、望さま、けっしてお祖父さまのなさることに逆らってはいけませんよ)
 都の冷たい瞳が閉じた瞼の裏に浮かぶ。
(お祖父さまを怒らせたら、望さまの未来に傷がつくのですよ)
 どういうことなのか意味がわからいでいると、都はかみ砕いて説明してくれた。
(将来、伯爵様になれなくなるのですよ。崇さまは厳しい方です。血のつながった子や孫であっても、お気に召さないと平気で冷酷な真似をなさるのです。忠さまは、あなたのお父さまは、そのせいで爵位継承権を破棄させられたのですから)
 将来伯爵になるということが、それほど大事なことだとは、若いというよりまだ幼いような望には、さっぱりわからなかったが、都の目は真剣そのものだった。
(たんに爵位が継げないというだけではないのです……。望さまの未来が……駄目になってしまうのですよ。すべてを失くしてしまうことになるのです)
 だから、お祖父さまには決して逆らってはいけません――そう、くどいほどに都は念を押した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

処理中です...