昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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牡丹の闇 九

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 それを教えたのは勇なのか、見知らぬ異国の遊女なのか。もしくは二人によって知らされたのか。
 二十代も後半になって、なお清純な処女のように清らかに見える仁は、実はすでに汚れていたのだ。
 だが、そうであったとしても、望はけっして仁に失望したりはしなかった。
 泥濘ぬかるみに落ちた純白の花びらが、哀愁をにじませて、高嶺に咲き誇っていたときとはまたちがった印象を放つように、どことなく今までになかった影をにじませる仁は、望の心をいっそう惹きつけるのだ。
 ふいに、勇は乱暴に仁を突き放した。
 両手を後ろで縛られているので、仁には防ぎようもなく、もろに身体を打ち付けられることになった。敷布団の上だったので良かったが、それでも驚愕と痛みははげしかったようだ。
 しかも、今、仁の身体には道具が入っているのだ……。
「ううっ!」
 仁は、一瞬痛みに眉をしかめ、つぎに恨めしげな目で忠を見上げる。
「淫乱め。男でも女でも、日本人でも支那人でも、誰でもいいというのだな?」
「ち、ちが……う。彼女とは、そんな、そん関係ではない。紫珠しじゅは、ただ」
「言うな! おまえの口から女の名前など聞きたくない!」
 黒い炎のような怒りを立ちのぼらせ、勇は美しい鬼に変じた顔をいとこにむけた。
「淫乱は、淫乱らしい格好にしてやる。ほら、さっさと尻を突き出せ! おまえのして欲しいことをしてやる」
「よ、よせ……、よせ! ああっ」
 裾を一気にまくりあげられ、さっきよりも肌をあらわにされた仁は狼狽うろたえた。廊下の望も動揺した。
 見てはならないものを見つづけ、望はほんのすこしまえに自分の室を出たときの望とは心身ともに変わっていた。
 祖父のねばつく手によって子ども時代が終わってしまったように、この嵐の夜、少年の時代が終わろうとしているのだ。
「おお、しっかりくわえ込んでいるな。ほら、出してみろ」
「ああ……」
「ほら、ぐずぐずするな!」
 苦悶のうめきをあげながらも、仁は観念したのか、薄闇に白くふるえる脚に力を入れたのが望にはわかった。
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