昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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日影の若葉 三

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「わかったな。かならず来るんだぞ」
 章一は白薔薇のような頬を薄紅色に染め、目を伏せたまま頷いた。

「の、望ちゃん、こんなこと……」
 約束どうり章一はその日、望と下校し、そのまま望の家に来た。
 いとこが遊びに来たと思って家人も不審に思わず、女中が菓子と茶をはこんできたが、二人とも手をつけることなく、茶はすっかり卓の上で冷めていた。
「望ちゃん、駄目、こ、こんなこと」
 女が言うような言葉をこぼして抵抗する章一を、なんなく畳の上にねじふせ、望は相手の可憐な唇を幾度となくむさぼる。
「な、なんでこんなことをするんだよ?」
 章一の涙声がたまらなく耳に心地良い。自分がひどく残酷なことをしていることは理解しているが、同時に一人前の大人の男になったような満足感が身の内にほとぼしる。
「うるさいな。黙っていろよ」
 今や望は小さな獣であった。
 あの夜、勇が仁をなぶるときの姿を思い出した。
 勇はいつにもまして強そうで、恐ろしく、それでいて美しく、望は羨ましくなった。
 望がひそかに想い焦がれていた仁を自由にあつかえる勇を、妬みながらも、あこがれもした。
 欲しいものを自らの手で奪い、自由にできる男。それこそ真の男というものではないだろうか。
(ああ、僕もあんなふうにできたら……)
 閉めきった座室のなかで、望は章一を手荒に扱う。章一の眉がゆがみ、苦悶の表情が浮かぶたびに望ははげしく興奮する。
 章一を抱きしめ、鎖骨に顔をうずめながら、仁を思い出し、勇を思い出す。
 学生服を剥ぎ取り、まだ子どもじみた章一の身体を検分する。
 か細い身体に、なにかしらやるせないものを感じ、ふと罪悪感を覚えた。
 こんなことをしてはいけない、と自分のなかのまだ善良な部分が訴えてくるのだが、欲望は止められない。
「へえ、おまえ、一人前に生えているのか?」
 あらわにした章一の下肢を見て、わざと大袈裟に驚いてみせる。
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