昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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日影の若葉 九

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「すごいな」
 本当に初めてなのだろうか。
「おまえ、本当に今までしたことないのか?」
「うっ……」
 右手を章一の後ろにあてがったまま、望は、章一の首もとに顔を押し付けた。体温と甘い体臭を感じながら、脅すように囁く。
 嘘をついたら承知しないぞ――。
 あえぐように身体を一瞬伸ばし、章一は細い声でつぶやいた。
「ゆ、指とか……道具で……」
 背後からも章一が火を吹きそうなほど羞恥に震えているのが知れる。
 藤村個人の好みなのか、学院内での衆道というのがそういうものなのかはわからないが、身体を直接交えないかわりに、指や道具で楽しんだりするのだという。どちらかといえば、藤村個人の好みのように望には思えた。
 もしくは、さすがに章一に自分を受け入らせるのは不憫だと藤村が思ったのか。またまたもしくは、まだ開発段階なのか。
 藤村が意外にも気の長い男で、時間をかけて少しずつ章一の身体を慣らし、充分開花させてから楽しむつもりだったのか。
 そうならば、とんだお生憎様だな、と内心望はほくそ笑んでいた。
 章一の蕾は、望が開かせ、散らすのだ。
「あっ、の、望ちゃん!」
 章一が驚愕して四肢をこわがらせたのが、触れているとわかる。
 だが、おののく章一の太腿を背後からしっかり抑え込んで、みずからの身体をずらして、望は一瞬のためらいのあと、ゆっくりと己の舌を蕾にあてがった。
「ひぃっ……!」
 そっと舌でつついてみる。
 勿論、望だとてこんなことを他者にするのは初めてだ。祖父の異常な愛撫を受けていたときは、とにかく触られることに我慢していただけで、祖父もそれ以上のことは求めなかった。なけなしの道徳心から、というのではなく、おそらく加齢のせいで、身体が反応できなかったのだろう。それでいて執着はありありとあり、発散されない欲望を実の孫にぶつけてくるのだから、たまらない。
 祖父に精神的に凌辱された経験が、望をゆがめ、今、こういうかたちで出ているのかもしれない。
 望は若い欲望を、さらに自分より幼い少年にぶつけることで消化しようとしていた。
 ゆっくりと、蕾を舐めあげる。
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