昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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夏前の夜 五

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 香寺と勇は向かいあう形で立っていた。
 勇の無骨な手が、香寺の胸を正面からまさぐっている。
「御覧くださいよ、雨沼さん。このぬめるような白い肌。女でもこれほどなめらかな肌の持ち主はいませんよ」
 雨沼の顔は見えないが、浴衣姿で座っている上半身が、かろうじて見える。恰幅良さそうで、ここからでもそれなりに貫録のある男だと知れる。
「白い雪のような肌に、ぽつんと赤い、可愛いちっちゃな桜ん坊だ」
 ひどく小馬鹿にした言い方をして、勇は香寺の胸をまさぐっている。
 香寺はかすかに顔をうつむけ、この手ひどい辱めに耐えているようだ。ガラスを通しても、彼の震えが伝わってきそうだ。
 望は股間と胸に熱を感じつつ、膝でにじりよった。
「ああ、可愛いな。舐めてやりたい。舐めてもいいですか、雨沼さん?」
 香寺にではなく、雨沼に訊くところが、またひどく香寺を侮辱している。この残忍な辱めに、香寺の怜悧な横顔が凍り付いているのが見える。
「ああ、いいとも。ぞんぶんに可愛がってやるがよい」
「やっ、いやだっ……!」
 勇は香寺の両腕をつかみ動きを封じて、やや身をかがめるようにして香寺の胸に顔をうずめるようにした。
(あ……)
 勇の赤い舌先が、香寺の白い胸をつつく。
 望は自分の胸にそうされた錯覚がして、おもわず浴衣の胸元を抑え込んでいた。
 感じるわけのない、くすぐったさまで感じ、背が震える。
「や、やめ……、やめてください、勇さん」
 首を左右に振るたびに、白い項から胸にかけて、匂うような色気がはじけ、男たちの嗜虐欲をいっそう刺激していることに香寺は気づかない。
 香寺は真面目で女遊びのひとつもせず、浮いた噂を聞いたこともない、と若い女中がやや物足りなさそうに噂していたのを望は思い出した。
 潔癖で学問一筋の香寺は、おそらく女と遊んだことなど皆無なのだろう。あの清潔感と二十歳をこえても初々しさを思わせる風情からは、肉欲のかけらも感じない。
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