昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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調教初夜 二

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「ほら、いくら潔癖なあんたでも、やり方は知っているだろう。いつも布団のなかででこっそりやっているようにやってみろ」
「相馬中尉、ちときついのではないか? 見ろ、かわいそうに学士さん、真っ青になってしまっているぞ」
「調教は最初が肝心ですよ。金で買われたことをわからせておかないと。主の命令は絶対だと教えているんですよ」
「で、できません……。お、お願いです、勇さん、こ、ここでそんなことは……許してください」
 哀れにも香寺は処女のように怯えきって、無念をこらえて憎い男に哀願した。
 望の胸は切なさにつぶれそうだ。だが、切なさの芯にあるのは、悲しみや同情ではなく、いたたまれないほどに燃えさかる欲望だ。
「できません、じゃなく、やるんだ。雨沼さんの言うことには絶対服従だ。さぁ、いつも自分でしているのだろう?」
 恫喝と揶揄のこもった言葉で勇は香寺をいたぶりぬく。
 どうしてそこまで残酷になれるのか望には不思議だが、勇のその残酷さに強烈に魅了されている自分がいる。
 性の入り口をのぞいたばかりの少年には、あまりにも過激な展開だが、ここで逃げ出す気は毛頭ない。逃げ出すどころか、望は膝をすすめていた。
 固い床板の冷たさも足の痺れも感じず、ひたすら窓ガラスの向こうの男たちの愛欲絵図に没頭した。
 なおも香寺の涙に濡れた言葉がとぎれとぎれに続いたが、それで許すような勇ではない。
「さぁ、いつまで待たせるのだ? 早くしろ!」
 とうとう勇が怒鳴りだし、香寺はしゃくりあげながら、命じられたことをしないわけにはいかなくなった。
 香寺のような真面目で清廉な若き学士にとって、こういった行為を人前で強制されるのは、たいへんな苦痛にちがいない。たいていの男は粗野で当たり前のこの時代、香寺は男には珍しいほどに清楚なのだ。
「うう……」
 全身を屈辱にふるわせながら、香寺はおずおずと両手を前にまわす。
「そうだ、それでいい。ほら、こすってみろ」
「ああ……」
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