昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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調教初夜 六

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 勇は苦笑した。
「じゃ、先生、やってみようか。ほら、もう邪魔はせんから、思う存分こするといい」
「ああ……」
 妨害されたのも苦痛だが、いざやれと言われるとそれも香寺はつらい。
 だが、引き返すことはできず、二人が見たがる浅ましい真似を、またすることになる。
「くぅぅぅぅ……!」
「そうだ。もっと早くしてみろ」
 勇の残忍な指示に、香寺が歯を食いしばっているのが知れる。
 望は先にすでに果てた分身を、いたわるように手でつつみこんだ。身体にのこる余韻を、もう少し味わっていたい。
 だが室から響く香寺の声が、一瞬の陶酔にひたっていた望をゆさぶる。
「はぁっ……! ああっ、あー……! い、勇さん……、お、お願いです!」
「今更なにを言っている? ほら、遂け」
 香寺は、そうではない、というふうに首を辛そうに振る。動く背筋がなんともなまめかしい。
「ち、……ちり紙をあててください」
「ん? ……ああ、そうか」
 こんなときだが、望はつい笑いそうになった。勇は、情事の際に、汚すことに気をつかったことなどないのだろう。汚れたものを始末するのは召使だ。
 料理の膳に用意されていた懐紙を手に取ると、勇は香寺の股間にあてがってやった。
「ああ……」
 ほっとしたような声をもらして、香寺はつぎの瞬間、身体をねじった。
 電傘からこぼれる明かりが照明のように香寺の肢体を映す。白い肌は前にもまして赤く染まり、項から背にかけて、月光に弾ける夜露のような汗きらめいている。
 香寺に寄り添うようにして、奇妙にかいがいしく後始末の準備をしている勇と、二人が並んで立つ様は、古代ローマかギリシャの美青年たちの塑像のようだ。望は図鑑で見た全裸の青年たちの像を思い出した。ある種の芸術家たちがもとめる至尊の姿がそこにある。
「あっ……、ああっ、ああ――!」
 断末魔のような香寺の呻き声につづくように、雨沼と勇の嘲笑がガラスを突き破って聞こえてきた。
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