昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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調教初夜 九

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「ああっ……。お、お願いです、抜いて!」
 切羽詰まったような香寺の声は悲哀の一言だ。
「何を言う? まだ先っぽしか入れていないのだぞ。ほら、身体の力を抜いて。口をあけるといい」
 口をあけると、後ろの通りがよくなるのだと勇は説明した。
 だが、香寺はひたすら首を横に振っている。
「む、無理です……! もう無理!」
 裸体ににじむ汗がなんとも艶っぽい。
「お願いです、もうやめて……」
 女のような言葉を吐きだし、必死に逃れようとする様がひどくいじらしく、望の切なさと欲望は増していく。
「大丈夫だ。ほら、」
「ああっ!」
 勇が道具の角度を変えたようだ。
 香寺はのけぞった。
 突く場所が変わった淫らな道具は、微妙な動きで、香寺を苦しめる。
「あっ、ああっ、あっ、そ、そんな……! ああ、や、やめ、やめて……!」
「いやか? そうか、それなら、もう止めよう」
 あっさり言うと、勇は香寺の身体からはなれた。
「あ……」
 勇は畳の上をすべるようにして燃える裸体から距離をおきながらも、香寺を犯す道具を抜こうとはしない。
 あろうことか、香寺は臀部から珍奇な道具の柄を突き出したまま、あわれな恰好で置き去りにされるかたちになった。
 望の遠目にも、紅鬱金の色にぼんやり光る柄が見える。その妖しげな道具が、いま香寺を苦しめているのかと思うと、いてもたってもいられない気持ちになってくる。
「なんとまぁ、ものすごい恰好だな」
 雨沼の笑い声。
「だが、中尉を手こずらせた罰だ。しばらくそのままでいるがいい」
 残酷な命令に香寺は顔を伏せて啜り泣いた。
 その哀泣が、妙なる調べのように望の耳にしみこんでくる。 
 残酷な二人の男は、香寺を無残な状況においたまま、しばし酒と肴をたのしんだ。
「なにやら満洲できな臭い動きがあるようだな」
「このまま平穏無事ではすまないでしょうね。そのうち騒動が起こりそうですよ」
「そうなったら、そうなったらで、また儲けられるかもしれんな」
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