昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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黄昏の季節 七

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「すごい……吸いつくようだ」
 いつか女を抱く日がきても、これほど美しい肌の女にはめぐり会えないだろうという奇妙な予感を抱きながら、望は香寺とこういう関係になったことに感謝した。自分は幸福なのだと実感した。
「真っ白な雪のような肌のはざまに隠れている蕾を見てみたいな」
 おどけた言い方をし、香寺の尻の両側を、自分の左右の手で軽くつかんだ。
 香寺の身体が跳ねるようにひきつる。
「見せてください。見ますね」
 許可など得る必要もないくせに、敢えてそんなことを言う。
「よ、よせ! やめろ! やめてくれ!」
「ああ……あった、可憐な蕾……菊座、菊というより桜の蕾のようだ」
 自分ですら見ることのない肉体の秘奥ひおうをのぞかれ、香寺は全身でわななく。
「よ、よせ! 見るな! あっ、ああっ……」 
 望は身を深くかがめ、息づく蕾に、吐息を吐きつける。
 あるかなしかの刺激は香寺をさらにおののかせたらしく、また椅子が揺れ、畳の上についている膝も震えている。
 望は、興奮しきった目で自分たちの様子を凝視している牛雄の存在を、思い出した。
「かわいい……。牛雄、おまえも見せてもらうといい。おまえの好きな香寺先生の可憐な蕾」
「うう……」
 餌を投げあたえられた猛獣は、涎を垂らさんばかりにしてにじりよってきた。
 望は空気が熱くなったのを感じた。牛雄の放つ熱を感じたのは望だけではない。
「やめろぉ! く、来るな! 牛雄、ここから出ていくんだ。こんなことをしてはいけない……」
 香寺の椅子に伏せられている横顔はひどく辛そうで、苦しそうだった。牛雄に対して怒りや嫌悪より、悲しみを感じているようだ。
 望は、香寺が、ほかの使用人たちのように牛雄を無視したり馬鹿にしたりはせず、時々声をかけて、この知恵遅れの大男から言葉を引き出そうとしていたのを思い出した。
(牛雄は頭が悪いんじゃない。他人と言葉をかわすことに慣れていないから、言語能力が発達していないだけだ。話すことによって言葉が喋れるようになるかもしれないし、知力も上がるかも)
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