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黄昏の季節 十四
しおりを挟む「ああ……、も、もう……」
望は道具を持つ腕を自在にうごかし、香寺の唇から呻き声を引きずり出す。
香寺の若い肉体は、自らの心を裏切り、望の意のままになっていく。
今や香寺は見栄も恥も忘れたかのように身体をくねらせ、腰を振る。
「た、頼むから、も、もぉ……!」
まるで生まれながらの男娼のように、あられもない声をあげ、香寺は必死に望の動きを誘発しようとする。
望はほくそ笑みながら、道具をあやつる。
「先生、このまま遂きますか? もう我慢できませんか?」
「あっ、ああ……、ま、待って、待って」
「困った人ですね。ふふふふ」
香寺は売られ、買われたのだ。買った雨沼の意向に沿って、自分には、こういうことをする権利があるのだと望は信じていた。
このころは、そんな時代だったのだ。
時代はうすぐらい黄昏のなかにあった。
光の見えない暗い世界のなかで、香寺のみならず、実は望もまたもがき足掻いていたのだということを、望本人が知るには、まだいくつか季節が必要だった。
今はただ、少年の身を焼くほどに激しく切ない性衝動にのっとって、望は香寺をもてあそびつづけた。
牛雄が鼻息を荒くしている。唇の端からまた涎が垂れているのを笑いながら、望は腕に力をこめる。
「さぁ、先生、思いっきり感じてください」
「はぁっ……! ああっ、も、もぉっ……!」
「言っておきますけれど、これはまだまだ序の口ですからね。このあとは、たっぷり僕自身ので、先生を可愛がってあげますよ」
「ああっ――!」
その残酷な言葉は、香寺の耳に入ったか。香寺は縛られたままの不自由な体勢で、全身をひきつらせ、嗚咽にも似た声をほとばしらせた。
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