昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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再生の日 九

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(え……?)
 祖父の頭部から寝間着の襟元にかけて、乾きひからびたような黄土色の肌が、かすかに色を変えた……ように望には見えた。
 勇が咳払いをした。
 かすかに玉琴が身じろぎし、抱きしめていた祖父の頭をはなす。
「ううむ……」
 一瞬、祖父の声が別人のもののように聞こえた。
「席を外した方がいいな」
 勇の声に、父や仁は立ちあがり、廊下へと進む。章一がびっくりして大人たちの後を追う。
 望もなにがなんなのか解らぬままに、大人たちに従った。
 都が相変わらずこわばった顔で襖の戸を閉めると、松が描かれた襖の向こうには、祖父と玉琴だけがのこされた。

「あの人、お祖父さまの……お妾なんでしょう?」
 勇と二人で庭を歩きながら、望は訊いていた。
「まあな。親父の数多い愛人の一人だ」
 勇の声はあっさりしている。
 あれから三日たつ。結局、祖父は持ちなおし、父は東京へいったん戻った。章一も母のもとへ帰った。
 それにしても、あれほど弱っていて今にも息を引き取ろうとしていた祖父が、持ちなおすとは……。
 しかも……。望は庭に面する祖父の室を眺めた。
 縁側の雨戸は開かれているが、襖は閉じられている。その襖の向こうに、今も祖父は玉琴といるのだ。
 あれから、玉琴は常に祖父の側にいる。ただいるだけではない。閉じられた襖の向こうからは、あられもない男女の声が聞こえてくる。
 望も、身内の誰もが驚愕し、呆れた。父と章一がすぐに帰京したのは、そのことが一番の原因だろう。
「あの人……芸者でしょう?」
「ああ。もとは京都や大阪で売っていたのだがな」
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