昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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再生の日 十一

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「それが、いつからか、玉琴の方が呼ばれることになって……、まぁ、結局、玉琴との縁が強かったということだろう。だが、親父は都の聡明さも買っていて、芸者を辞めさせて家に呼び、身の回りの世話などさせるうちに、都は家令のような存在になったのだ」
「ふうん……」
 都が祖父と絡み合っている姿を想像してしまい、望はなんとなくばつが悪く、勇から目をそらした。
「このことで、都を軽蔑してやるなよ」
「軽蔑なんてしないよ」
 本心だ。祖父の好色さは知れわたっている。今更、そんなことで怒る意味はないし、都を見ていると、どことなく、そうではないかと思うこともあった。
 第一、望自身、潔癖でも無垢でもない。
「それより……な、望、親父は代替わりを考えているようだ」
「え?」
「生きている間に爵位をゆずるつもりらしい」
 これまで、周囲でそういう話はなくもなかったが、祖父みずからは一言もそれについては言及しなかった。
 世襲制にのっとって、祖父が死ねば父の忠が伯爵になるものだが、生きている間に爵位をゆずるつもりになったのだろうか。
「近々、そのことについて伝えると、今朝言われたのだ」
「そ、そうなの?」
 若い望にとってはあまり実感がない。父が伯爵になったところで、望自身はなにが変わるというわけではない。行く末、父から望が爵位を受け継ぐ日がくるだろうが、それはあまりにも遠い日のことであり、その話にかんしては、望はさして気にとめることはなかった。

 思ったよりも、その日は早く来た。
 勇と庭で話した三日後、ふたたび父と章一が別荘に来て、勇や仁、望をまじえて親族会議をすることになった。
 やはり今回も清叔母や啓子のすがたはない。
 崇は持ち直しはしたものの、ほとんど布団の上から出ることはなく、居室として使っている和室のなかで日を過ごしていた。
(それでも、あのことはするのだから……)
 浅ましい、と蔑む想いを顔に出さないように望は気をつけた。
 室には、ここでも白檀の香りがただよっており、この数日たれこめていた、死と性という相反する濁った空気を清めてくれている。
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