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金襴の新床 一
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静まりかえった室のなか、ぼんやりとただ座りこんでいる自分はさぞ滑稽だろうと思うものの、身体が動かない。
逃げ出した父忠は、相馬家の男にしては常識人だったということが今わかった。
望は、あまりの気まずさに、いっそ仁が席をたって逃げ出してくれれば、と願った。
けれども、そう願った次の瞬間、白装束の仁にたまらない情欲がわく。
ほっそりとした横顔をややうつむけ目を伏せている仁の様子は、どんな女よりもしなやかで、乙女のように初々しい。男であり、軍人でもあり、気位たかい貴公子である仁だが、まるで夫を待つ新妻のようなその様子は、深窓の令嬢のように初心で、けなげでさえある。
たかまる恋着、激しい欲望。愛しいと欲しいは、望のなかで同じ感情である。
額に汗が浮き、唾をのんで、一瞬、望は歯を喰いしばった。
そして、次の瞬間には、仁に飛びかかっていた。
「あっ……!」
覚悟はしていたのだろうが、仁はあわてて、手で望をはねのけようとする。
望はおさえこみ、両手で相手の胸元をはだけさせる。白い肌が光るように望の目を刺した。
「やめ……! やめてくれ……!」
やはり仁は抗うことを止められないのか、あがく。
無理もない。もともと誇り高い人である。
華族出身で軍人になる者は少ないが、そんな世の風潮のなかであえて入隊し、きびしい試練のなかでそれなりに世に出た男である。
それが、人目のあるところで年下の少年に凌辱されるのだから、死ぬほど辛いだろう。
だが今の望には仁の気持ちを慮る余裕は、もはやない。
仁が本気で抵抗すれば、望に組み敷かれることはないだろうが、それができないのは当主の命令は絶対という家訓の重みのせいだ。
よく華族は皇室の藩屏というが、相馬家においては――外では絶対言えないが――皇室よりも重視されているのが当主である。
そして今、現当主相馬崇は熱のこもったきびしい目で二人を見ている。
望は仁に馬乗りになると、強引に接吻した。
「んっ……!」
逃げ出した父忠は、相馬家の男にしては常識人だったということが今わかった。
望は、あまりの気まずさに、いっそ仁が席をたって逃げ出してくれれば、と願った。
けれども、そう願った次の瞬間、白装束の仁にたまらない情欲がわく。
ほっそりとした横顔をややうつむけ目を伏せている仁の様子は、どんな女よりもしなやかで、乙女のように初々しい。男であり、軍人でもあり、気位たかい貴公子である仁だが、まるで夫を待つ新妻のようなその様子は、深窓の令嬢のように初心で、けなげでさえある。
たかまる恋着、激しい欲望。愛しいと欲しいは、望のなかで同じ感情である。
額に汗が浮き、唾をのんで、一瞬、望は歯を喰いしばった。
そして、次の瞬間には、仁に飛びかかっていた。
「あっ……!」
覚悟はしていたのだろうが、仁はあわてて、手で望をはねのけようとする。
望はおさえこみ、両手で相手の胸元をはだけさせる。白い肌が光るように望の目を刺した。
「やめ……! やめてくれ……!」
やはり仁は抗うことを止められないのか、あがく。
無理もない。もともと誇り高い人である。
華族出身で軍人になる者は少ないが、そんな世の風潮のなかであえて入隊し、きびしい試練のなかでそれなりに世に出た男である。
それが、人目のあるところで年下の少年に凌辱されるのだから、死ぬほど辛いだろう。
だが今の望には仁の気持ちを慮る余裕は、もはやない。
仁が本気で抵抗すれば、望に組み敷かれることはないだろうが、それができないのは当主の命令は絶対という家訓の重みのせいだ。
よく華族は皇室の藩屏というが、相馬家においては――外では絶対言えないが――皇室よりも重視されているのが当主である。
そして今、現当主相馬崇は熱のこもったきびしい目で二人を見ている。
望は仁に馬乗りになると、強引に接吻した。
「んっ……!」
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