昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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金襴の新床 九

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「あっ……! ああっ!」
 ふるえる仁の白い背が視界に入るが、望の目はこのとき別の世界へ向けられていた。
 幾つもの星がきらめき流れる世界だった。
 今まで味わったことのない快感が、脳髄から背骨まで流れて逆流する。いや、背骨から脳髄めがけて走ったのかもしれない。
「……ああっ、いい……!」
 女のような言葉を発していたのは望だった。仁ではなく。仁は畳に爪をたてながら、襲ってくるはげしい衝動に抵抗しているようだ。
 仁を傷つけないかと内心望は危ぶんだが、まだ成長段階にある望の身体は、さいわいにして仁に優しかった。
 それでも望は呼吸をととのえ、最大の自制心でもって仁を傷つけないように、苦しめないように動きを遅くしてみた。
 苦しめたくはない。辛い想いはさせたくない。それは望の本心だった。
 仁を傷つけたくない。悦ばせてやりたいのだ。
「くぅ……!」
 仁が畳の上で小さくもがく。
「はぁ……」
 仁が苦しい体制のままのけぞるように身体をしならせた。
 匂いたつ仁の項から霞がたちのぼるようで、肩や背中にもあふれんばかりの色気がにじんでいる。望は仁への欲望と愛しさに胸が裂けそうだった。
 少しずつ、腰の動きを早くする。
「あっ、ああっ、……うっ、ううっ……、も、もうっ」
 仁の声は濡れてきた。
「はぁっ、ああっ……」
 声は苦しいだけではなく、艶めいたものを響かせている。
 声だけでなく、身も心もほどよく濡れてきたのを望は感じた。
 望ももはや自制できない段階までのぼり詰めていた。
「望、だ、駄目だっ、も、もうっ……」
 白い腰が揺れて、望をいっそう煽る。
 やわらかな肉が、しっかりと望を喰いしめてくる。望は息を吐いた。
「仁……、俺、もぉ、いく……」
 相手を呼び捨てにし、自分のことを‶俺〟と呼んだ望の心は、今夜いっきに歳をとった。
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