昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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月下凌辱図 四

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「ああ……」
 少女のようにふるえて仁は両手で顔をおおった。
 望は躊躇することなく、仁の裾をたくしあげる。
「いやらしい……」
 望はわざとらしく呆れたような声を出した。
「清潔で真面目そうな顔をしておきながら……。仁さんがこんなにいやらしい人だったなんて」
 嘲弄をこめて言うと、勇も尻馬に乗るように同意した。
「まったくだ。とても栄えある帝国軍人とは思えぬな。こんな目にあって感じているとは、場末の女郎以下だ。おまえに憧れていた部下たちや社交界の貴婦人たちに、この姿を見せてやりたいな」
 仁の低い嗚咽の声が、望の耳に甘い毒液のように染みこんでくる。
 こうして月下にあらためて見てみると、仁はひどく痩せて見える。
 軍服姿のときもひどくほっそりとして見えたが、半裸にしてみるとさらに痩せて見える。それでいて身体の芯には鋼が仕込んであるかのようにしなやかで、美しい。その夜目にも白く見える華奢な身体を見ていると、望の胸はしめつけられるように痛くなり、痛みがおさまると熱く燃えるようになる。胸が熱くなると同時に股間も熱をもちはじめる。
「仁さん……。かわいい」
 望は仁の身体を自分の細い腕で抱きしめた。少し背は伸びたものの、やはり身長はまだ仁に追いつかない。身体の幅も、いくら細いとはいえ、望よりかは幅がある。
 それでも望は力を込めて仁を思いっきり抱きしめる。今仁を抱いているのは望なのだ。 
 柔らかな肌から、かぐわしい香がただよってくる。座敷にこもっていた香の残り香だろう。この高雅な匂いにつつまれて仁と情を交わしたのだ。幾度となく。
「う……、の、望……」
 望は自分の腰を仁に押し付け、己のなかの熱情を知らせた。
「仁さん、後ろを向いて」
 一瞬、仁の身体がこわばった。
「の、望君……」
 以前のように呼ばれても、望の欲望はおさまらない。
「そこの岩に手をついて、僕の前に腰を出してください」
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