昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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月下凌辱図 十

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 勇に身をゆだねるようにしてぐったりしていた仁の耳にも、その言葉は聞こえたらしく、みじろぎしたのがわかった。
「よ、よせ……」
 闇にも白い仁の身体が、美しい大蛇おろちのように、ゆらりとうごめく。
「く、くるな……!」
 ほとんど生理的嫌悪すらにじませて、仁は牛雄を睨みつける。
 怯えたなかにも気位の高さをしのばせるその風情は絶品だと望は感じ入った。
「やめろ……!」
 命じられた牛雄は、本当に獣のように仁に挑みかかろうとしている。
「いやだ! いや……!」
 仁は近づいてくる男を避けようとしたが、勇に背後から両肩をおさえつけられ、差し出されるようにして牛雄のまえに立たされる。 
「ああ……!」
 浴衣はほとんど脱げ落ち、かすかに絡まるようにして肩にはりついているにすぎず、今や全裸にちかい。その無防備な身体に牛雄が食らいつくようにして、むしゃぶりついていった。
「い、いやだ!」 
 月にほのかに照らされた仁の横顔には、絶望しかなかい。
 牛雄のぶあつい舌が仁の白い太ももを舐めあげた。
「あっ……い、いや! いやだ! はなれろ!」
 仁は無我夢中になって、どうにかして背後から彼をおさえつける勇の手から逃れようともがいたが、勇の腕はびくともせず、仁を牛雄に捧げるようにしてはなれない。
 それどころか、太ももを舐めまわし、仁に悲鳴をあげさせつづけた。
 しなやかで繊細そうな仁の肌が、牛雄の舌によって新たに蹂躙されていく。
 勇や望に強引に抱かれても、消えることのなかった清廉さ、清潔感が、いまや野人の舌によって壊されようとしているのだ。
 それを眺めながら望は激しい欲望と満足感を同時に味わっていた。
「そうだ、牛雄、後ろも舐めてやれ」
 悪意を秘めた無邪気そうな望の声が、月下に響きわたる。
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