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 過激な例では、男女の交合がうまくいくように、ときに宦官侍医や美貌の侍女が、枕頭ちんとうにはべって手を添えて手伝うことすらある。
 子を成し家系をつたえることが重大な目的であった貴人の世界では、男女の交合は愛情表現ではなく、ほとんど必須作業とされていたためで、その際には当事者たちの個人的感情や羞恥など抹殺されてきたのだ。
 いや、そもそも、この頃の王族貴族というのは、着替えや入浴、ときに生理現象の世話まで召使がすることがあり、そういった生活様式のなかで羞恥というものを教えられないままに成長し、そのまま生きていくものであった。
 そんな感覚の時代や世界で王子として育ってきたアイジャルやラオシンもまた、羞恥の感情が比較的うすい。とくに自分より身分低い相手に対しては。
 現に、ラオシンも少年の季節の巡りには、小姓のアラムに手伝わせて目覚めた欲望を解消させていたぐらいで、それはラオシンにとっては、用足しの後に手洗いの水を用意させるような些末さまつな日常の行為であった。
 だが、羞恥、廉恥れんち、恥ずかしさの感情がまったくないわけではない。自分の召使や、性を喪失した宦官以外を前にすると、やはり恥という名の壁ははだかる。
 まして、ラオシンはあの思い出すのも嫌な『悦楽の園』で、それまでの人生でほとんど身近に接したことがなかった若い異性たちの目によって、希薄だった羞恥の情感というものを強烈に刺激され、彼女らの残酷な視姦によって恥辱や屈辱の感情を錬磨れんまされ、結果、人一倍、恥の感情を強くもつよう育成、いや、変成させられてしまったのだ。
 あの冷血な女主マーメイが、果たしてそこまで読んでいたかどうかはわからないが、『悦楽の園』で過ごした濃厚な淫虐の日々は、それまでのラオシンの短い人生が清廉で健康的で性にかんして淡泊であっただけに、あまりにも強烈で過激だった。少年期の終わりから青年期のはじまりの青春の盛りに、あれだけ激烈な体験をしてしまうと、もはやもとに戻ることはできないだろう。
 男でありながら、王子という高貴で特別な生まれ育ちでありながら、ラオシンはそれまでの感情感覚を破壊され、王族の男子にしてはあるまじき〝羞恥〟という情感に、普通の女人以上になやまされるという、ある意味、宦官以上に特殊な人間にされてしまったのだ。
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