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6.悪役令嬢に転生してやり直すという爽快さ
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クリスタラーゼが異世界転生課の仕事をしていて見守るのが一番楽しみだったのが、悪役令嬢に転生してしまったものの、そうは問屋が卸さぬと定められた運命に逆らい、抗う姿だった。
クリスタラーゼもそんな境遇へと何人も送り込んだわけだが、総じて己の運命に気が付き、奮起する少女が多かった。
努力の甲斐あって最悪の未来は避け、思ってもみない溺愛を勝ち取ったりとその後の人生を順風満帆に送る姿は、見ていて爽快だった。
誰もがそうして絶望的な状況に奮起できるわけではないことは、女神であるクリスタラーゼはよく知っている。
だからこそ、応援したくなった。
苦情があって出向くことがあるなら、頑張っている人に労いの声をかけに行く係があってもいいのに。
ほとんどが思ってもみなかった苦情で呼び出され続けているクリスタラーゼにとっては、前向きになれる仕事が心からしたかった。
係長にも進言してみたものの、すぐさま却下された。
「ただでさえ干渉は禁忌で、ただ放っておくとその世界に危害を加えかねない奴らがいるから苦情処理係として緊急的に処理に当たってるだけなのに、『がんばれー☆』と言うだけのために顔が出せるかバカヤロウ」
ごもっともである。
あえなく却下されても、クリスタラーゼの心の英気を養いたいという願望は消えたわけではない。
だからせめて黙って見守りたいと、空き時間を見つけては頑張る転生者たちのその後を見守るのを日課としていた。
その世界に転生した彼女は『アイゼリーナ』という名として生きていた。
五歳の時に池に落ち、ふと前世の記憶を思い出す。
そして自分が悪役令嬢という立ち位置であると思い出すのだ。
彼女は元来、慎重な性格であった。
だが初めての恋に身を焦がし、前後もわからぬほどに溺れていき、成り上がりの男爵令嬢をひどく虐めるに至るのだ。
それを事前に知ったアイゼリーナは、恋をしないよう周囲の人間の嫌なところを観察した。
そして人間嫌いとなり、遠くの領地に引きこもり、ただのスローライフを送ることになった。
本当にスローなライフだ。
チートも開発も恋愛も誰かを追い落としたりも、何もない。
彼女を追いかけてくる者もいなかった。
ただ平和に生きて、そして寿命をまっとうした。
それを見守ったミスリルナは思った。
ある意味これがもっとも大きな運命への抵抗なのかもしれないと。
つまらない。
見ている人間にとっては何の面白みもない。
だがそれこそが、『何か面白いことが起きなければならない』縛りへの最大の抵抗だ。
平和に何事もなく命をまっとうしていった彼女が幸せだったのか、不幸だったのか。
それはアイゼリーナ本人にしかわからない。
クリスタラーゼもそんな境遇へと何人も送り込んだわけだが、総じて己の運命に気が付き、奮起する少女が多かった。
努力の甲斐あって最悪の未来は避け、思ってもみない溺愛を勝ち取ったりとその後の人生を順風満帆に送る姿は、見ていて爽快だった。
誰もがそうして絶望的な状況に奮起できるわけではないことは、女神であるクリスタラーゼはよく知っている。
だからこそ、応援したくなった。
苦情があって出向くことがあるなら、頑張っている人に労いの声をかけに行く係があってもいいのに。
ほとんどが思ってもみなかった苦情で呼び出され続けているクリスタラーゼにとっては、前向きになれる仕事が心からしたかった。
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ごもっともである。
あえなく却下されても、クリスタラーゼの心の英気を養いたいという願望は消えたわけではない。
だからせめて黙って見守りたいと、空き時間を見つけては頑張る転生者たちのその後を見守るのを日課としていた。
その世界に転生した彼女は『アイゼリーナ』という名として生きていた。
五歳の時に池に落ち、ふと前世の記憶を思い出す。
そして自分が悪役令嬢という立ち位置であると思い出すのだ。
彼女は元来、慎重な性格であった。
だが初めての恋に身を焦がし、前後もわからぬほどに溺れていき、成り上がりの男爵令嬢をひどく虐めるに至るのだ。
それを事前に知ったアイゼリーナは、恋をしないよう周囲の人間の嫌なところを観察した。
そして人間嫌いとなり、遠くの領地に引きこもり、ただのスローライフを送ることになった。
本当にスローなライフだ。
チートも開発も恋愛も誰かを追い落としたりも、何もない。
彼女を追いかけてくる者もいなかった。
ただ平和に生きて、そして寿命をまっとうした。
それを見守ったミスリルナは思った。
ある意味これがもっとも大きな運命への抵抗なのかもしれないと。
つまらない。
見ている人間にとっては何の面白みもない。
だがそれこそが、『何か面白いことが起きなければならない』縛りへの最大の抵抗だ。
平和に何事もなく命をまっとうしていった彼女が幸せだったのか、不幸だったのか。
それはアイゼリーナ本人にしかわからない。
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