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7.聖女である私を追放? 本当にいいのですね?
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「お前は長らくこの国を謀ってきた。本物の聖女は、今私の隣にいるアンジェリーナだ! 偽物は早急にこの国を去れ!」
「そんな……! これまでこの国のために祈りを捧げてきたのに、なんということを」
「しらじらしい。おまえなど何の仕事もしてはいないではないか。さあ、早くそこをどけ。そこはアンジェリーナがいるべき場所だ」
シュイリーは腕を強く引かれ、立たされた。
「きゃあっ!」
「ずっとそこでぐうたらとひたすらに座っているだけだったから、足腰が弱っているのですわ。これまでの自らの怠慢を反省なさるといいのよ」
そう言って笑ったアンジェリーナと王太子の前で、シュイリーは兵士たちに前後を挟まれ、城の外へと追い出された。
「もう私が不要だというのならば、それまでのこと。この国の人たちには申し訳ないけれど、私にできることはもうない。さようなら……」
一度だけ城を振り返り、シュイリーは一人歩き出した。
そして、ゆっくりと走り出す。
「ふふ……ふふふふふ……! 自由よ! 自由だわー!!」
思い切り駆け出し、シュイリーは腹の底から笑った。
しかしすぐに耳の傍で声がした。
「いや、ダメダメダメ、だめでしょ! この国終わるでしょ!」
「誰?!」
慌てて足を止めてきょろきょろと周りを見回せば、誰もいない。
はっとして見上げれば、そこには白い衣をまとった女の人が浮かんでいた。
「あっ、真上すぎてパンツ見える! ちょ、ちょま、ちょっと待って今下りるから! 見ないで!」
ばたばたと裾を抑えたその人は、ふわりと地上へと降り立った。
「こんにちは、女神です。あなたにとっては十六年ぶりでしょうか」
「女神……? 私も私のことを『聖女です』って言うのは恥ずかしいけど、『女神です』っていうワードもかなりキテるわよね」
「うん。なんかもう私も帰りたい。帰りたいけど、職務放棄になるからそれはできないのよ。シュイリーさんも働いて?」
シュイリーは思い切り顔を歪めた。
「ええ……? だって私は追い出されたんですよ?」
「祈るのなんてどこにいたってできるじゃないですか」
「私を必要ともしていない、そんな国のために祈るなんて、ちゃんちゃらおかしいじゃないですか」
「うん。でもあなたを追い出したのは王子であって国民は一切関係ないじゃない。しかもそれ、自分で仕向けたことじゃん?」
思わずタメ口になった女神に、シュイリーは唇を突き上げた。
「……別に私は何もしてないわよ」
「いや、うん、何もしてないことが問題なんじゃん。わざと王子の前で無能アピールしてたし。馬鹿そうな女をたきつけて、偽聖女にのしあがらせちゃったじゃん。それ、ダメじゃない?」
「どうして駄目なのよ。そんなの、騙される方が悪いんじゃない。調子にのった奴が悪いんじゃない。私はもう祈るとか退屈すぎて嫌なのよ」
「いやいやいやいや、あなたが転生前に言ったんですよね? 今度は人から崇められるような人生がいいって。だから祈りのスキルを選んだんですよね? その結果じゃないですか」
「でもやってみたら思った以上に退屈だったのよ。考えてみたら祈るだけの仕事って何なん? 神に豊穣を祈るよりも畑耕した方が早くない?」
女神は、うーん、と腕を組み首を横に倒し唸った。
唸ったが、「いや、それはそれじゃない?」と返した。
「人の力ではどうにもできないことがあるから神に祈るんじゃないの?」
「けど目に見えないじゃん、成果がさ。やっぱこう達成感がある仕事がいいわ。だから今度は田舎に引きこもってスローライフしようと思うのよ」
「それはまた来世にしてくれません? もしくはちゃんとした聖女に交代した後」
「ええ? ちゃんとした聖女ってどこにいんのよ。だったら今すぐ連れてきてよ」
「そこまでこの世界に干渉できませんよ」
「じゃあやだ。私はもう祈るのなんて勘弁なの」
話は平行線だ。
両者、むーっと睨み合い、一歩も引かない構えだ。
折れたのは女神の方だった。
「わかりました。もうあなたに何を言っても無駄そうですし、そうこうしてる間にもこの国の均衡は崩れかかってますし。あなたに付与したスキルは全て回収させていただいていいですか? 次の方と重複してしまうとややこしいんで」
「聖女が同時に二人いちゃまずいの?」
「そうじゃありませんよ。聖女は自然発生的に現れますから、同時に存在することだってありますよ。ただ異世界転生者に付与する祈りのスキルはレアです。使わないあなたに付与したままでは世界のバランスが崩れますし、回収せず新たに付与すれば比率がおかしくなってしまいますので」
「ふうん。何その論理。よくわかんないけど、どうせ使わないからどうぞ?」
「ありがとうございます。ではよいスローライフをお過ごしください」
了承すれば、女神はあっさりと引き下がり、しゅぽん、と音を残して姿を消した。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
「いやあ、本当難儀な仕事だわ。今回のはまたなかなかに嫌な仕事だったわあ」
「何、クリスタラーゼ。疲れてるね」
「うん。人に崇められたいって祈りのスキルを持っていったのに、全然仕事しない聖女がいてさ。国が滅んでも構わないとか言うような人だったから、危ないと思ってスキル取り上げてきたのよね」
「うわあ。巻き込むねえ。前は城を落とした妖精の愛し子もいたよね」
「そうそう、さすがに同じようなことになるとまずいからね、先手を打ったんだけど」
「ふうん。それでその元聖女は今どうしてるの? ずっと聖女してた人が働き口とかあるの?」
「そこなんだよねえ。体力もないし知識もないし、常識もない。前世で農業やってたわけでもなく家庭菜園すらやってなかったらしいのに、田舎でスローライフとか言っててさ。まあ、できるわけないんだよね。そもそもどこの村の人も得体のしれないよそ者なんて怖くて受け入れたがらないし。それならいいわよ、他に行くわ、って点々としたんだけどさあ」
「ああ、プライド高そうだよね。ちょっとでも受け入れられない空気察すると拗ねちゃうんだろうね」
「そうそう、そうなの。んで、結局地方の農家のお妾さんになったのよ。旦那と継子に働かせてね」
「あー……。スローライフだね」
「うん」
スローライフ、スローライフと言うが、知識も体力も根性もなく、いきなりそんなうまくいくわけがない。
農家の忙しさを知らないからスローライフと言えるのだ。
実際の農家は全然スローじゃない。天候と虫との戦いだ。
嵐にやられたらその年の収穫がゼロという事態にだってなりかねないのだ。
結局、その農家からも追い出されることとなった。
村民たちが何もしないシュイリーを糾弾したのだ。
「働かざる者食うべからず、よねえ」
ちなみに祈りのスキルには、神の愛し子という隠しスキルがついてくる。
今までは苦労なく順風満帆にいっていたのはそのおかげであって、彼女の能力ではない。
だから彼女は今後もうまくいかない人生に文句を言いながら過ごしていくのだろう。
「大人しく聖女してればよかったのにね」
全ては本人の選んだ道だ。
そればかりは女神にも神にも、どうにもできないのである。
「そんな……! これまでこの国のために祈りを捧げてきたのに、なんということを」
「しらじらしい。おまえなど何の仕事もしてはいないではないか。さあ、早くそこをどけ。そこはアンジェリーナがいるべき場所だ」
シュイリーは腕を強く引かれ、立たされた。
「きゃあっ!」
「ずっとそこでぐうたらとひたすらに座っているだけだったから、足腰が弱っているのですわ。これまでの自らの怠慢を反省なさるといいのよ」
そう言って笑ったアンジェリーナと王太子の前で、シュイリーは兵士たちに前後を挟まれ、城の外へと追い出された。
「もう私が不要だというのならば、それまでのこと。この国の人たちには申し訳ないけれど、私にできることはもうない。さようなら……」
一度だけ城を振り返り、シュイリーは一人歩き出した。
そして、ゆっくりと走り出す。
「ふふ……ふふふふふ……! 自由よ! 自由だわー!!」
思い切り駆け出し、シュイリーは腹の底から笑った。
しかしすぐに耳の傍で声がした。
「いや、ダメダメダメ、だめでしょ! この国終わるでしょ!」
「誰?!」
慌てて足を止めてきょろきょろと周りを見回せば、誰もいない。
はっとして見上げれば、そこには白い衣をまとった女の人が浮かんでいた。
「あっ、真上すぎてパンツ見える! ちょ、ちょま、ちょっと待って今下りるから! 見ないで!」
ばたばたと裾を抑えたその人は、ふわりと地上へと降り立った。
「こんにちは、女神です。あなたにとっては十六年ぶりでしょうか」
「女神……? 私も私のことを『聖女です』って言うのは恥ずかしいけど、『女神です』っていうワードもかなりキテるわよね」
「うん。なんかもう私も帰りたい。帰りたいけど、職務放棄になるからそれはできないのよ。シュイリーさんも働いて?」
シュイリーは思い切り顔を歪めた。
「ええ……? だって私は追い出されたんですよ?」
「祈るのなんてどこにいたってできるじゃないですか」
「私を必要ともしていない、そんな国のために祈るなんて、ちゃんちゃらおかしいじゃないですか」
「うん。でもあなたを追い出したのは王子であって国民は一切関係ないじゃない。しかもそれ、自分で仕向けたことじゃん?」
思わずタメ口になった女神に、シュイリーは唇を突き上げた。
「……別に私は何もしてないわよ」
「いや、うん、何もしてないことが問題なんじゃん。わざと王子の前で無能アピールしてたし。馬鹿そうな女をたきつけて、偽聖女にのしあがらせちゃったじゃん。それ、ダメじゃない?」
「どうして駄目なのよ。そんなの、騙される方が悪いんじゃない。調子にのった奴が悪いんじゃない。私はもう祈るとか退屈すぎて嫌なのよ」
「いやいやいやいや、あなたが転生前に言ったんですよね? 今度は人から崇められるような人生がいいって。だから祈りのスキルを選んだんですよね? その結果じゃないですか」
「でもやってみたら思った以上に退屈だったのよ。考えてみたら祈るだけの仕事って何なん? 神に豊穣を祈るよりも畑耕した方が早くない?」
女神は、うーん、と腕を組み首を横に倒し唸った。
唸ったが、「いや、それはそれじゃない?」と返した。
「人の力ではどうにもできないことがあるから神に祈るんじゃないの?」
「けど目に見えないじゃん、成果がさ。やっぱこう達成感がある仕事がいいわ。だから今度は田舎に引きこもってスローライフしようと思うのよ」
「それはまた来世にしてくれません? もしくはちゃんとした聖女に交代した後」
「ええ? ちゃんとした聖女ってどこにいんのよ。だったら今すぐ連れてきてよ」
「そこまでこの世界に干渉できませんよ」
「じゃあやだ。私はもう祈るのなんて勘弁なの」
話は平行線だ。
両者、むーっと睨み合い、一歩も引かない構えだ。
折れたのは女神の方だった。
「わかりました。もうあなたに何を言っても無駄そうですし、そうこうしてる間にもこの国の均衡は崩れかかってますし。あなたに付与したスキルは全て回収させていただいていいですか? 次の方と重複してしまうとややこしいんで」
「聖女が同時に二人いちゃまずいの?」
「そうじゃありませんよ。聖女は自然発生的に現れますから、同時に存在することだってありますよ。ただ異世界転生者に付与する祈りのスキルはレアです。使わないあなたに付与したままでは世界のバランスが崩れますし、回収せず新たに付与すれば比率がおかしくなってしまいますので」
「ふうん。何その論理。よくわかんないけど、どうせ使わないからどうぞ?」
「ありがとうございます。ではよいスローライフをお過ごしください」
了承すれば、女神はあっさりと引き下がり、しゅぽん、と音を残して姿を消した。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
「いやあ、本当難儀な仕事だわ。今回のはまたなかなかに嫌な仕事だったわあ」
「何、クリスタラーゼ。疲れてるね」
「うん。人に崇められたいって祈りのスキルを持っていったのに、全然仕事しない聖女がいてさ。国が滅んでも構わないとか言うような人だったから、危ないと思ってスキル取り上げてきたのよね」
「うわあ。巻き込むねえ。前は城を落とした妖精の愛し子もいたよね」
「そうそう、さすがに同じようなことになるとまずいからね、先手を打ったんだけど」
「ふうん。それでその元聖女は今どうしてるの? ずっと聖女してた人が働き口とかあるの?」
「そこなんだよねえ。体力もないし知識もないし、常識もない。前世で農業やってたわけでもなく家庭菜園すらやってなかったらしいのに、田舎でスローライフとか言っててさ。まあ、できるわけないんだよね。そもそもどこの村の人も得体のしれないよそ者なんて怖くて受け入れたがらないし。それならいいわよ、他に行くわ、って点々としたんだけどさあ」
「ああ、プライド高そうだよね。ちょっとでも受け入れられない空気察すると拗ねちゃうんだろうね」
「そうそう、そうなの。んで、結局地方の農家のお妾さんになったのよ。旦那と継子に働かせてね」
「あー……。スローライフだね」
「うん」
スローライフ、スローライフと言うが、知識も体力も根性もなく、いきなりそんなうまくいくわけがない。
農家の忙しさを知らないからスローライフと言えるのだ。
実際の農家は全然スローじゃない。天候と虫との戦いだ。
嵐にやられたらその年の収穫がゼロという事態にだってなりかねないのだ。
結局、その農家からも追い出されることとなった。
村民たちが何もしないシュイリーを糾弾したのだ。
「働かざる者食うべからず、よねえ」
ちなみに祈りのスキルには、神の愛し子という隠しスキルがついてくる。
今までは苦労なく順風満帆にいっていたのはそのおかげであって、彼女の能力ではない。
だから彼女は今後もうまくいかない人生に文句を言いながら過ごしていくのだろう。
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