コンビニ行ってくるけど

美里

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 凌は笑いながら、泣きながら、俺の食いかけの魚肉ソーセージを食った。ぷるぷる揺れる薄ピンク色のそれが凌の唇の中に消えていくのを、俺はじっと見ていた。なんだか、はじめて凌の顔を見るような気がした。
 魚肉ソーセージを食い終ると、凌は手の甲で涙を拭った。目が少し赤く腫れていた。
 「……久しぶりに食うと、美味いね。ありがと。」
 赤い魚肉ソーセージのパッケージを、ブレザーのポケットにねじ込みながら、凌はゆっくりと立ち上がった。
 「じゃあ。」
 「おう。」
 校舎裏から出ていく凌を、俺はぼんやり目で追った。凌は授業をさぼるということがない生徒だったから、きちんと教室に戻るのだろう。授業をさぼってばかりの俺は、今日はもう教室に戻る気もしなかったので、そのまましばらく校舎裏で時間をつぶしてから、帰路についた。
 それから凌は、ちょくちょく校舎裏に顔を出すようになった。授業をさぼることはなく、休憩時間に少しだけやって来ては、いらないと言う俺にノートを貸し出したり、教室や授業の様子を一方的に話したり、時々はまた母親らしき相手に電話をかけもした。話の内容は、いつも金絡みで、凌のバイト代はほぼ全額母親に巻き上げられているらしかった。
 電話が終わっても、凌はもう泣かなかった。俺ももう間抜けに魚肉ソーセージを差し出したりはしなかった。とくになにもなかったみたいな顔をして、凌は毒にも薬にもならない話をして、俺は黙って煙草を吸った。
 それから少しして、二年に上がると同時に凌は高校を中退した。あのときも凌は、なんの前触れもなく消えた。電話で親と言い争うとか、俺になにか愚痴をこぼすとか、そんなこともなく、普通にいなくなった。
 中退してすぐに、凌がウリ専で働いているという噂が流れた。噂の出所は定かではないし、すぐに立ち消えにはなった。中退するやつなんて珍しくもなかったし、援交をしているやつもぼちぼちいたから、大した話題ではなかったのだ。
 俺はなにかの拍子にその噂を聞き、多分そんなことはないと思った。凌がガソリンスタンドでせっせと働いていることを電話の内容から知っていたからだ。そしてその次に、いや、あり得るかもしれないな、とも思った。やはり電話の内容から、凌の母親の金の無心の激しさを知っていたからだ。
 その推測のどちらが正解だったのかは分からない。けれどおそらく、俺の部屋に転がり込んできたとき、凌は身体を売っていたのだと思う。普段ずっと家にいるくせに、ふと夜中に出かけて行って、まとまった金を持って戻ってくることが何度かあった。俺は凌になにも訊かず、訊けず、ただ、家賃、と金を差し出してくる凌を抱いていた。高校の時に流れたあの噂話。あれをきちんと否定できなかった俺に、凌の生活に口を出す権利はないと思った。
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