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煙草を続けざまに二本吸って、久しぶりの煙にちょっとだけ肺を痛めながら、俺は室内へ戻った。凌は、まだいた。前の道をずっと見下ろしていたのだから、頭ではそうだと分かっていたのだけれど、頭ではないなにかがついていかなくて、俺は多分、変な顔をしていた。凌は、そんな俺を見てもなにも言わないで、テレビの前のローテーブルにパンを並べて、コーヒーを飲んでいた。
「……米、なかった?」
「うん。でも平気。」
「忘れてた。」
「いつも朝はパンなの?」
「……うん。」
また、嘘だった。俺には朝、コーヒー以外を摂取する習慣がない。それでも特に、腹が減ったと思うこともなかった。多分、エネルギーをあまり消費しないで生活しているからだろう。
「凌は? 米?」
凌の隣に座り、焼きそばパンを掴みながら、特に意図もなく訊くと、凌は曖昧に首を傾げ、色々、と答えた。なんだか、聞いてはいけないことを聞いた気がした。それに反省して、黙ってパンを食った。凌も口を開かず、ハムサンドをかじっていた。
飯を食ってしまうと、もうすることがなかった。いつもなら、まだ目を覚ましてもいない時間だ。普段はだらだらと、昼過ぎまでベッドの中で過ごし、渋々起きだして洗濯などの最低限の家事をして、別に観たくもないテレビを観ながら飯を食い、母親からの電話に時々は応え、また眠るだけが俺の休日だった。
結果から言うと、その日は凌と、セックスをした。それだけで一日が終わった。もともとする気があったわけではない。凌との行為で得られる快楽はもう、身体で覚えてしまっていたけれど、俺には同じ人間と何度も行為に及ぶという発想自体がなかった。関係性の構築が下手くそだからだろう。だから、別に凌と寝たいと思っていたわけではない。けれど、ハムサンドを食い終わった凌に、身体を傾けてキスをされると、俺は簡単に猛った。本当に、他愛もなく。
話したいことがある気がした。高校を中退して以来なにをしていたのかとか、例の噂の真相とか、なんで急に俺に電話をしてきたのかとか、これから行く当てはあるのかとか。それなのに、俺の口は簡単に、セックスでふさがれていた。それが凌の目的かもしれないと、ちらりとよぎったけれど、それも訊けなかった。リビングの床で一度して、ベッドに移って、そこで何度か。体力が尽きると、しばらくだらだらと互いの身体を探り合って、そんなことをしていると身体が高ぶってきて、また行為に及んだ。欲望に際限がないみたいで、俺は少しだけ、怖くなった。
「……米、なかった?」
「うん。でも平気。」
「忘れてた。」
「いつも朝はパンなの?」
「……うん。」
また、嘘だった。俺には朝、コーヒー以外を摂取する習慣がない。それでも特に、腹が減ったと思うこともなかった。多分、エネルギーをあまり消費しないで生活しているからだろう。
「凌は? 米?」
凌の隣に座り、焼きそばパンを掴みながら、特に意図もなく訊くと、凌は曖昧に首を傾げ、色々、と答えた。なんだか、聞いてはいけないことを聞いた気がした。それに反省して、黙ってパンを食った。凌も口を開かず、ハムサンドをかじっていた。
飯を食ってしまうと、もうすることがなかった。いつもなら、まだ目を覚ましてもいない時間だ。普段はだらだらと、昼過ぎまでベッドの中で過ごし、渋々起きだして洗濯などの最低限の家事をして、別に観たくもないテレビを観ながら飯を食い、母親からの電話に時々は応え、また眠るだけが俺の休日だった。
結果から言うと、その日は凌と、セックスをした。それだけで一日が終わった。もともとする気があったわけではない。凌との行為で得られる快楽はもう、身体で覚えてしまっていたけれど、俺には同じ人間と何度も行為に及ぶという発想自体がなかった。関係性の構築が下手くそだからだろう。だから、別に凌と寝たいと思っていたわけではない。けれど、ハムサンドを食い終わった凌に、身体を傾けてキスをされると、俺は簡単に猛った。本当に、他愛もなく。
話したいことがある気がした。高校を中退して以来なにをしていたのかとか、例の噂の真相とか、なんで急に俺に電話をしてきたのかとか、これから行く当てはあるのかとか。それなのに、俺の口は簡単に、セックスでふさがれていた。それが凌の目的かもしれないと、ちらりとよぎったけれど、それも訊けなかった。リビングの床で一度して、ベッドに移って、そこで何度か。体力が尽きると、しばらくだらだらと互いの身体を探り合って、そんなことをしていると身体が高ぶってきて、また行為に及んだ。欲望に際限がないみたいで、俺は少しだけ、怖くなった。
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