コンビニ行ってくるけど

美里

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 翌日の日曜日も、ほとんど同じように時間は過ぎた。違ったのは、俺が煙草を吸っても肺を痛めなくなったことくらいだ。その夜、ベランダで寝る前の一服を吸っていると、室内から声がかかった。
 「コンビニ行くけど、なにかいる?」
 別に必要な者もなかったので、俺は凌に、べつに、とだけ返した。そっか、と、凌もあっさり頷いて、部屋を出て行った。凌の荷物は少なく、コートも持っていない。俺のを着ろ、と言っても凌は、薄いパーカー一枚で外に出た。
 俺が歯を磨き、寝る支度を整え終わった辺りで、母親から電話がかかってきた。俺は半分無意識に部屋のドアに目をやり、凌が帰ってくる足音がしないことを確かめた。そしてスマホを持って、ベランダへ出る。
 「……もしもし?」
 『あ、健人? もう寝るとこ?』
 「うん。」
 『元気にしてるかなー、と思って。今年の正月は? 休みはどうするの?」
 「……べつに。どうもしないよ。家にいる。」
 『暇なら帰ってきたらいいのに。一日か二日でも。』
 母親の声は、いつも通り軽い。軽くて、重い。何気なさを装っているけれど、その実、俺になんと言えば正月に実家に帰省させられるのか、考えた結果がこの軽さなのだろうと分かる。少しでも重いトーンで話をしたら、俺が電話を取ることすらしなくなると思っているのかもしれない。
 「……また、今度。」
 俺は曖昧に言葉を濁した。その、今度、というのがいつを指すのか、自分でも全然分かっていないし、さらに言えば、なんで自分が実家に帰ろうとしないのかも、よく分からない。ただ、今度、と、そう言う以外に方法がないのだ。
 『そう? 今度?』
 母親がやや不満そうな声を出す。多分、向こうのリビングでは父親が、ビールでも飲みながら、聞いていないような顔で話に聞き耳を立ててもいるのだろう。
 「……うん。」
 また曖昧にそう頷いたとき、玄関のドアが開く音がした。ぴくりと、身体が勝手に強張る。じゃあ、明日仕事早いから。そう言って電話を切ろうとしたのだけれど、それより早く、狭い部屋を横切った凌がカーテンを開け、半開きになった窓からこちらを覗き込んだ。白いビニール袋から煙草をひと箱取り出して顔の横あたりにかざし、なにか言おうとした凌は、俺がスマホを耳に当てていることに一瞬遅れて気が付き、あ、と、声に出さずに呟いた。とくになんの表情を浮かべているでもない凌のその顔を見て、俺の頭をふと過ぎったのは、罪悪感、の三文字だった。
 誰に、どうして?
 理由が分からないその三文字。俺はただ、母親に、じゃあまた、とだけ言い置いて、通話を切った。
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