コンビニ行ってくるけど

美里

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 「……凌?」
 「あ、お帰り。」
 凌は、いた。奥の部屋のベッドに寄りかかるみたいに床に座り込んで、テレビを観るでも、スマホを弄るでも、窓の外でも眺めるでもなく、ただじっとしていた。
 「……エアコン、つけろよ。」
 俺はテーブルの上に置いていたエアコンのリモコンを掴み、暖房をつけた。
 「うん。」
 凌は少し笑って、それから俺のことを真っ直ぐ見た。
 「晩飯、どうする?」
 「……買ってこなかった。コンビニ行くか。」
 買ってこなかった。言った瞬間、凌に俺の内面の葛藤みたいなものを見透かされた気がした。俺はそれが嫌で、凌から顔をそむけた。
 「行く。」
 凌はやっぱり薄いパーカー一枚で外に出た。俺ももう、それについてはなにも言わなかった。言える筋合いがなかったのだ。はじめから。
 次の日から俺は、晩飯をコンビニで二人分買ってから帰るようになった。凌が部屋にいると確信したからではない。凌になにもかもを見透かされたみたいな気がしたのがどうしても忘れられなくて、なにも考えていないみたいなふりをした。本当は毎日、今日は弁当を二つ食うことになるのだろうか、と、そう考えながら五分間の道のりを歩いた。足取りはいつも重く、隣の席の女子社員は時々俺に、体調悪いんじゃないですか? と言った。多分、顔色が悪かったのだろう。
 凌はいつも、ベッドに寄りかかって座り込み、ぼうっとしていた。他の姿で俺を出迎えたことはなかった。俺がいない間、こいつはなにをしているのだろう。もしかしたらずっと、そこに座っているのだろうか。じっと、動かずに。
 その様子を想像すると、寂しいような、堪えようもなく寂しいような気持になった。だから俺は、お前いつもなにしてんの? と、訊くことができなかった。凌があっさり、なにも、とでも答えたら、と、想像するだけで胸が寒くて。
 俺が仕事から帰ると、コンビニ弁当で飯をすませ、一回くらいはセックスをして、平日はそれで終わった。他人と継続的な関係を持ったことがこれまでなかったので、ずっと誰かが家にいる、という状況に慣れることはできないと思っていたけれど、案外二週間で慣れた。慣れはしたけれど、それでも職場からの帰り際にはいつも、凌はもう部屋にはいないかもしれないと、そう考えることはやめられなかった。
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