コンビニ行ってくるけど

美里

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 見つからないと分かっている言葉を、それでも探し続けた。ずっと、こうしないといけなかったのだ。もっと、言葉を探さないといけなかった。それなのに俺は、探しもしない内から諦めていて、実の母親とすら上手いコミュニケーションが取れなかった。
 高校を中退してからのこと。あの噂の真相。母親との関係。時々真夜中に出かけて行く行先。
 訊きたいことは幾つもあって、そのどれも、本当に訊きたいことではない気がした。もっと、俺が知りたいことは他にあるような。
 凌は、なにも急かさなかった。ただ、その場に膝をついて、俺と凍えていた。背中に置かれた凌の手が、微かに震えている。俺の身体も震えているのだろう。
 「……あかりって子……。」
 「え?」
 「あかりって子は、どうなった?」
 なぜだか出てきた問いは、それだった。これまでその名前を思い出したことすらなかった。それなのに今夜は、その名が妙に鮮明に思い出される。確か、高校時代、あの校舎裏で母親と電話をしながら凌は、あかりの制服ぐらいは買ってやれと、ひどく悲しい声で言った。怒りが入り込む余地すらない、純粋な悲しみを、あのとき俺は、凌の上に見た。
 背中の上の凌の手が、ぴくりと一瞬、寒さによる震えとは違う動揺の仕方をした。そしてその後凌は、わずかばかりの悲しみも窺わせない、ただやさしいだけの声で言った。
 「幸せにしてるよ。」
 俺はその、わずかばかりの不純物も含まれていない声を聞いて、はっきりと、それは嘘だと思った。けれど、嘘だ、などと言うこともできず、そもそも、顔も知らない、多分凌の妹なのであろうということしか分かっていない女の子の、なにを知りたかったのかも分からず、しばらく迷った末に、そっか、と言うしかなかった。
 そっか、あかりという女の子は、きっと無事に制服を買ってもらい、いくらかの苦労はしたものの、今は幸せに暮らしているのか。
 そう念じていると、涙の気配はようやく遠ざかって行った。俺がゆっくり、本当にもう涙が出ないのか確かめながら顔を上げると、凌はいつもの顔で笑いながら、俺の背中から手を離した。凌の、驚くほど冷たかったてのひらが離れると、背中は温まるどころか、反対に尚更冷え切った。
 「……寒いな。」 
 俺が言うと、凌は笑みをさらに深くして、そうだね、と呟いた。
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