コンビニ行ってくるけど

美里

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 朝飯を食ったら、することがなくなるな、と思った。コーヒーを啜り、卵サンドをかじりながら。隣では、もう食事を終えた凌が、ゆっくりとコーヒーを飲み干している。
 口を利かなくては、と思った。なにか言わなくては。とにかく、なにか。
 それなのに一つも言葉が思い浮かばなくて、黙ったままの俺を見て、凌は少しだけ笑った。俺の内面なんて、なにもかもお見通しみたいな微笑だった。
 コーヒーカップを置いた凌が、俺の手から卵サンドをとりあげ、テーブルに置く。俺は、それを目で追った後、凌に視線を戻した。そのときにはもう、欲情していた。なんで、こんなに簡単に、と思うくらいに。
 俺も凌も、なにも言わなかった。ただ、ローテーブルの横で一度、ベッドで何回か、セックスをした。それだけで土曜日が終わる、怠惰なセックス。
 これが楽だ、と思った。言葉を探さなくていい。黙っている理由が与えられる。なにひとつ感情を伝え合うわけでもない行為だけど、それでも。
 俺はこうやっていつも、凌に助け舟を出されているのかもしれない、とふと思いつき、それからすぐに、その助け舟がなければ、と考える。その助け舟がなければ、俺は本気で言葉を探し、なにか言えたかもしれない。なにか、確信に触れる言葉を。でも、そんなのはただの責任転嫁で、凌がなにをしようがしまいが、俺にはなにも言えやしないと、ちゃんと分かっている。
 昼飯は、食い残した朝飯を適当に食い、晩飯は、さすがに服を着て、俺がコンビニに買いに行った。
 15分で帰ってきて、部屋に入ると、凌はいつものパーカー姿でベッドの下に座り込んでいた。俺が仕事から帰ってくるときと同じ姿だった。俺は、なんとなく胸をふさがれるような気分になって、とにかく凌の腕を引っ張ってその場から立ち上がらせた。凌は不思議そうな顔もせず素直に立ち上がり、コンビニ袋の中をあさりながらローテーブルの前に腰を下した。
 これを食ったら、後は寝るだけ。
 凌が転がり込んできて以来の、いつもの土曜の夜だった。俺はそのことに安堵していて、凌はなにを考えているのか分からないいつもの顔で、弁当をふたつ、電子レンジで温めに行く。
 「はい。」
 凌に手渡されたコンビニ弁当を割り箸でかき込みながら、俺は、明日もきっと、今日と同じように過ぎていくのだろう、とぼんやり考えている。いつまで続くのかなんて全然分からないけれど、とにかく、明日は。
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