三人暮らし

美里

文字の大きさ
18 / 28

明日美

しおりを挟む
 放課後、マック寄って帰ろ、と、私の席までやってきた志奈子と和紗に、私は、ごめん、と手を合わせた。
 「今日は無理。お母さんと悠ちゃん家にいるんだ。」
 今頃二人は多分、夕飯の支度なんかしているんだろう。私も早く帰ってそこに参戦したい。悠ちゃんだけ学校をさぼってもおとがめなしなのも納得いかなかった。日ごろの行い、なんてお母さんは言うし、確かに私は悠ちゃんみたいに成績良くないけど。
 「まーた悠ちゃん?」
 くるくるときれいに髪を巻いた志奈子が、不満そうに頬を膨らませる。ここ最近付き合いが悪い自覚がある私は、ごめんごめん、とぱんぱん手を合わせるしかない。
 「しょうがないよ。志奈子、行こう。」
 和紗は志奈子をなだめるみたいに微笑んで、私の合わせた手の間にふざけて拳をねじ込んだ。
 「だってさ、この前のコンパも悠ちゃんが嫌がるからってこないし。明日美はブラコンだよ。悠ちゃんコンプレックス。」
 「ごめんって。また誘って。次は行くからさ。」
 「明日美、悠ちゃん好きすぎ。ちょっと怖いくらいじゃん。」
 「志奈子、行こう。」
 志奈子は寂しがり屋で、ちょっとだけ絡み癖みたいなのもある。それを知っている私と和紗は、しょうがないね、と、目を見合わせて、志奈子を挟んで手を引き、教室を出た。
 「悠ちゃん悠ちゃんって、兄妹なんだから、ずっと一緒なんだから、別にいいじゃん。」
 「ごめんごめん。」
 苦笑いをしながら、私は志奈子の手を引っ張って廊下を歩き、靴を履きかえ、校庭に出た。よく晴れた秋の空。くっきりと青くて、雲ひとつない。校庭は、下校途中の生徒でごった返していて、でもその中に悠ちゃんはいない。当たり前のことで、私にとっては一番肝心なことだ。でもそれは、ちょっと怖いことなのだろうか。
 胸がざわざわした。なにか、気が付いてはいけないことに気が付いてしまいそうな感じだった。それに気が付いてしまったら、ぐるりと世界が反転してしまうようなことに。
 校門を出たところで、私は志奈子と和紗と別れた。
 「ごめんね、また明日ね。」
 「うん。またね。」
 和紗は笑顔で手を振ってくれたけれど、志奈子はちょっとふてくされたみたいな顔をして、黙ってくるりと背を向けて行ってしまう。
 「志奈子、明日ね!」
 反転しかけた世界がひっくり返らないように、慎重に重しをかけながら、私は駅までの道のりを一人で歩いた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...