雨の夜には

美里

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 ぼんやり考え込んでしまったな、と自己反省しながら、長いシャワーを終えた。里砂の言う通り、何度も彼を受け入れているうちに、自分の中のなにかはどんどん擦り切れていった。冷たい雨の晩になると、彼を待ちわびてじっと耳をすませている自分が、心底疎ましい。
 「……。」
 一人の部屋で、ベッドに膝を抱え、毛布をすっぽりかぶる。まだ彼の気配が残る部屋に、ひとりでいるのは辛かった。いつだって俺の恋は、似たような形で始まって終わる。これもその一つだと割り切ってしまえればいいのに、そうもいかないのはなぜだろう。一緒に死ぬか、と呟くときだけでも、彼の手つきが優しいからだろうか。それとも、馬鹿だな、と笑う時の目が、俺だけを見てくれていると、そんな気がするからだろうか。
 結局俺は、ひとりの部屋に耐えられなくなって、里砂に電話をかけてしまう。里砂も多分、こんな雨の晩には俺から電話が来ると察してくれているのだろう、一度目のコールも鳴り終わっていないのに電話を取った。
 「里砂?」
 『うん。』
 「なにしてた?」
 『レポート書いてた。』
 「真面目じゃん。」
 『まあね。そっちは男と乳繰り合ってたんでしょ?』
 「まあね。」
 『それで、今日ももう帰っちゃったの?』
 「……うん。」
 『なかなか手ごわいね。』
 「……うん。」
 『今日も、一緒に死のうって?』
 「うん。」
 『ちょっと嬉しそうなのやめて。怖いわ。』
 そう言って里砂は、細く長い息をついた。それはため息に似ていて、里砂らしくなかった。彼女がため息なんかつくのを、俺はこれまで聞いたことがない。里砂はいつでも、柳に風といった感じで飄々としていたし、他人に弱みを見せるのを良しとする性格でもない。それが、どうしたのだ。
 「里砂?」
 どうしたの、と、慎重に声をかけた。すると彼女は、低く笑った。その笑い方も、彼女らしくなかった。彼女はいつも、するすると息をするように軽やかに笑う。こんな、地を這うような笑い方をする彼女など、知らない。
 『……馬鹿みたいね。』
 里砂が、またため息交じりにそう言った。なにが、と、俺は内心焦って問い返した。すると彼女は短い沈黙の後、私もあんたも、と短く吐き出した。
 「え?」
 なにが? 俺は里砂の言う意味が全然分からずに、首を傾げた。俺が馬鹿みたいなのは。分かる。こんなふうに神経をすり減らして、セフレの真似事なんかして、俺は完全に馬鹿だ。でも、里砂は? 里砂が馬鹿みたいだったことなんか、俺が知っている限りは一度だってなかった。
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