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もしかしたら、もう二度と会うことはないのかもしれないと思っていた男は、二週間後の夜中に喧しい足音で外階段を上り、インターフォンを押してきた。冷たい雨の夜だった。
うちのインターフォンにはカメラが付いていないので、こんな時間に急にやってくる相手が思い浮かばなかった俺は、誰だろう、と首を傾げ、ドアを開けるのが少し遅れた。すると、どんどん、と、ドアを蹴られたのだ。
誰だよ、と思ったし、こんな時間にふざけんな、と、怒りもわいて、俺は勢いよく玄関のドアを開けた。するとそこに、彼が立っていた。傘はささず、肩を濡らして。
「……。」
俺は咄嗟に言葉が見つからなくて、黙って突っ立っていた。彼は俺を押しのけるみたいにして部屋に押し入ってきた。待って、焦った声が唇からこぼれた。思考が全然ついていっていなかったから。けれど彼は全然待ってなんてくれなくて、俺の襟首を引っ掴んでベッドに引きずって行った。本気で抵抗すれば、俺も男だから腕力で負けることもなかったと思うけれど、混乱していたからかなにもできなかった。それで、彼と寝た。体力の限界まで、という前回と同じ抱き方。
セックスが終わるとまた彼は、一緒に死ぬか、と呟いた。今度は明らかに俺に向かって。俺は、彼がはじめて俺を見てくれたみたいな気がして嬉しくて、弾んだ声で、うん、と頷いた。そのまま首でも締めてくれればいいのに、と、ちらりと思ったけれど、彼は俺を殺してなんてくれず、やっぱりシャワーも浴びずに帰って行った。
三度目は、それから一瞬間くらい経ってから、やっぱり冷たい雨の晩に。俺はその頃にはもう、彼が冷たい雨の夜をひどく嫌うことを薄々察し始めていた。理由を問うことは、全てを壊すことと同じような気がしてできなかったけれど。そして、傘をささずに帰って行こうとする彼を引き留め、傘を貸そうとした俺に、彼は鬱陶しそうに目を眇めて、母親みたいなこと、言うな、と吐き捨てた。ホモが調子に乗るな、と、罵られたものその日が最初だったはずだ。俺は彼のその態度に傷つきはしたのだけれど、その傷を見て見ぬふりした。抱かれているときだけでも俺は幸せで、それを失うのは怖かった。
里砂にそんなようなことを打ち明けると、彼女は小さく笑った後、その内擦り切れるわよ、と言った。気持ちが擦り切れていく。その感覚はなんとなく自覚していたから、俺はただ、うん、と小さく頷くことしかできなかった。
うちのインターフォンにはカメラが付いていないので、こんな時間に急にやってくる相手が思い浮かばなかった俺は、誰だろう、と首を傾げ、ドアを開けるのが少し遅れた。すると、どんどん、と、ドアを蹴られたのだ。
誰だよ、と思ったし、こんな時間にふざけんな、と、怒りもわいて、俺は勢いよく玄関のドアを開けた。するとそこに、彼が立っていた。傘はささず、肩を濡らして。
「……。」
俺は咄嗟に言葉が見つからなくて、黙って突っ立っていた。彼は俺を押しのけるみたいにして部屋に押し入ってきた。待って、焦った声が唇からこぼれた。思考が全然ついていっていなかったから。けれど彼は全然待ってなんてくれなくて、俺の襟首を引っ掴んでベッドに引きずって行った。本気で抵抗すれば、俺も男だから腕力で負けることもなかったと思うけれど、混乱していたからかなにもできなかった。それで、彼と寝た。体力の限界まで、という前回と同じ抱き方。
セックスが終わるとまた彼は、一緒に死ぬか、と呟いた。今度は明らかに俺に向かって。俺は、彼がはじめて俺を見てくれたみたいな気がして嬉しくて、弾んだ声で、うん、と頷いた。そのまま首でも締めてくれればいいのに、と、ちらりと思ったけれど、彼は俺を殺してなんてくれず、やっぱりシャワーも浴びずに帰って行った。
三度目は、それから一瞬間くらい経ってから、やっぱり冷たい雨の晩に。俺はその頃にはもう、彼が冷たい雨の夜をひどく嫌うことを薄々察し始めていた。理由を問うことは、全てを壊すことと同じような気がしてできなかったけれど。そして、傘をささずに帰って行こうとする彼を引き留め、傘を貸そうとした俺に、彼は鬱陶しそうに目を眇めて、母親みたいなこと、言うな、と吐き捨てた。ホモが調子に乗るな、と、罵られたものその日が最初だったはずだ。俺は彼のその態度に傷つきはしたのだけれど、その傷を見て見ぬふりした。抱かれているときだけでも俺は幸せで、それを失うのは怖かった。
里砂にそんなようなことを打ち明けると、彼女は小さく笑った後、その内擦り切れるわよ、と言った。気持ちが擦り切れていく。その感覚はなんとなく自覚していたから、俺はただ、うん、と小さく頷くことしかできなかった。
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