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そうやってなんとか夜をやり過ごそうとしているうちに、朝が近づいてきた。枕元のスマホを引き寄せれば、午前三時。どうにも眠れそうにないから、もう起き出して授業の準備や課題でもやってしまおうか、と、そんな気もないくせにぼんやり考えていると、インターフォンが鳴った。俺は驚いて、玄関を凝視する。こんな非常識な時間に訪ねてくる知り合いなんて、俺には一人しかいない。慌ててベッドから立ち上がり、玄関のドアを開けると、そこには華奢で髪の長い人影が、きちんと赤い傘をさして立っていた。
「……里砂。」
「彼だと思った?」
いたずらっぽい口調で彼女が言って、俺は半ば呆然としながら、首を左右に振った。考えてみれば、インターフォンが鳴る前に、階段を上る足音も聞こえなかった。いつも足音を荒立ててくる彼であるはずがない。
「もう、あの人は帰ったんでしょ?」
「……うん。」
里砂を部屋に入れるのには躊躇いがあった。乱れたベッドと、ゴミ箱に放り込んだコンドーム、シャワーも浴びていない俺、そして、多分濃密に残ってしまっている、男二人分の匂いと気配。でも、里砂は表情一つ変えずに部屋に上がり込むと、ベッドに寄りかかってラグの上に座り込んだ。思えば、彼女がこの部屋にやってくるのは、はじめてのことだ。
「……久しぶりだね。会うのは。」
「そうね。」
「寒いでしょ。暖房の効きが悪くて。」
「大丈夫。」
「なにか飲む?」
「なにがある?」
「お茶かコーヒー。」
「コーヒー。」
ちょっと待って、と、俺は冷蔵庫から取り出したペットボトルのコーヒーをマグカップに移し、電子レンジに入れて温めた。その間、里砂はなにも言わなかったし、俺も無言だった。
「はい。」
「ありがとう。」
里砂はマグカップに化粧っ気のない唇をつけた。髪型も服装の感じも、最後にあった高校時代と変わったようには思えないのに、なんで彼女はこうも大人びて見えるのだろうか。俺は内心で不思議に思いながら、里砂の隣に座って同じようにコーヒーを啜った。
「言いたいことは、言えた?」
なんの前置きもなく、ふわりと里砂が口を切った。俺は、言葉に迷って、ただ首を縦に振った。里砂を責めるための言葉が出てこなかったことに、内心で安堵していた。
「そしたら彼、帰っちゃったの?」
「……まあ。やることやって、帰ったね。」
「いつもと同じ?」
「……言ってくれなかった。」
「一緒に死のうって?」
いつも通りの里砂の慧眼に、いつもながら驚かせられ、俺はまたただ首を縦に振った。
「……里砂。」
「彼だと思った?」
いたずらっぽい口調で彼女が言って、俺は半ば呆然としながら、首を左右に振った。考えてみれば、インターフォンが鳴る前に、階段を上る足音も聞こえなかった。いつも足音を荒立ててくる彼であるはずがない。
「もう、あの人は帰ったんでしょ?」
「……うん。」
里砂を部屋に入れるのには躊躇いがあった。乱れたベッドと、ゴミ箱に放り込んだコンドーム、シャワーも浴びていない俺、そして、多分濃密に残ってしまっている、男二人分の匂いと気配。でも、里砂は表情一つ変えずに部屋に上がり込むと、ベッドに寄りかかってラグの上に座り込んだ。思えば、彼女がこの部屋にやってくるのは、はじめてのことだ。
「……久しぶりだね。会うのは。」
「そうね。」
「寒いでしょ。暖房の効きが悪くて。」
「大丈夫。」
「なにか飲む?」
「なにがある?」
「お茶かコーヒー。」
「コーヒー。」
ちょっと待って、と、俺は冷蔵庫から取り出したペットボトルのコーヒーをマグカップに移し、電子レンジに入れて温めた。その間、里砂はなにも言わなかったし、俺も無言だった。
「はい。」
「ありがとう。」
里砂はマグカップに化粧っ気のない唇をつけた。髪型も服装の感じも、最後にあった高校時代と変わったようには思えないのに、なんで彼女はこうも大人びて見えるのだろうか。俺は内心で不思議に思いながら、里砂の隣に座って同じようにコーヒーを啜った。
「言いたいことは、言えた?」
なんの前置きもなく、ふわりと里砂が口を切った。俺は、言葉に迷って、ただ首を縦に振った。里砂を責めるための言葉が出てこなかったことに、内心で安堵していた。
「そしたら彼、帰っちゃったの?」
「……まあ。やることやって、帰ったね。」
「いつもと同じ?」
「……言ってくれなかった。」
「一緒に死のうって?」
いつも通りの里砂の慧眼に、いつもながら驚かせられ、俺はまたただ首を縦に振った。
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