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8 悪役令嬢相手にしたら、堪忍袋の緒が切れた②
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サッとミランダが顔色を変える。
ミランダの家は落ちぶれていたのだが、男爵である父が始めた輸入業が当たり、持ち直したところなのだ。
「香水にワインに……杏子や干しぶどうなどのフルーツ類……、腐ってたとか、虫がついてたって噂が流れたらどうなるかしら?」
キッとヴァイオレットを睨みつけるミランダ。
「まぁ、怖い」
ヴァイオレットはゴテゴテと飾りのついた扇を取り出すと、ゆっくり仰ぎながら含み笑いをする。
「貴方が二度とティモシー様や他の殿方に手出ししないと約束をして、謝れば、許さないこともないけど」
「約束して謝れば、何もしないのね?」
「もちろんよ」
「ミランダだめよ」
「エリカ、止めないで。お父様に迷惑をかけたくないの」
ミランダはスカートを摘んで頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。二度とティモシーや他の殿方に手出しはいたしません」
ヴァイオレットが傍に来て、楽しそうに見下ろす。
「ふふ……ああ、まだ頭を上げないでちょうだい」
閉じた扇の先で、ミランダの頭を押さえつけた。頭を扇で押さえつけられたまま、ミランダは当惑する。
「……これ以上どうしろというの?」
「土下座しなさいな。あの東方から伝わってきた謝り方。泥棒猫のあなたにはぴったりじゃない?」
「もう、いま謝ったわ」
そんなことをしたら、ドレスも汚れてしまう。
「いいからやりなさいよ!」
ヴァイオレットはミランダの髪を掴み、彼女の顔を地面に押し付けようとした。
「放して! っ、痛いわ!!」
髪を掴んで上から体重を掛けるヴァイオレットに、痛さのあまり両手を地面につくミランダ。
令嬢たちは”いい気味”とばかりに、せせら笑う。
「やめなさいよ!」
エリカが猛然とヴァイオレットに体当たりをした。
まさか貴族の令嬢が体当たりをかますとは思っていなかったらしく、ヴァイオレットは呆気なく掴んでいた手を離す。
一瞬呆けたあとに、怒り出した。
「痛いじゃない! 何するのよ!」
「それはこっちのセリフよ!」
ミランダに言われて、我慢に我慢を重ねていたエリカだが、とうとう堪忍袋の緒が切れた。
ミランダの家は落ちぶれていたのだが、男爵である父が始めた輸入業が当たり、持ち直したところなのだ。
「香水にワインに……杏子や干しぶどうなどのフルーツ類……、腐ってたとか、虫がついてたって噂が流れたらどうなるかしら?」
キッとヴァイオレットを睨みつけるミランダ。
「まぁ、怖い」
ヴァイオレットはゴテゴテと飾りのついた扇を取り出すと、ゆっくり仰ぎながら含み笑いをする。
「貴方が二度とティモシー様や他の殿方に手出ししないと約束をして、謝れば、許さないこともないけど」
「約束して謝れば、何もしないのね?」
「もちろんよ」
「ミランダだめよ」
「エリカ、止めないで。お父様に迷惑をかけたくないの」
ミランダはスカートを摘んで頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。二度とティモシーや他の殿方に手出しはいたしません」
ヴァイオレットが傍に来て、楽しそうに見下ろす。
「ふふ……ああ、まだ頭を上げないでちょうだい」
閉じた扇の先で、ミランダの頭を押さえつけた。頭を扇で押さえつけられたまま、ミランダは当惑する。
「……これ以上どうしろというの?」
「土下座しなさいな。あの東方から伝わってきた謝り方。泥棒猫のあなたにはぴったりじゃない?」
「もう、いま謝ったわ」
そんなことをしたら、ドレスも汚れてしまう。
「いいからやりなさいよ!」
ヴァイオレットはミランダの髪を掴み、彼女の顔を地面に押し付けようとした。
「放して! っ、痛いわ!!」
髪を掴んで上から体重を掛けるヴァイオレットに、痛さのあまり両手を地面につくミランダ。
令嬢たちは”いい気味”とばかりに、せせら笑う。
「やめなさいよ!」
エリカが猛然とヴァイオレットに体当たりをした。
まさか貴族の令嬢が体当たりをかますとは思っていなかったらしく、ヴァイオレットは呆気なく掴んでいた手を離す。
一瞬呆けたあとに、怒り出した。
「痛いじゃない! 何するのよ!」
「それはこっちのセリフよ!」
ミランダに言われて、我慢に我慢を重ねていたエリカだが、とうとう堪忍袋の緒が切れた。
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