伯爵令嬢エリカは王子の恋を応援します!なのにグイグイこられて、あなたは男装王女の筈ですよね?

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11 上流階級の男性の多くは”浮気は男の甲斐性”と考える

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「ダニエル王子殿下……っ」

 ヴァイオレットの驚きの声で、全員が弾かれたように頭を下げた

 ダニエルは掴んでいた手首を放し、エリカとヴァイオレットに視線を留める。

「酷い言いようだと思うが?」

 水を得た魚のようにヴァイオレットが話し始めた。

「やはりそうお思いになりますでしょう? エリカ様はティモシーを悪し様に言い、更に私を侮辱したのです!」

 エリカは内心、溜息を吐く。

 上流階級の男性の多くは”浮気は男の甲斐性”と考えている。

 ”王子もやはり例外ではないのだろう”と苦々しい思いでいると、ダニエルが口を開いた。

「酷い言いようは君のほうだ。ヴァイオレット」

「え、」

 ヴァイオレットの口が半開きになる。

「話は全て聞いた。ミランダがティモシーに色目を使った事実などありはしない」

「それは、王子の前では隠しているだけです。人目につかないところであの女は!」

「ここ最近ティモシーには見張りをつけていた。何人かの女性から届けが出ていてね。”つきまとわれている”とか、”押し倒されそうになった”とか」

 ダニエルがヴァイオレットに向ける瞳は冷たい。

「ちょっと調べただけで、十分すぎるほどの証拠が上がった」

「そんなっ、」

 へなへなと足元にくずおれたヴァイオレットは、それでも顔を上げて王子の足に縋りつく。

「わたくしが、わたくしがいけなかったのです! ティモシーはわたくしを求めたのに、”結婚までは”と肌を許さなかった私が……! だからきっと、彼は誰彼構わずに手を出して……ティモシーは悪くありません!!」

「ここにきてまだ庇うか……。なら、なぜすぐにでも結婚しない?」

「それは……、」

「”結婚までの時間を長引かせて、独身の間にせいぜい遊ばせてもらう”と彼が言っていたそうだ」
 
 ヴァイオレットはショックのあまり黙り込む。

「ヴァイオレット、君がやろうとしたことはリンチだ。君はいわれのない罪でミランダを罵倒して脅し、吊るし上げようとした。罰を受けなければならない。今後、社交界への出入りは一切禁止する」

「その罰は厳しぎます!」

「今回だけならまだ目を瞑るが、君はティモシーが目をつけた罪のない女性たちを、何人もミランダのような目に遭わせたり、陰湿な嫌がらせをしてきたね」

「悔い改めます! 殿下、どうかお慈悲を……!」

「連れていけ」

 尚もダニエルの脚に縋りつくヴァイオレットを、騎士が無理やり引きはがした。

「殿下! お慈悲を! 殿下ぁー……!」

 慈悲を乞いながら引っ立てられるヴァイオレットは、大層惨めであり、物悲しくさえあった。

「君らにもそれ相応の罰を受けてもらう。今日は帰りたまへ、追って沙汰する」

 令嬢たちは互いの顔を見合わせながら、言葉もなく去っていった。
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