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56 オズワルド様。ゲームと性格が違うような……
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(動の王子が、何を言うんだろう)
「兄のエドワードは、”智の王子”という呼び名に恥じない優秀さで、国王になる為に生まれてきたような人物だ」
「はい……」
「それに比べて俺は、身体を動かすしか能がない阿呆で…」
「阿呆でないと思いますよ? それにゆくゆくは騎士団長になるほどの実力がおありですよね?」
「単なる身内びいきさ。他に才能がないから、団長の座をあてがおうとしているだけなんだ」
(あれ? この人ゲームと性格が違うような……)
「兄上は幼い頃から学習意欲旺盛で、客観的に物事も判断できて、自分の考えを相手に伝えるのが上手で、もちろん人を統率する能力も高い」
「はい」
「俺は考えを言葉にするのが下手で、身体が先に動いてしまう。だから失敗も多い。なのに”動の王子”なんて呼ばれて、分不相応な呼び名だ」
「そうは思いませんけど、今も自分の考えを私に分かりやすく、上手に話していらっしゃるじゃありませんか」
「いつも考えていることだから、頭の中で話がまとまっていて話しやすいんだ」
「はぁ」
「今回の訪問だって、兄上は仮病を使ったに違いない。公務を上手くこなせない俺に、きっと自信を持たせようとしたんだ」
「”自信を持たせる”ということは、今回の訪問は上手くいくと、お兄様は思っていらっしゃるんですね」
「兄上は俺がダニエルと親しいから、上手くいくと思っているんだ。本当は親しいわけじゃなく、6年前の武闘大会で負けたことが悔しくて、つい彼に突っかかってしまうだけなのに」
(ゲームでは自信満々の颯爽としたキャラだったけど、この世界では違うのね)
「自信を喪失してしまわれたんですね」
オズワルドが首を振る。
「元々自信などない。虚勢を張っていただけだ」
「そんなことはありません。オズワルド様は上に立つ者の資質を備えていらっしゃいます」
「やはりそなたも世辞を言うんだな……」
「いいえ、事実です。ええっと、まず……お兄様のエドワード殿下ですが、そんな甘い人間ではないのでは?」
「え?」
「”智の王子”と言われるだけあり、マイナスになると判断した時点で、兄弟といえども冷徹に切り捨てるお方です。もし、オズワルド様を阿呆と思っていたなら、代理人に選ばなかったでしょう。ましてや我が国とアーデンベルク国はお互いに大国で、国力が拮抗しており、良い仲を保たねばなりません。大切な親善の場には、実力のある者を送り込むはずです」
「単に、ルクレツィアの暴走を抑えられるのは、兄妹の俺しかいなかったからではないのか?」
「そうかもしれませんね」
「へ?」
肩透かしを食ったような顔をするオズワルドに、エリカがクスッと笑う。
「正しくは”それもありますね”です。いざという時にルクレツィア王女の暴走を止めることができて、良い結果を出せるオズワルド様を、エドワード様は選んだのです。ルクレツィア王女も、オズワルド様を認めているから、言う事を聞くのではないですか?」
「………」
「”失敗が多い”と仰いますが、行動して失敗するのは悪いことではありません。だって考えてばかりで行動しなかったら、何も始まらないでしょう?」
「しかし兄上は滅多に失敗をしない」
「それはオズワルド様の失敗を見て学んでいるからですわ」
「………え、」
「もちろん、失敗ばかりを見ている訳ではないと思います。オズワルド様が出した多様な結果を見て、指針を決めたりしているのではないでしょうか」
「………やっぱり俺は馬鹿っぽくないか? 怖さを知らない五歳児みたいだ」
「いいえ、違います。オズワルド様も同じ失敗を繰り返さないでしょう? 日々学んで良いほうに進んでいるはずです。それにすぐ行動に移せるというのは素晴らしいことなんですよ? 怖くて一歩を踏み出せない人が大半ですもの。お兄様はどちらかというと、怖くて行動出来ない方なのではないかしら。だから自分の代わりに行動してくれる貴方を、傍に置いておきたくて、騎士団長の座を用意しているのだと思います」
「いや、そんなことはないと思うが」
「もちろんそれだけではないと思います。自分を尊敬してくれる可愛い弟を、手放したくないという気持ちもあるのでしょう。その上剣の腕も立つし、騎士団のみんなからも慕われていると聞きました」
呆けた様にエリカを見ていたオズワルドが、いきなり笑い出した。
「兄のエドワードは、”智の王子”という呼び名に恥じない優秀さで、国王になる為に生まれてきたような人物だ」
「はい……」
「それに比べて俺は、身体を動かすしか能がない阿呆で…」
「阿呆でないと思いますよ? それにゆくゆくは騎士団長になるほどの実力がおありですよね?」
「単なる身内びいきさ。他に才能がないから、団長の座をあてがおうとしているだけなんだ」
(あれ? この人ゲームと性格が違うような……)
「兄上は幼い頃から学習意欲旺盛で、客観的に物事も判断できて、自分の考えを相手に伝えるのが上手で、もちろん人を統率する能力も高い」
「はい」
「俺は考えを言葉にするのが下手で、身体が先に動いてしまう。だから失敗も多い。なのに”動の王子”なんて呼ばれて、分不相応な呼び名だ」
「そうは思いませんけど、今も自分の考えを私に分かりやすく、上手に話していらっしゃるじゃありませんか」
「いつも考えていることだから、頭の中で話がまとまっていて話しやすいんだ」
「はぁ」
「今回の訪問だって、兄上は仮病を使ったに違いない。公務を上手くこなせない俺に、きっと自信を持たせようとしたんだ」
「”自信を持たせる”ということは、今回の訪問は上手くいくと、お兄様は思っていらっしゃるんですね」
「兄上は俺がダニエルと親しいから、上手くいくと思っているんだ。本当は親しいわけじゃなく、6年前の武闘大会で負けたことが悔しくて、つい彼に突っかかってしまうだけなのに」
(ゲームでは自信満々の颯爽としたキャラだったけど、この世界では違うのね)
「自信を喪失してしまわれたんですね」
オズワルドが首を振る。
「元々自信などない。虚勢を張っていただけだ」
「そんなことはありません。オズワルド様は上に立つ者の資質を備えていらっしゃいます」
「やはりそなたも世辞を言うんだな……」
「いいえ、事実です。ええっと、まず……お兄様のエドワード殿下ですが、そんな甘い人間ではないのでは?」
「え?」
「”智の王子”と言われるだけあり、マイナスになると判断した時点で、兄弟といえども冷徹に切り捨てるお方です。もし、オズワルド様を阿呆と思っていたなら、代理人に選ばなかったでしょう。ましてや我が国とアーデンベルク国はお互いに大国で、国力が拮抗しており、良い仲を保たねばなりません。大切な親善の場には、実力のある者を送り込むはずです」
「単に、ルクレツィアの暴走を抑えられるのは、兄妹の俺しかいなかったからではないのか?」
「そうかもしれませんね」
「へ?」
肩透かしを食ったような顔をするオズワルドに、エリカがクスッと笑う。
「正しくは”それもありますね”です。いざという時にルクレツィア王女の暴走を止めることができて、良い結果を出せるオズワルド様を、エドワード様は選んだのです。ルクレツィア王女も、オズワルド様を認めているから、言う事を聞くのではないですか?」
「………」
「”失敗が多い”と仰いますが、行動して失敗するのは悪いことではありません。だって考えてばかりで行動しなかったら、何も始まらないでしょう?」
「しかし兄上は滅多に失敗をしない」
「それはオズワルド様の失敗を見て学んでいるからですわ」
「………え、」
「もちろん、失敗ばかりを見ている訳ではないと思います。オズワルド様が出した多様な結果を見て、指針を決めたりしているのではないでしょうか」
「………やっぱり俺は馬鹿っぽくないか? 怖さを知らない五歳児みたいだ」
「いいえ、違います。オズワルド様も同じ失敗を繰り返さないでしょう? 日々学んで良いほうに進んでいるはずです。それにすぐ行動に移せるというのは素晴らしいことなんですよ? 怖くて一歩を踏み出せない人が大半ですもの。お兄様はどちらかというと、怖くて行動出来ない方なのではないかしら。だから自分の代わりに行動してくれる貴方を、傍に置いておきたくて、騎士団長の座を用意しているのだと思います」
「いや、そんなことはないと思うが」
「もちろんそれだけではないと思います。自分を尊敬してくれる可愛い弟を、手放したくないという気持ちもあるのでしょう。その上剣の腕も立つし、騎士団のみんなからも慕われていると聞きました」
呆けた様にエリカを見ていたオズワルドが、いきなり笑い出した。
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