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第五章
ナルヴィク
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朝、イフリートの執務室のドアをノックした。
「入れ」
「失礼致します」
イフリートが書類から顔を上げる。
「サー・カイト、おはよう」
「おはよう。サー・カイト」
サイラスも机に片手をついて立っている。
「お願いですからやめてください! 二人共ナイトの称号をお持ちじゃないですか。俺からサーをつけて呼ばれたいんですか!?」
若干顔が赤いカイトにイフリートとサイラスが笑った。
「悪い。つい、からかいたくなってな」
「お呼びになった用件は?」
「隣国のナルヴィクから夜会の招待状を頂いた。姫君であるシンシア様が二十歳になられるお祝いと、まだ決まったお相手がいないので花婿探しも兼ねてるようだ。リーフシュタインからはアレクセイ様と、リリアーナ様がご出席される」
「アレクセイ様はいいとして、リリアーナ様は男性が苦手でいらっしゃいます。アレクセイ様お一人のほうがよいのでは?」
「ナルヴィクの国王陛下と皇太子がお前の評判を聞きつけてな、空手の技をご覧になりたい・・・とまあ、これは建前で、リリアーナ様の婚約者となった噂の騎士をご覧になりたいのだろう」
「それで、リリアーナ様もご出席に・・・」
「そういう事だ。ところでお前、もうプロポーズしたんだろう?」
「・・・・・・」
「まさか! まだしていないのか!? あれからもう一週間たぞ?」
「最初にちょっと失敗しまして・・・その後に少し考えるところが出てきたので遅れて今日に至ってます」
サイラスが口を出す。
「こういうことは早いほうがいいと思うよ? まあそれとは別にして、周りは婚約が成立していると思っているからナルヴィクでは婚約者という形で行ってもらうから。
あと、ここからが本題だけど、護衛の騎士は今回あまりつけられないんだ。クリスティアナ様がヴァルカウスの`ジューンブライドフェスタ‘ を欠席したろう? その後に他の催しでまた招待されたので、出席する事になったんだけど、ちょうど日にちが重なるんだ。そちらにも護衛を出さないといけなくてね」
「ヴァルカウスのルドルフ皇太子はクリスティアナ様を狙っている――! 婚約者としてご一緒して、そんな想いを蹴散らしてやろうと思ってな」
「お願いだから、本人を蹴散らさないでよ。国家間の問題になるから」
「この際、どちらかをキャンセルすればいいのでは?」
「それが・・・ヴァルカウスの`ジューンブライドフェスタ‘ をイフリートとクリスティアナ様の婚約騒ぎ+イフリートのルドルフ皇太子への嫉妬で土壇場でキャンセルしたし、今回の招待は避けられないんだ。ナルヴィクは・・・アレクセイ様がどうしても出席したいらしい」
「アレクセイ様が?」
「ああ、アレクセイ様は以前ナルヴィクの大学に留学していただろう? その時のクラスメートにナルヴィクの皇太子のレオンハルト様がいらっしゃって、その縁からシンシア様にお会いになり、好意をお持ちになったらしい。もう何回も結婚を申し込まれているのだが、はっきりした返事が返ってこないそうだ」
「もしかして、武術大会に参加されたのは・・・?」
「そうだ。優勝したら女神役のシンシア様から頬に勝利のキスを受けられるからだ。まあ、さすがに騎士相手に優勝は無理だとは思っていたが三位とは、余程鍛えられたんだろう」
「シンシア様は返事を下さらないのですか?」
「うん・・・これが不思議でね、毎回返事が`考えさせて下さい ‘ という内容のようだ。断られてしまえば思い切る事もできるのだろうが、なまじ宙ぶらりんだから想いが募ってしまうのだろうね」
「確かに不思議ですね・・・。それで、その護衛は今回何名ですか?」
「・・・お前と俺を合わせて全部で十名だ」
「少なすぎませんか!? 一国の皇太子にリリアーナ様もいるのに」
サイラスはカイトの肩に手を置いて、にっこりと笑った。
「だからカイト、お前に頼みたい事がある」
「あれが、皇太子が乗っている馬車か・・・情報通り、護衛の人数が少ないな」
「リリアーナ姫も乗っているんだろう? あの武術大会で優勝した騎士が見当たらないし、今回同行していないという噂は本当のようだな」
「よし! 行くぞ!!」
盗賊たちは奇声を上げて一斉に襲い掛かった。一人の男が馬車の扉を開ける。
「皇太子に姫君に侍女二人か、姫君は噂になるだけあって、美しいな」
男が手を伸ばそうとした時、いきなり身体が馬車の外に吹っ飛んだ。その男を仲間が覗き込む。
「お頭(かしら)、こいつ気絶してますぜ」
ドゴッ――と、馬車を覗いた他の男がまた飛ばされた。そして中から侍女が一人出てきた。
「でっかい女だな・・・でも、なかなか美人かも・・・」
途端に遠くまで蹴り飛ばされた。侍女はおもむろにウエストに結んであった紐を解く。スカートが下に落ち、ズボンを履いた足が現れる。
「え? 女装?」
この男も蹴り飛ばされた。
「お前は! 姫様付きの!!」
あとは怒りが籠もった蹴りと鉄拳を盗賊達はただただ受けるのみだった。
「今回はカイトが全部倒してくれるんで助かるよ」
サイラスが笑って言う。
「俺はもう二度とごめんです。フランチェスカに眉まで整えられて・・・大体馬車に乗ってるんだから、侍女の格好をする必要はないのでは!?」
サイラスが首を振る。
「やはり、意外性は必要だよ。皆、呆気にとられてて攻撃しやすかったろ?」
「まあ、そういえばそうですが・・・俺を見て、面白がっていませんか?」
「いや、全然」
「こちらを見て答えて下さい」
盗賊達を縛り上げ、駆けつけてきたそこの地区を取り締まる者達に引渡し、一行はまた出発する。
「カイト、大活躍だったな」
「ええ、本当に」
リリアーナも同意する。
「アレクセイ様、リリアーナ様、ありがとうございます」
「スカート、少し破れちゃったわね。後で縫うわね」
フランチェスカが検分している。
「帰りも着るのか・・・もうすぐナルヴィクに着くのに、俺はどこで着替えるんだ?」
「確かにそれを忘れていたな」
ナルヴィクに到着すると、皇太子のレオンハルトと、王女のシンシアが、城の入り口で出迎えてくれた。
「アレクセイ、久しぶりだな! 元気にしてたか?」
「レオンハルト! ああ、お陰さまで。君はどうだい?」
「色々と忙しいけど、元気だよ。リリアーナ王女殿下!」
「ご無沙汰しております。レオンハルト皇太子殿下、どうぞリリアーナと呼んで下さい」
「それでしたら、リリアーナ姫とお呼びしましょう。私の事も大げさな敬称を抜きで呼んで下さい。ところで、サー・カイトは?」
「か、彼は少し遅れて来るんだ」
「そうか、来れるなら良かった」
「シンシア姫。武術大会以来ですね」
二人は以前からお互いに簡単な敬称で呼ぶ事にしている。アレクセイは少し身を寄せて話しかけた。
「アレクセイ様。お変わりなくて何よりです」
シンシアは恥かしそうに挨拶をすると、視線を下に落としてしまった。シンシアを想うアレクセイは視線を逸らされて少し悲しかったりする。
「お茶の用意をしているから、一緒にどうだい」
レオンハルトが声を掛け、リリアーナとシンシアが話しながら歩き始めた時、段差に気付かなかったリリアーナが二段ほどの階段で、バランスを崩した。
「リリアーナ様!」
それまで後ろで目立たないようにしていたカイトが駆け寄ると屈んで声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「少し足をくじいたみたい」
「お運びいたします」
カイトがリリアーナを横に抱き上げると、皆からの視線が集中していた。『しまった――いつもの調子で・・・』
「何ていうか・・・男前な侍女だね。背も高くて、ハスキーボイスだ」
「あ、ああ、彼女は騎士をしていた事もあるんだ」
シンシアがカイトをじっと見ている。そして腑に落ちたような顔をすると
「お兄様、きっと皆様疲れていらっしゃるわ。一度お部屋にご案内しては?」
「そうだね、リリアーナ姫も足をくじいたみたいだし」
そして、部屋まで案内される事となった。
「入れ」
「失礼致します」
イフリートが書類から顔を上げる。
「サー・カイト、おはよう」
「おはよう。サー・カイト」
サイラスも机に片手をついて立っている。
「お願いですからやめてください! 二人共ナイトの称号をお持ちじゃないですか。俺からサーをつけて呼ばれたいんですか!?」
若干顔が赤いカイトにイフリートとサイラスが笑った。
「悪い。つい、からかいたくなってな」
「お呼びになった用件は?」
「隣国のナルヴィクから夜会の招待状を頂いた。姫君であるシンシア様が二十歳になられるお祝いと、まだ決まったお相手がいないので花婿探しも兼ねてるようだ。リーフシュタインからはアレクセイ様と、リリアーナ様がご出席される」
「アレクセイ様はいいとして、リリアーナ様は男性が苦手でいらっしゃいます。アレクセイ様お一人のほうがよいのでは?」
「ナルヴィクの国王陛下と皇太子がお前の評判を聞きつけてな、空手の技をご覧になりたい・・・とまあ、これは建前で、リリアーナ様の婚約者となった噂の騎士をご覧になりたいのだろう」
「それで、リリアーナ様もご出席に・・・」
「そういう事だ。ところでお前、もうプロポーズしたんだろう?」
「・・・・・・」
「まさか! まだしていないのか!? あれからもう一週間たぞ?」
「最初にちょっと失敗しまして・・・その後に少し考えるところが出てきたので遅れて今日に至ってます」
サイラスが口を出す。
「こういうことは早いほうがいいと思うよ? まあそれとは別にして、周りは婚約が成立していると思っているからナルヴィクでは婚約者という形で行ってもらうから。
あと、ここからが本題だけど、護衛の騎士は今回あまりつけられないんだ。クリスティアナ様がヴァルカウスの`ジューンブライドフェスタ‘ を欠席したろう? その後に他の催しでまた招待されたので、出席する事になったんだけど、ちょうど日にちが重なるんだ。そちらにも護衛を出さないといけなくてね」
「ヴァルカウスのルドルフ皇太子はクリスティアナ様を狙っている――! 婚約者としてご一緒して、そんな想いを蹴散らしてやろうと思ってな」
「お願いだから、本人を蹴散らさないでよ。国家間の問題になるから」
「この際、どちらかをキャンセルすればいいのでは?」
「それが・・・ヴァルカウスの`ジューンブライドフェスタ‘ をイフリートとクリスティアナ様の婚約騒ぎ+イフリートのルドルフ皇太子への嫉妬で土壇場でキャンセルしたし、今回の招待は避けられないんだ。ナルヴィクは・・・アレクセイ様がどうしても出席したいらしい」
「アレクセイ様が?」
「ああ、アレクセイ様は以前ナルヴィクの大学に留学していただろう? その時のクラスメートにナルヴィクの皇太子のレオンハルト様がいらっしゃって、その縁からシンシア様にお会いになり、好意をお持ちになったらしい。もう何回も結婚を申し込まれているのだが、はっきりした返事が返ってこないそうだ」
「もしかして、武術大会に参加されたのは・・・?」
「そうだ。優勝したら女神役のシンシア様から頬に勝利のキスを受けられるからだ。まあ、さすがに騎士相手に優勝は無理だとは思っていたが三位とは、余程鍛えられたんだろう」
「シンシア様は返事を下さらないのですか?」
「うん・・・これが不思議でね、毎回返事が`考えさせて下さい ‘ という内容のようだ。断られてしまえば思い切る事もできるのだろうが、なまじ宙ぶらりんだから想いが募ってしまうのだろうね」
「確かに不思議ですね・・・。それで、その護衛は今回何名ですか?」
「・・・お前と俺を合わせて全部で十名だ」
「少なすぎませんか!? 一国の皇太子にリリアーナ様もいるのに」
サイラスはカイトの肩に手を置いて、にっこりと笑った。
「だからカイト、お前に頼みたい事がある」
「あれが、皇太子が乗っている馬車か・・・情報通り、護衛の人数が少ないな」
「リリアーナ姫も乗っているんだろう? あの武術大会で優勝した騎士が見当たらないし、今回同行していないという噂は本当のようだな」
「よし! 行くぞ!!」
盗賊たちは奇声を上げて一斉に襲い掛かった。一人の男が馬車の扉を開ける。
「皇太子に姫君に侍女二人か、姫君は噂になるだけあって、美しいな」
男が手を伸ばそうとした時、いきなり身体が馬車の外に吹っ飛んだ。その男を仲間が覗き込む。
「お頭(かしら)、こいつ気絶してますぜ」
ドゴッ――と、馬車を覗いた他の男がまた飛ばされた。そして中から侍女が一人出てきた。
「でっかい女だな・・・でも、なかなか美人かも・・・」
途端に遠くまで蹴り飛ばされた。侍女はおもむろにウエストに結んであった紐を解く。スカートが下に落ち、ズボンを履いた足が現れる。
「え? 女装?」
この男も蹴り飛ばされた。
「お前は! 姫様付きの!!」
あとは怒りが籠もった蹴りと鉄拳を盗賊達はただただ受けるのみだった。
「今回はカイトが全部倒してくれるんで助かるよ」
サイラスが笑って言う。
「俺はもう二度とごめんです。フランチェスカに眉まで整えられて・・・大体馬車に乗ってるんだから、侍女の格好をする必要はないのでは!?」
サイラスが首を振る。
「やはり、意外性は必要だよ。皆、呆気にとられてて攻撃しやすかったろ?」
「まあ、そういえばそうですが・・・俺を見て、面白がっていませんか?」
「いや、全然」
「こちらを見て答えて下さい」
盗賊達を縛り上げ、駆けつけてきたそこの地区を取り締まる者達に引渡し、一行はまた出発する。
「カイト、大活躍だったな」
「ええ、本当に」
リリアーナも同意する。
「アレクセイ様、リリアーナ様、ありがとうございます」
「スカート、少し破れちゃったわね。後で縫うわね」
フランチェスカが検分している。
「帰りも着るのか・・・もうすぐナルヴィクに着くのに、俺はどこで着替えるんだ?」
「確かにそれを忘れていたな」
ナルヴィクに到着すると、皇太子のレオンハルトと、王女のシンシアが、城の入り口で出迎えてくれた。
「アレクセイ、久しぶりだな! 元気にしてたか?」
「レオンハルト! ああ、お陰さまで。君はどうだい?」
「色々と忙しいけど、元気だよ。リリアーナ王女殿下!」
「ご無沙汰しております。レオンハルト皇太子殿下、どうぞリリアーナと呼んで下さい」
「それでしたら、リリアーナ姫とお呼びしましょう。私の事も大げさな敬称を抜きで呼んで下さい。ところで、サー・カイトは?」
「か、彼は少し遅れて来るんだ」
「そうか、来れるなら良かった」
「シンシア姫。武術大会以来ですね」
二人は以前からお互いに簡単な敬称で呼ぶ事にしている。アレクセイは少し身を寄せて話しかけた。
「アレクセイ様。お変わりなくて何よりです」
シンシアは恥かしそうに挨拶をすると、視線を下に落としてしまった。シンシアを想うアレクセイは視線を逸らされて少し悲しかったりする。
「お茶の用意をしているから、一緒にどうだい」
レオンハルトが声を掛け、リリアーナとシンシアが話しながら歩き始めた時、段差に気付かなかったリリアーナが二段ほどの階段で、バランスを崩した。
「リリアーナ様!」
それまで後ろで目立たないようにしていたカイトが駆け寄ると屈んで声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「少し足をくじいたみたい」
「お運びいたします」
カイトがリリアーナを横に抱き上げると、皆からの視線が集中していた。『しまった――いつもの調子で・・・』
「何ていうか・・・男前な侍女だね。背も高くて、ハスキーボイスだ」
「あ、ああ、彼女は騎士をしていた事もあるんだ」
シンシアがカイトをじっと見ている。そして腑に落ちたような顔をすると
「お兄様、きっと皆様疲れていらっしゃるわ。一度お部屋にご案内しては?」
「そうだね、リリアーナ姫も足をくじいたみたいだし」
そして、部屋まで案内される事となった。
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