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第三章 隠れた事実

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「そ、蒼太くん……?」

ぐぐっと、顎に力がくわわる。
私が名前を呼んでも、蒼太くんからの返事は一向に返ってこなかった。

「え、ちょ、どうしたの? いきなり雪ちゃんの顔つかむなんて」

由利ちゃんは急な蒼太くんの行動にあっけにとられつつもおそるおそる質問した。
しかし、それに対して反応はなく、代わりに蒼太くんは私へ質問してきた。

「ゆきちゃん……達也とは友達だって言ったよね? 僕にうそついたの? ただのうわさだから本当なわけない、って信じてたのに。いつから? 僕の知らない間に二人で会ってたりしてたの?キスはした? 他にもいろいろ、そんなの僕耐えられないんだけど、うそだよね ?……ねぇ!」

過去、蒼太くんに感じた恐怖心を、今再び受け取る。
達也くんと由利ちゃんは、こっちを見ながら状況が飲み込めていないようだった。どうすればよいのか分からないのだろう。

「おい、蒼太、なんか勘違いしてるみたいだけ――」
「黙れ」

達也くんが腕を伸ばし、誤解を解こうとしたが、蒼太くんの一言によりその場はしんと静まり返ってしまった。
いつも穏やかにしゃべる蒼太くんの口から鋭い言葉が出たことに、みんな困惑していた。
私も自分がすべき行動の最適解が分からない。

「蒼太く」



「はぁ……は……はっ……」

捕まれてた顎が解放されたので、私は蒼太くんの方を見て、名前を呼ぼうと口を開いた。けれど蒼太くんの様子がおかしい。
呼吸がはやく、苦しそうに胸をおさえている。

「……いやだっ」

私の服をつかみ悲痛な面持ちで声を絞り出す蒼太くんに、かける言葉を浮かばせては、声にならないまま頭の中にうずまいていく。
そのうちに服の引っ張られる感覚が消えていった。

どさりという音をたてて、視界から蒼太くんが消える。

「きゃぁ !」
「え、ちょっと、倒れてるじゃん」
「どうしたの? 何かあったの」
「おい! 聞こえるか?」
「先生呼んで、早く !」

周りにいる人が慌てて動き回っているなか私は先程の蒼太くんの表情が頭から離れなかった。
一人だけ立ち尽くし倒れた蒼太くんをじっと見つめる。
体が冷えていて、凍えそうなくらい寒かった。

そのうち先生がやってきて、蒼太くんは保健室へと運ばれた。
私のせいで倒れてしまったのだろうか。
そう思ったら、罪悪感から胃がキリキリと痛みだした。
謝った方がいいのかな、という思考が出てきたが、まず蒼太くんは何に対して怒って、何に対して傷ついたのかを理解できなくて、自分が思いつくかぎりの理由をひたすら考えた。
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