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第四章 コンプレックス

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次の日も蒼太くんは学校に来ず、心配する声が、クラスに飛び交った。私も口には出さなかったが不安だった。

──き、雪

「え、あ、はい!」

 繰り返し呼ばれた自分の名前に、勢いよく返事をする。正面には、帰り支度をした達也くんがいた。
 時間の流れは早いもので、気づいたら下校時間になっていた。

 今日がいつもと違う四時間授業のせいか、朝の感覚が抜けきらず、帰らないといけないという実感が湧かない。
 ごめんねぼーっとしてた、と、達也くんに伝えると、お前まだ寝ぼけてんじゃねーの、と言い返された。
 否定することが出来なかった私は、苦笑いをして誤魔化す。

 「まぁとりあえずなんでもいいけどさ、早く帰りたいんだけど」
「え、あ、うん。わかった」
「わかったじゃなくて、雪も一緒に帰るんだよ」
「え、私も!?」

 てっきり、昨日だけだと思っていた私は、驚きの声をあげて聞き返した。
 達也くん曰く、一日だけ一緒に帰ってたら変だから今日も帰る。ということらしい。
 昨日は気まずいまま別れたから、勝手に別々で帰宅すると思っていた。確かにそうだね、と相槌を打ちながら、そわそわと浮き足立つ。

 帰り道、私は冷や汗をかいていた、というのも、話が全然続かないのだ。達也くんは全く気にしてない様子だが、私としては、沈黙が辛くて仕方ない。

「おー、達也」

 その時、昨日聞いたばかりの声が後ろから聞こえてきた。

「は、なんで今日も兄貴がいるんだよ」

 隣で、ボソリと発した達也くんの声は、冷えきっていた。自然と背筋が伸び、達也くんとお兄さんを交互に見る。

「おー! 昨日ぶりだね、どう? アイス美味しかった?」
「あ、はい美味しかったです! 昨日はありがとうございました」

 相変わらずの眩しさに、こちらも負けじと笑顔を作り、お礼を言う。
 ここにいたら、また昨日みたいに、達也くんと気まずくなるかも……と思った私は、断りをいれるため口を開きかけた。しかしそれより先に、達也くんのお兄さんが私に提案をしてきた。

「そうだ、せっかくだし、よかったら昼ご飯食べて言ったら?」
「え」
「は、何言ってんだよ」

戸惑う私の隣で、達也くんが怒りながら反論してきた。

「なんでわざわざ雪を誘う必要があるわけ、俺は絶対嫌だからな」
「雪ちゃんって言うんだ、おい達也、そんなこと言ったら雪ちゃんが可哀想だろ? こいつのことは気にしなくていいからね、遠慮しないで」
「で、でも」
「いいからさ、な? 達也もいいだろ?」

 お兄さんにわしゃわしゃと頭を撫でられてる達也くんは、眉間に皺を寄せ、見たことのない顔をしていた。

「……しらね」

 そっぽを向いて、明らかによくなさそうな達也くんをチラチラと見る。やっぱり大丈夫です、と断ろうとしたが、お兄さんの圧におされ、達也くんの家へと連れ去られた。





 
 
 



 
 

 
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