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サヴァリッシュ王国
エリオス・ディスマンド
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≪幻惑の森≫から帰った次の日、候補生達のみの普通の訓練が再開された。
各騎士団との訓練から帰ってきた候補生達はこの前よりも成長した大人な表情をしており、親でもないのになんだかほほえましく感じた。まあ僕が皆より年上だから上から見た感想になってしまったけど。
今日は僕とリカーフが待ちに待った魔術の訓練だ。
実はリカーフから土魔法について相談をもらった時から、訓練後の少し空いた時間などを使って、密かに訓練をしていたのだった。
それに、魔術の初回の授業ということで、魔術のみを用いた模擬戦があるのだ。
といっても、時間短縮のためだろうか、立候補制だ。
僕は参加しない。
なぜなら今朝、候補生試験を担当した赤燐騎士団の団長ガシス・ディスマンド様に呼び止められ、模擬戦には参加しないように、と言われたからだ。
試験で風魔法を使っていてそれの何が駄目だったからかと思い、咄嗟に理由を尋ねてしまった。
すぐに前の世界ではこんな反論するなんてことなかったのに、と反省したが、団長様は朗らかに笑い、こう答えてくれた。
「悪い悪い。言い方が悪かったか。決してお前の技術が劣っているからってわけじゃねぇよ。お前は間違いなく風魔法の概念を覆すことのできる技術をもっているんだ。それに、周りの候補生に油断というものがいかに危ないかを知ってもらえるきっかけにもなるしな。」
「…?それでは、なぜ…?」
「それはな、お前の魔法、ちと強すぎるんだ。貴族のプライドっつうもんは意外と面倒くさいんだぞ?なんもできずにお前が涼しい顔で倒したら逆恨み間違いなしだぜ?だから嫌な奴に目をつけられないようにっつう俺なりの処置ってわけだ。」
「なるほど。本当にすみませんっ。気遣っていただいたのに…」
「まっ礼は黒曜騎士団長に頼むぜ?あいつが言ってきたんだぜ?俺の番を頼む、と。」
アレフガートさんが…。
本来あまり違う騎士団同士あまり仲が良くないと聞いた。いくら白鷺騎士団と黒曜騎士団の間をとりもつ中立派といえど、頼むのは大変だっただろう。どんどん借りが増えていく。
大切にされているのだと思えば、温かい気持ちに包まれるが、自分が何も返せていないことや番だからこのようにしてもらえるのだと思うと、後ろめたさのようなものや胸のあたりに冷たい風が通り過ぎたように感じる。
そんなこんなで、僕は参加せず、リカーフが参加することとなった。
立候補のには少し驚いたが、本人が「びっくりさせるから、ちゃんと見ててね?」というので、おとなしく観戦する。
模擬戦は15試合ある。勝ち上がりの戦いで、もし順調に勝っていけば、4回戦うこととなる。
リカーフ、頑張れ。
応援することしかできないから、必死に応援する。周りの候補生たちも大いに盛り上がっているだろうから聞こえないだろうが、声援を飛ばした。
訓練の成果か、リカーフの素質もあったのだろう。決勝まであっけないほど順調に勝ち進んだリカーフは今、決勝戦である。
対戦相手は火魔法を使う身ぎれいな服を着たおそらく貴族であろう人だ。渋い顔をしてリカーフと向かい合っている。
リカーフが試合用のらしい短い杖を持ち、詠唱を始める。それに対し相手も詠唱を始める。しかし、僕は自分が使わない魔法の属性の魔法陣だったからなんの魔法かすぐに理解できなかった。
勝負はすぐについた。リカーフが詠唱を唱え終えたその時、対戦相手の地面が隆起し、たちまち下半身を土の中に沈めたのだ。思わぬ攻撃法にあっけにとられた相手に極めつけと言わんばかりに訓練場の土という土を巻き上げ、無動作に相手の頭上へ放つ。相手も必死に火魔法を放つが、土で視界が遮られたせいか標的がすれてしまって、当たらない。
そうして少し滑稽な姿で対戦相手は降参の意を示した。
リカーフの圧勝である。
まわりの候補生はざわめいているが、概ね好意的にリカーフの勝利を祝っていた。
そのことにほっとしたのも束の間、途端に先ほど赤燐騎士団長様に言われたことが脳裏を横切る。
「貴族のプライドっつうもんは意外と面倒くさいんだぞ?」
リカーフを見ると、対戦相手を助け起こしている最中だ。思わず警戒してしまう。
もしリカーフに難癖でもつけようとするなら即座に間に入ろうと、飛び出す準備をする。
しかしその男は予想外の行動に出た。
「俺は、ディスマンド侯爵家が嫡男エリオス・ディスマンドと申します!どうか俺と、結婚を前提に婚約をしてくださいませんか⁉」
「は?」
うん。僕もそういいたいよ、リカーフ。周りの候補生たちも静まり返り、見守っていた教官でさえ固まっている。
「返事はまだいりません!しかし、必ずあなたを惚れさせます!」
そう、この男、猪突猛進タイプの人間である。
――
リカーフ編続きます…。
各騎士団との訓練から帰ってきた候補生達はこの前よりも成長した大人な表情をしており、親でもないのになんだかほほえましく感じた。まあ僕が皆より年上だから上から見た感想になってしまったけど。
今日は僕とリカーフが待ちに待った魔術の訓練だ。
実はリカーフから土魔法について相談をもらった時から、訓練後の少し空いた時間などを使って、密かに訓練をしていたのだった。
それに、魔術の初回の授業ということで、魔術のみを用いた模擬戦があるのだ。
といっても、時間短縮のためだろうか、立候補制だ。
僕は参加しない。
なぜなら今朝、候補生試験を担当した赤燐騎士団の団長ガシス・ディスマンド様に呼び止められ、模擬戦には参加しないように、と言われたからだ。
試験で風魔法を使っていてそれの何が駄目だったからかと思い、咄嗟に理由を尋ねてしまった。
すぐに前の世界ではこんな反論するなんてことなかったのに、と反省したが、団長様は朗らかに笑い、こう答えてくれた。
「悪い悪い。言い方が悪かったか。決してお前の技術が劣っているからってわけじゃねぇよ。お前は間違いなく風魔法の概念を覆すことのできる技術をもっているんだ。それに、周りの候補生に油断というものがいかに危ないかを知ってもらえるきっかけにもなるしな。」
「…?それでは、なぜ…?」
「それはな、お前の魔法、ちと強すぎるんだ。貴族のプライドっつうもんは意外と面倒くさいんだぞ?なんもできずにお前が涼しい顔で倒したら逆恨み間違いなしだぜ?だから嫌な奴に目をつけられないようにっつう俺なりの処置ってわけだ。」
「なるほど。本当にすみませんっ。気遣っていただいたのに…」
「まっ礼は黒曜騎士団長に頼むぜ?あいつが言ってきたんだぜ?俺の番を頼む、と。」
アレフガートさんが…。
本来あまり違う騎士団同士あまり仲が良くないと聞いた。いくら白鷺騎士団と黒曜騎士団の間をとりもつ中立派といえど、頼むのは大変だっただろう。どんどん借りが増えていく。
大切にされているのだと思えば、温かい気持ちに包まれるが、自分が何も返せていないことや番だからこのようにしてもらえるのだと思うと、後ろめたさのようなものや胸のあたりに冷たい風が通り過ぎたように感じる。
そんなこんなで、僕は参加せず、リカーフが参加することとなった。
立候補のには少し驚いたが、本人が「びっくりさせるから、ちゃんと見ててね?」というので、おとなしく観戦する。
模擬戦は15試合ある。勝ち上がりの戦いで、もし順調に勝っていけば、4回戦うこととなる。
リカーフ、頑張れ。
応援することしかできないから、必死に応援する。周りの候補生たちも大いに盛り上がっているだろうから聞こえないだろうが、声援を飛ばした。
訓練の成果か、リカーフの素質もあったのだろう。決勝まであっけないほど順調に勝ち進んだリカーフは今、決勝戦である。
対戦相手は火魔法を使う身ぎれいな服を着たおそらく貴族であろう人だ。渋い顔をしてリカーフと向かい合っている。
リカーフが試合用のらしい短い杖を持ち、詠唱を始める。それに対し相手も詠唱を始める。しかし、僕は自分が使わない魔法の属性の魔法陣だったからなんの魔法かすぐに理解できなかった。
勝負はすぐについた。リカーフが詠唱を唱え終えたその時、対戦相手の地面が隆起し、たちまち下半身を土の中に沈めたのだ。思わぬ攻撃法にあっけにとられた相手に極めつけと言わんばかりに訓練場の土という土を巻き上げ、無動作に相手の頭上へ放つ。相手も必死に火魔法を放つが、土で視界が遮られたせいか標的がすれてしまって、当たらない。
そうして少し滑稽な姿で対戦相手は降参の意を示した。
リカーフの圧勝である。
まわりの候補生はざわめいているが、概ね好意的にリカーフの勝利を祝っていた。
そのことにほっとしたのも束の間、途端に先ほど赤燐騎士団長様に言われたことが脳裏を横切る。
「貴族のプライドっつうもんは意外と面倒くさいんだぞ?」
リカーフを見ると、対戦相手を助け起こしている最中だ。思わず警戒してしまう。
もしリカーフに難癖でもつけようとするなら即座に間に入ろうと、飛び出す準備をする。
しかしその男は予想外の行動に出た。
「俺は、ディスマンド侯爵家が嫡男エリオス・ディスマンドと申します!どうか俺と、結婚を前提に婚約をしてくださいませんか⁉」
「は?」
うん。僕もそういいたいよ、リカーフ。周りの候補生たちも静まり返り、見守っていた教官でさえ固まっている。
「返事はまだいりません!しかし、必ずあなたを惚れさせます!」
そう、この男、猪突猛進タイプの人間である。
――
リカーフ編続きます…。
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