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ヘーゲルツ王立学園
罪な妄想
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夜寝床についても今日はなかなか寝られない。
さっきまで武道会についての仕事でほとんど寝ていないから、体は休息を求めているはずなのに眼も頭も冴えたままだ。
必死に無心になろうとするが駄目だ。
さっきの教頭先生とドリトン先生との会話でアレフガートさんのことを考えてしまってからずっと思考の波にのまれている。
アレフガートさんは凄い人だ、本当に。僕にはもったいなすぎる。
僕のことを番だからか大事にしてくれて、本当に僕のことが好きだとでも言うような態度と言葉で僕を惑わせる魔性の人。
思い出したくないのに次々と思い出が蘇り、彼のしぐさから体の細部まで思い出してしまう。
彼ぐらい逞しい体なら僕のことなんて簡単に押し倒せるのだろう。
それを想像するとふいに下半身に違和感を感じた。
そういえばいつからしていないんだろう。最後に触ったのなんてもう何年も前だ。
醜い自分の陰茎なんて見たくもないが、既に下半身では欲の象徴が勃ちあがっている。
ベッドの上で粗雑に自分の陰茎を取り出し触る。
気持ち良くて必死に己の陰茎を上下に擦る。
「ぅん、…ふっ、、あっぅ……」
自分の口からあられもない汚声が出てきている。
それに気づきつつも、もっと気持ちいいを感じたくて胸にも手を伸ばす。
色白のせいで目立ってしまって小学生の時コンプレックスだった乳首を彼の大きくて長い、少し角ばった指に触れられることを想像しながら触る。
彼ならこう触るんじゃないかと、指で転がしてみたり弾いてみたり。
女の人じゃないから特に何も快感なんて感じないはずなのに、彼に触れられていると妄想するとゾクゾクする。
しかしそれと同時に罪悪感があふれてくる。
優しくて美しい彼に醜い僕が釣り合うはずがないのに、彼を想いながら自慰をする。
あぁ自分はなんて浅ましい人間なんだろう。
手を止めなければならない、そう思いながらも快楽を求める身体は正直で、脳からの静止の命令を聞かない。
ッ!
先端から白い液が勢いよく出てくる。
イっちゃった。
気持ちいいのがはじけるとじんわりと余韻に浸る。
「アレフガートさん……」
まるで彼が僕のそばにいるように錯覚をしてしまって思わず彼の名を呟く。
イッた余韻が引いてくると、自分が何をしてしまったのかに気付く。
彼を汚してしまった。妄想するだけなら良いとでも思ったのか?
自責の念に駆られ、うつぶせになりシーツをきつく握りしめる。
いつからこんな妄想をするように最低な奴になってしまったんだ。
あんな綺麗な人に触れてもらえるわけがないのになぜ。
本当は、頭のどこかで気づいていた。
ずっと、彼に触れられたい、抱きしめて欲しい、と本能が叫んでいることに。
残った理性で自分を見つめ返すことで気づかないふりをし続け、これからもそうする気だった。
だっていくら番であろうと、僕に懸想されるなんて迷惑でしかない。しかも今更なんて。
迷惑どころかいくら優しい彼でも今まで良くしてやったのに今更なんだと怒りに震えるかもしれない。
もしかしたらあの与えられた優しさはあくまで幼い子供に対するものだったのかもしれない。
今となってはもう聞けないから真実を知る術はない。
それに怖いから聞きたくもない。
まだ彼と一緒にいた時、何度も側を離れようとしたが、浅ましい僕は彼の番という立場を利用してぐずぐずと彼の元にとどまっていた。
結局、離れても恋心は育つばかりだったけど。
それこそ初めて彼を見た刹那から、僕は彼に恋をしていたのだろう。
そう気づいた瞬間久しぶりに泣いた。声を押し殺しながら静かに、泣き続けた。
次の日の目覚めは最悪だった。
泣いたせいかもともと醜い顔がさらに酷くなっていて、『醜男』という名がぴったりな顔。
こんなんじゃ駄目だ。ノロノロと教師のローブを羽織り、自分の剣をしっかりとベルトに固定する。
今日授業がなくて良かった。
昨日、連日夜遅くまで仕事をしていたため、教師の殆んどに一時休眠をとるよう指示が出された。だから先生方が職員室に集まるのはきっと午後からになるだろう。
特に行く当てもなく、閑散とした訓練場に着く。
ここは大分前から使われていない小さな訓練場なので、生徒はほぼ誰もここに近寄らない。
誰もいない訓練場で雑念を振り払おうと模擬剣を振るう。
僕は教師枠で剣術部門に参加するのだからその練習にもちょうどいい。
何時間訓練していたのか分からないがふと気が付くと数人の生徒たちの声が聞こえてきた。
ジルだ。それに騎士科の数人の生徒。
「あっ!アサギリせんせーだ!」
彼らの目的地はやはりここだったらしい。恐らく鍛錬するんだろう。
邪魔にならないようにどかなければと思い、汗をタオルでふき模擬剣を片付ける。
「あっすみません!大丈夫です!」
「いえ、ちょうどもうやめようと思っていたんです。鍛錬頑張ってくださいね。ただ怪我にだけは気を付けて。」
そう言って彼らの側を通って去ろうとしたら腕をつかんで引き止められる。
ジルだ。
「お前ら、俺は先生に質問することができたから先にやっててくれ。すまん」
「へーい」
彼らからはすぐに返事が返ってきて、ジルは僕を引っ張ったまま訓練場の外に連れ出す。
そして僕に詰め寄って聞いてくる。
「何があった。」
「え?何がってなにもありませんけど…」
「嘘だな。瞼が腫れている。」
「ぅえ⁉」
動いて血行が改善されたはずだから泣いた跡なんて残っていないと思っていたのに計算外だ。
「何でもないですよ。ただ少し寝不足なだけだと思います。」
「………そうか。俺にできることがあるなら何でも言え。これでも第四王子だからな。」
「えぇ、頼らせていただきますね。それでは。」
ジルを置いて訓練場から離れる。
気づかれたことに驚いていたら、3歳も年下のジルに気を使わせてしまった。
全く…、僕は何をしているんだ……。
――
多分ここらで前半終了です。
さっきまで武道会についての仕事でほとんど寝ていないから、体は休息を求めているはずなのに眼も頭も冴えたままだ。
必死に無心になろうとするが駄目だ。
さっきの教頭先生とドリトン先生との会話でアレフガートさんのことを考えてしまってからずっと思考の波にのまれている。
アレフガートさんは凄い人だ、本当に。僕にはもったいなすぎる。
僕のことを番だからか大事にしてくれて、本当に僕のことが好きだとでも言うような態度と言葉で僕を惑わせる魔性の人。
思い出したくないのに次々と思い出が蘇り、彼のしぐさから体の細部まで思い出してしまう。
彼ぐらい逞しい体なら僕のことなんて簡単に押し倒せるのだろう。
それを想像するとふいに下半身に違和感を感じた。
そういえばいつからしていないんだろう。最後に触ったのなんてもう何年も前だ。
醜い自分の陰茎なんて見たくもないが、既に下半身では欲の象徴が勃ちあがっている。
ベッドの上で粗雑に自分の陰茎を取り出し触る。
気持ち良くて必死に己の陰茎を上下に擦る。
「ぅん、…ふっ、、あっぅ……」
自分の口からあられもない汚声が出てきている。
それに気づきつつも、もっと気持ちいいを感じたくて胸にも手を伸ばす。
色白のせいで目立ってしまって小学生の時コンプレックスだった乳首を彼の大きくて長い、少し角ばった指に触れられることを想像しながら触る。
彼ならこう触るんじゃないかと、指で転がしてみたり弾いてみたり。
女の人じゃないから特に何も快感なんて感じないはずなのに、彼に触れられていると妄想するとゾクゾクする。
しかしそれと同時に罪悪感があふれてくる。
優しくて美しい彼に醜い僕が釣り合うはずがないのに、彼を想いながら自慰をする。
あぁ自分はなんて浅ましい人間なんだろう。
手を止めなければならない、そう思いながらも快楽を求める身体は正直で、脳からの静止の命令を聞かない。
ッ!
先端から白い液が勢いよく出てくる。
イっちゃった。
気持ちいいのがはじけるとじんわりと余韻に浸る。
「アレフガートさん……」
まるで彼が僕のそばにいるように錯覚をしてしまって思わず彼の名を呟く。
イッた余韻が引いてくると、自分が何をしてしまったのかに気付く。
彼を汚してしまった。妄想するだけなら良いとでも思ったのか?
自責の念に駆られ、うつぶせになりシーツをきつく握りしめる。
いつからこんな妄想をするように最低な奴になってしまったんだ。
あんな綺麗な人に触れてもらえるわけがないのになぜ。
本当は、頭のどこかで気づいていた。
ずっと、彼に触れられたい、抱きしめて欲しい、と本能が叫んでいることに。
残った理性で自分を見つめ返すことで気づかないふりをし続け、これからもそうする気だった。
だっていくら番であろうと、僕に懸想されるなんて迷惑でしかない。しかも今更なんて。
迷惑どころかいくら優しい彼でも今まで良くしてやったのに今更なんだと怒りに震えるかもしれない。
もしかしたらあの与えられた優しさはあくまで幼い子供に対するものだったのかもしれない。
今となってはもう聞けないから真実を知る術はない。
それに怖いから聞きたくもない。
まだ彼と一緒にいた時、何度も側を離れようとしたが、浅ましい僕は彼の番という立場を利用してぐずぐずと彼の元にとどまっていた。
結局、離れても恋心は育つばかりだったけど。
それこそ初めて彼を見た刹那から、僕は彼に恋をしていたのだろう。
そう気づいた瞬間久しぶりに泣いた。声を押し殺しながら静かに、泣き続けた。
次の日の目覚めは最悪だった。
泣いたせいかもともと醜い顔がさらに酷くなっていて、『醜男』という名がぴったりな顔。
こんなんじゃ駄目だ。ノロノロと教師のローブを羽織り、自分の剣をしっかりとベルトに固定する。
今日授業がなくて良かった。
昨日、連日夜遅くまで仕事をしていたため、教師の殆んどに一時休眠をとるよう指示が出された。だから先生方が職員室に集まるのはきっと午後からになるだろう。
特に行く当てもなく、閑散とした訓練場に着く。
ここは大分前から使われていない小さな訓練場なので、生徒はほぼ誰もここに近寄らない。
誰もいない訓練場で雑念を振り払おうと模擬剣を振るう。
僕は教師枠で剣術部門に参加するのだからその練習にもちょうどいい。
何時間訓練していたのか分からないがふと気が付くと数人の生徒たちの声が聞こえてきた。
ジルだ。それに騎士科の数人の生徒。
「あっ!アサギリせんせーだ!」
彼らの目的地はやはりここだったらしい。恐らく鍛錬するんだろう。
邪魔にならないようにどかなければと思い、汗をタオルでふき模擬剣を片付ける。
「あっすみません!大丈夫です!」
「いえ、ちょうどもうやめようと思っていたんです。鍛錬頑張ってくださいね。ただ怪我にだけは気を付けて。」
そう言って彼らの側を通って去ろうとしたら腕をつかんで引き止められる。
ジルだ。
「お前ら、俺は先生に質問することができたから先にやっててくれ。すまん」
「へーい」
彼らからはすぐに返事が返ってきて、ジルは僕を引っ張ったまま訓練場の外に連れ出す。
そして僕に詰め寄って聞いてくる。
「何があった。」
「え?何がってなにもありませんけど…」
「嘘だな。瞼が腫れている。」
「ぅえ⁉」
動いて血行が改善されたはずだから泣いた跡なんて残っていないと思っていたのに計算外だ。
「何でもないですよ。ただ少し寝不足なだけだと思います。」
「………そうか。俺にできることがあるなら何でも言え。これでも第四王子だからな。」
「えぇ、頼らせていただきますね。それでは。」
ジルを置いて訓練場から離れる。
気づかれたことに驚いていたら、3歳も年下のジルに気を使わせてしまった。
全く…、僕は何をしているんだ……。
――
多分ここらで前半終了です。
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