私達の星春群像奮闘記

Remi

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10節 親心、子心

第165話 通話

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 晩御飯は私が由衣《ゆい》と智陽《ちはる》の言い合いを止めてる間に、藍斗《あいと》が持ってきてくれた。

 我ながら私の弟、いい子過ぎる。
 ……姉である私がこの感じなのに。

 そして食べ終わった後。
 ちょうど真聡《まさと》が戻ってきて、私の家に結界を張ってくれた。

 ……そのときに謝るべきだったのは分かってる。

 でも私は、どうやって謝ったらいいのかわからなかった。

 結局、私が覚悟が決まる前に真聡は帰っていった。
 「流石に21時前だから」と由衣と智陽も一緒に。

 そして今は22時半過ぎ。

 今日は色々ありすぎて疲れた。
 だから両親のことも真聡のことも。今日はとりあえず寝て、明日考えようと思った。

 両親と口を利かないのは中学生の頃から何回もあった。
 だからか、無理に話を聞こうとはしてこなかった。

 なんか変な感じがするけど、そのお陰で私は落ち着いて寝れる。



 だけど寝ようとベッドに入っても、眠れない。



 頭の中で真聡に謝れなかったことが、頭の中でぐるぐると回る。


 いや私、あいつのことそこまで大事だとは思ってないんだけど!?


 ……でも、あの6人といる時間は好き。


 澱みや堕ち星と戦うのは大変。
 戦いなんて早く終わればいいと思ってる。


 だけど、終わったとしても。
 あの6人との繋がりは無くしたくない。


 そんな私はスマホを手に持ち、メッセージアプリの真聡との個人トーク画面を開いていた。

 友達登録は一応してある。

 でも、メッセージではほとんど会話したことない。
 私も真聡も、そういう性格じゃないから。

 だからなんて送ればいいかわからない。

 ……待って?何で開いてるの?
 私、無意識で開いたの?

 自分の行動に動揺していると、右上の通話ボタンが目に入った。

 ……もやもやしてるぐらいなら、いっそのこと通話した方が良いかな。

 そんな考えが頭をよぎる。

 でも、また喧嘩してしまったらどうしよう。

 最近の真聡は変。
 その違和感にイライラして、また嚙みついてしまったらどうしよう。


 ……というか、それ以前に色々隠してるよね。

 気になることはいろいろある。
 私が1番気になってるのは、堕ち星や澱みが全くテレビでもSNSでも話題にならないこと。

 怪物がこんなに出てるなら普通は騒ぎになるはず。
 なのに全く出ない。

 真聡は「怪物の情報は消される」的なことを最初の説明で言ってたけど……おかしいでしょ。

 高校生にそんなことができるわけないでしょ。


 いや、今はそこじゃないか。


 ……色々考えてしまったせいで余計に目が覚めた。


 悩んでても仕方ないので私は起き上がってベッドに座る。


 そして勢いで、通話ボタンを押した。
 同時にスピーカーボタンも押す。


 静かな部屋に、通話を繋ぐ音が響く。


 ワンコール。


 こんな時間に迷惑かな。


 ツーコール。


 出るなら早く出て欲しい。


 スリーコール。


 ……やっぱり、やめようかな。



 そう思ったとき。

『なんだ、こんな時間に』


 繋がってしまった。


 驚いた私の手から、スマホが滑り落ちる。


 だけどなんとか床に落ちる前にキャッチ出来た。


 出ないかと思い始めてたから余計に驚いた。

 私は安心しながらも、姿勢を戻す。
 そこに『……大丈夫か』という真聡の声が聞こえてきた。

 落としそうになった音が聞こえたのかも。

 恥ずかしいので私は「何もない。なんか聞こえた?」と返す。
 すると真聡は『そうか』と言ってそれ以上は聞いてこなかった。

『で、何の用だ』

 その言葉に、私はつい「怒ってる?」と返してしまった。

『……じゃあ鈴保《すずほ》は、俺が常に怒っていると思ってるのか』
「それは思ってないけど……怒ってないの?」
『そう言ってるだろ』
「そう。よかった」

 言われてみればいつも通りかもしれない。

 でも今の私は「あの言葉を真聡に言ってしまった」という後悔から、いつもより敏感になっているのかもしれない。

 でも、怒ってないならよかった。
 ……だけど、何て謝ろう。

 勢いで通話をしてしまった。
 だから結局、謝る言葉は何も考えてなかった。

『用がないなら切るぞ』

 何も言わない私に痺れを切らしたのか、真聡がそう言ってきた。

 いや、でもそれは駄目。
 ここで逃げたら私はこのまま謝る機会を失う。

 そんな気がした。

 ……悩んでても仕方ない。
 素直に謝ろう。

 私はそう決意して、「待って」と言葉を発する。

「用があるからかけたに決まってるじゃん」
『じゃあさっさと言え。それとも言いにくいことなのか?』
「いや…………その…………謝り……たくて」
『……謝る?』

 真聡のその言葉に私はヒヤッとして、言葉に詰まってしまった。

 ……やっぱり怒ってる?

 だけど次にスマホから聞こえてきたのは、予想外の言葉だった。

『……何をだ?』

 私の口から「え?」と少し間抜けな声が出た。
 でも真聡はそれを気にせず言葉を続ける。

『お前の家族喧嘩に巻き込まれたことか?』
「いや違うけど……」
『じゃあ何だ』
「それは……。
 さっき『親がいない真聡には私の気持ちはわからないでしょ』って言ったことを……ちょっと、いやかなり言い過ぎたと思って……。
 私の感情だけで、言ってはいけないことを言っちゃったと思って……
 怒ったり傷ついたりしてないかと思って……だから……その……ごめん」

 まずは謝れた。
 ……だいぶ勢い任せだったけど。

 だけど、真聡からの言葉はない。

 少し怖くなってきた。

 すると数秒経って、スマホから真聡の『別に』という声が聞こえてきた。

『俺がそう言われても、仕方ないことを先に言ったからな。鈴保にはそれぐらい言う権利がある。
 ……それに、事実だしな』
「……許してくれるの?」
『だから怒ってないと言ってるだろ。怒ってないことに許すも何もない』
「そ……っか。
 ……ありがと」

 真聡も優しい。

 態度も目つきも口も悪くて、誤解しやすいけど。

 ……私も最初は感じ悪いと思ってたし。

 でも真聡も他のみんな……それ以上に誰かのことを想って動いてるのかもしれない。
 真聡なりの方法で。


 色んなことを我慢して。


 何故かそんな気がした。


 ……そんな真聡に、私は何ができるだろう。


 そう悩んでいると『用が済んだなら切るぞ』という声が聞こえてきた。

 でも、まだ話は終わってない。

 私は「待って。まだ終わってない」と言葉を返す。

『だったら早く言え』

 ここまで話した。
 1番言いにくいことはもう言った。

 私は深呼吸をしてから、もう1つの私の決意を口にする。

「……私は、辞めないから。
 確かに最初は逃げたよ。あのときは、戦うのが怖かったから。
 でもあの日。颯馬《そうま》が堕ち星に成って、梨奈《りな》が怪我した日。
 私は思ったの。『戦う力がある私が逃げてどうするの』って。力があるのに逃げたら、後味悪いし。
 それに、私が戦って大事な人を、誰かを守れるなら。私も戦った方が良いって。その方が、自分の為にも良いって。
 だから、私はもう逃げない。最後まで一緒に戦うから」

 決意は言葉にできた。

 だけど、スマホから言葉を聞こえてこない。

 私は少し恥ずかしくなってきて「ちょっと、なんか言ってよ」と言ってみる。

 するとようやく、真聡の言葉が聞こえてきた。

「……ちゃんと両親にお前の考えを伝えろよ」
「……わかってるわよ」
「それと、無茶はするなよ」

 私はその言葉に「どの口が」と言い返しそうになる。

 でもそれをぐっと堪える。
 せっかくすっきりしたのに、また喧嘩になったら意味がない。


 ……それに、きっとこれは私1人では解決できないと思ったし。

 私は喧嘩になるのを避けるために「わかってる」と返事をする。
 そしてそのまま話題を逸らす。

「で、結局あの堕ち星は誰だったの」
『明日か明後日に全員集め……鈴保はご家族に説明した時に隣にいただろ』

 そう言われればあのリビングでそんな話もしてた気がする。
 でも、あのときは感情がぐちゃぐちゃで誰が何言ってたかほとんど覚えてない。

 覚えているのは……確か「私の父親が狙われている」的なこと。
 私も異常に狙われてたし。

 だからやっぱり、聞いておきたいと思った。
 せっかく今通話してるわけだし。

「……覚えてない。もう1回教えてよ」
『今からか?
 ……全員揃ったときでいいだろ』

 ……確かに真聡の言葉は正しい。

 聞きたいけど、もう夜も遅い。
 あと私の家にも結界を張ってくれたらしいから安全のはずだし。

 それに今までから考えると、堕ち星って1回戦った後は数日は出てこないはず。


 それに「聞かせて」と粘っても、多分真聡は今は言ってくれない気がした。 


 そう思った私は「わかった」とだけ返事をする。

『もう用はないか。切るぞ』
「うん。……ありがと」
『……何かあったらすぐに連絡しろよ』
「わかってるわよ。おやすみ」
『あぁ。しっかり寝ろよ』

 そして通話終了ボタンを押す。

 真聡に謝って、戦い続けることは伝えた。
 あとは……両親に伝えるだけ。

 ……こっちの方が大変で面倒。

 ちゃんと話さないといけないことは分かってる。
 でも今は、とりあえず寝よう。

 そう思って、スマホに充電器をさした私はもう一度ベッドに潜り込む。


 すると今度は5分ほどで、私の意識は暗闇に落ちていった。
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