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9.魔王降臨
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「午後から採寸がありますよ」
「はい?」
先日の朝食事件からすでにひと月程経ちました。あの時はお腹が空いて少しだけ殺意が湧きましたが、それ以外には特に問題も無く。今日も三人で仲良くお勉強をしておりました。
最近はお二人から勉強を教わっております。何故かというと、お二人の授業の復習の為と会話力のアップです。
相手が理解出来るように教えるのは結構大変なのです。コニー様は一生懸命説明して下さるので、最近では滑舌も良くなってきましたし、自信が付いたのか吃ることもほとんど無くなりました。
フェミィ様もそんなコニー様を見守る事が出来るようになってきて、全部話し終えると分かりやすかった、凄いわねと優しく褒めてあげられる、小さな淑女になってきました。
「あの、今は勉強中なのですが?」
「申し訳ございません。ですが、旦那様のご友人であるバーキン伯爵から家族での交流会に誘われたそうでして」
なぜ彼は自分で説明しないのでしょう。このままではいつまでも子供達に挨拶オジサンとしか認識されませんのに。
「旦那様はお忙しいのですか?」
「いつも通り執務室にてお仕事をされておりますが、何かご用でしたでしょうか」
「ご用があるのは旦那様ですよね。私はバーキン伯爵を存じあげません。ですから交流会と言われましても、お相手の家族構成や今までの交流の有無などまったく分からないので、ご説明頂きたいことが山とあるのです。
ノーランを伝書鳩として伝言をお願いすると、何往復させたら会話が終わるのでしょうね?
そんな無駄なことをするくらいなら、私が話を聞きに伺った方が余程早いかと思うのですが、ノーランはどう思われますか?」
「よろしいのですか!?」
……何でしょうか、その反応は。
「フェミィ様コニー様、申し訳ございませんが今から旦那様とお話してまいります。どうやら皆でお出かけ出来るようですよ」
「ほんと?皆でおでかけするの?じゃあ、ミッチェかあさまだね?」
「そうですわね」
「ちゃんとお部屋で待ってるわ。行って来ていいわよ」
快く送り出して下さるお二人に挨拶してから部屋を出ました。
「ノーラン、先程のおかしな反応は何故ですか?」
「あ、えっとですね」
何やら言い難そうです。仕方が無いので足を止めました。
「あ~、見逃しては」
「あげません(ニコッ)」
「……ですよねぇ。……うん。一度ミッシェル様とお話がしたいとは思っていたのです。旦那様に会う前に少しだけよろしいでしょうか」
それから、人目が気になるのか少しキョロキョロと辺りを伺ってから小声で話し出した。
「あの、差し出がましいとは思うのですが、どうやったら旦那様を受け入れて下さるのでしょうか?」
…………意味が全く理解出来ません。
受け入れる。旦那様の何を?
「ノーラン。意味が分かりかねるので、もう少し詳細にお話下さいませんか?」
「いえ、あのですね、私も何を知っている訳でも無いのです。ただ、ご結婚されてお子様達とも仲良くして下さって。本当に良かったと思っています。だってお嬢様達が本当に幸せそうだ」
企み狐だと思っていたノーランが本当に嬉しそうな顔になった。
「前の奥様が居なくなる前のお嬢様達は知りませんが、ミッシェル様がいらっしゃる前のお嬢様はピリピリして、お坊ちゃまはオドオドして。何だかとてもお可哀想でした」
「……貴方はずっとこの屋敷で働いていたのではないの?」
「はい。まだ1年ほどです」
1年。では、ダイアナ様が出て行かれてから来たのかしら。
「それで、お子様達と仲良くなれたのなら」
「旦那様とも仲良くすべき。ですか?」
「……難しいのでしょうか。お仕事を任せないのはまだお若いミッシェル様を心配されてるからだと思うのです。あの、夜の方だって、気持ちが通い合ってから、という意味なのではないでしょうか?
だって、貴方が妻では無いと言っているのを知って、旦那様はとても傷付いておられました」
ノーランは思っていたよりお優しい方だったのですね。そして何て夢見がちなのでしょう。彼の世界はとても美しいみたいです。
「残念ですが違いますよ。私も馬鹿ではありません。最初に全て確認致しました。
『君は子供の面倒だけ見てくれればいい』そう言われました。ですから、後継者がいるから白い結婚で間違いありませんかと確認致しました。そして、女として妻としての私は『必要ない』と言われたのです。
そして、私の役目は子供の相手だけで、どうしても断れないパーティー等だけ妻として隣に立つことを『我慢してほしい』と言われました」
「……は?」
「ですから、私は子供達のお世話以外は致しません。ご理解頂けましたでしょうか」
あら。ノーランが固まっております。
良かったわ。ここまで言ってもなお、私の努力を求められたらどうしようかと思っておりました。
「え?じゃあ、どうしてあんなにショックを受けているんだ?……だって自分で言ったんだろ?頭おかしくないか。………………ぶん殴るか?」
まあ、ノーランの魔王演技がとても上手になっています。でも、これは流石にコニー様が泣いてしまいますよ?
「はい?」
先日の朝食事件からすでにひと月程経ちました。あの時はお腹が空いて少しだけ殺意が湧きましたが、それ以外には特に問題も無く。今日も三人で仲良くお勉強をしておりました。
最近はお二人から勉強を教わっております。何故かというと、お二人の授業の復習の為と会話力のアップです。
相手が理解出来るように教えるのは結構大変なのです。コニー様は一生懸命説明して下さるので、最近では滑舌も良くなってきましたし、自信が付いたのか吃ることもほとんど無くなりました。
フェミィ様もそんなコニー様を見守る事が出来るようになってきて、全部話し終えると分かりやすかった、凄いわねと優しく褒めてあげられる、小さな淑女になってきました。
「あの、今は勉強中なのですが?」
「申し訳ございません。ですが、旦那様のご友人であるバーキン伯爵から家族での交流会に誘われたそうでして」
なぜ彼は自分で説明しないのでしょう。このままではいつまでも子供達に挨拶オジサンとしか認識されませんのに。
「旦那様はお忙しいのですか?」
「いつも通り執務室にてお仕事をされておりますが、何かご用でしたでしょうか」
「ご用があるのは旦那様ですよね。私はバーキン伯爵を存じあげません。ですから交流会と言われましても、お相手の家族構成や今までの交流の有無などまったく分からないので、ご説明頂きたいことが山とあるのです。
ノーランを伝書鳩として伝言をお願いすると、何往復させたら会話が終わるのでしょうね?
そんな無駄なことをするくらいなら、私が話を聞きに伺った方が余程早いかと思うのですが、ノーランはどう思われますか?」
「よろしいのですか!?」
……何でしょうか、その反応は。
「フェミィ様コニー様、申し訳ございませんが今から旦那様とお話してまいります。どうやら皆でお出かけ出来るようですよ」
「ほんと?皆でおでかけするの?じゃあ、ミッチェかあさまだね?」
「そうですわね」
「ちゃんとお部屋で待ってるわ。行って来ていいわよ」
快く送り出して下さるお二人に挨拶してから部屋を出ました。
「ノーラン、先程のおかしな反応は何故ですか?」
「あ、えっとですね」
何やら言い難そうです。仕方が無いので足を止めました。
「あ~、見逃しては」
「あげません(ニコッ)」
「……ですよねぇ。……うん。一度ミッシェル様とお話がしたいとは思っていたのです。旦那様に会う前に少しだけよろしいでしょうか」
それから、人目が気になるのか少しキョロキョロと辺りを伺ってから小声で話し出した。
「あの、差し出がましいとは思うのですが、どうやったら旦那様を受け入れて下さるのでしょうか?」
…………意味が全く理解出来ません。
受け入れる。旦那様の何を?
「ノーラン。意味が分かりかねるので、もう少し詳細にお話下さいませんか?」
「いえ、あのですね、私も何を知っている訳でも無いのです。ただ、ご結婚されてお子様達とも仲良くして下さって。本当に良かったと思っています。だってお嬢様達が本当に幸せそうだ」
企み狐だと思っていたノーランが本当に嬉しそうな顔になった。
「前の奥様が居なくなる前のお嬢様達は知りませんが、ミッシェル様がいらっしゃる前のお嬢様はピリピリして、お坊ちゃまはオドオドして。何だかとてもお可哀想でした」
「……貴方はずっとこの屋敷で働いていたのではないの?」
「はい。まだ1年ほどです」
1年。では、ダイアナ様が出て行かれてから来たのかしら。
「それで、お子様達と仲良くなれたのなら」
「旦那様とも仲良くすべき。ですか?」
「……難しいのでしょうか。お仕事を任せないのはまだお若いミッシェル様を心配されてるからだと思うのです。あの、夜の方だって、気持ちが通い合ってから、という意味なのではないでしょうか?
だって、貴方が妻では無いと言っているのを知って、旦那様はとても傷付いておられました」
ノーランは思っていたよりお優しい方だったのですね。そして何て夢見がちなのでしょう。彼の世界はとても美しいみたいです。
「残念ですが違いますよ。私も馬鹿ではありません。最初に全て確認致しました。
『君は子供の面倒だけ見てくれればいい』そう言われました。ですから、後継者がいるから白い結婚で間違いありませんかと確認致しました。そして、女として妻としての私は『必要ない』と言われたのです。
そして、私の役目は子供の相手だけで、どうしても断れないパーティー等だけ妻として隣に立つことを『我慢してほしい』と言われました」
「……は?」
「ですから、私は子供達のお世話以外は致しません。ご理解頂けましたでしょうか」
あら。ノーランが固まっております。
良かったわ。ここまで言ってもなお、私の努力を求められたらどうしようかと思っておりました。
「え?じゃあ、どうしてあんなにショックを受けているんだ?……だって自分で言ったんだろ?頭おかしくないか。………………ぶん殴るか?」
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