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58.新しい関係(3)
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ダイアナさんと子供達の話は30分程で終わったようです。
そして、その後に意外なお誘いがありました。
「お泊り会……私とですか?」
「女同士のお話をしましょう?」
一体なぜ?
「どうせならユーフェミア様とされた方が良いのではありませんか?」
「あの子達は今夜はグレンの所に行くそうよ」
あら。フェミィ様まで?珍しいです。レディだからとお断りされていましたのに。
「畏まった話し合いじゃなくて、友達みたいに話がしてみたいのよ。駄目かしら」
何か企んでいるわけでは無さそうです。
「いいですよ。ダイアナ様のお部屋でいいですか?」
「ええ。枕だけ持っていらっしゃい」
「枕……」
ふふ。何だかおかしな気分です。
どちらかというと敵対していたはずですのに。
「分かりました」
♢♢♢
「いらっしゃい」
「これ、よかったら飲みませんか。エイディーさんには確認したから大丈夫ですよ」
そう言って取り出したのは、ノーランに用意してもらった果実酒です。
「あら、気が利くじゃない。さっそく乾杯しましょうよ」
「乾杯。何にです?」
「何でもいいじゃない。とりあえず今日という日に、乾杯!」
何とも適当な乾杯です。でも、今夜は畏まらずがモットーですものね。
「では、初の女子会に乾杯っ!ですか?」
「いいわね、それ」
元妻との女子会ってなかなか貴重だと思います。
それからは、当たり障りのない、でも、何となく笑ってしまう、そんな話ばかりしていました。
ダイアナさんは楽しい場を作るのが上手いのでしょう。彼女がモテていた理由が垣間見えました。
「ねえ?……貴方は逃げたいと思ったりしないの?」
しばらく会話を楽しんだ後、ようやく本題に入るようです。
「逃げる、ですか」
それは何から?
「だって親に騙されて結婚したのでしょう?バツイチ子持ち、こんな元嫁まで現れて、普通なら実家に帰っちゃってもおかしくない状況よ?」
ああ、そういう……。
「ダイアナさんは、逃げたら何か変わりましたか?」
「……意地悪ね」
「ね?望んだ通りの世界なんてこの世には無いのですよ」
グラスをクルクルと揺らすと、薄紅の果実酒がちゃぽんと揺れた。
「……たぶん、ダイアナさんと違って、私は世の中が不公平で優しくないって小さい頃に学んでしまったんです」
「なにそれ」
「私は両親に愛されなかったんです。愛されるのは弟だけでした。おまけにすっごく貧乏でしたし」
「……そんなダメ親捨てたらいいのに」
「どうやってですか?それって捨てるというより私が捨てられる感じですよね。それに、私にとって弟が唯一愛してくれる存在だったから、家を出るなんて考えられなかった。
……ちゃんとね、大切だったんですよ。あんな家でも。だって弟が私を愛してくれていたもの」
ゴミ溜めのような家でも、大切なものはちゃんとあったのです。
「もし逃げていたら、私は弟という宝物に気付くことが出来ませんでした。それって凄く勿体無いでしょう?
結局ですね、落ち着いて周りを見渡せば、どれだけ困難な場所でも、ちゃ~んと愛すべき、守るべきものがいるんです。
……もしかしたら、逃げた先にも、そんな存在があるのかもしれないけれど……でもねぇ。それって楽しいのかな?嬉しいですかね。
他の人がどうかは知りません。でも私は……逃げた先の幸せには興味がないんですよ」
「……どうして?」
「だって、手の届くところにちゃんと幸せがあるのですよ?どうしてそれで満足出来ないのか私には分かりません。困難?そんなもの、案外どうにでもなります。努力は最大の武器だって思ってます。
周りが変わることを祈るより、まずは自分で努力して幸せを掴みとる方が私には合ってるんです。
私は、知らない誰かに幸せにして欲しいんじゃない。自分で頑張って幸せになりたい。そういう幸せがいいんです」
ふう。語ってしまいましたね、ちょっと恥ずかしいです。少し酔ったのかもしれません。
「……私は怖いわ」
「逃げたいですか?」
「違う……逃げたくはないの。これ以上子供達に嫌われたくないもの。それでも、怖いものは怖いの。自業自得だって知ってる。貴方みたいに……今あるもので幸せになる努力を続けていたらって後悔しているわ。
これからは平民として1人で生きていくの。グレンもブレイズも子供達もいない世界で……たった一人っきりで……怖いのよ」
ダイアナさんがポロポロと泣き出してしまいました。
「一人じゃないですよ」
「……うそ。一人よ」
「子供達も、ご両親も。たとえ側にいなくても貴方を思っているわ。助けてって声がしたら、一目散に駆けつけるでしょう。
ちゃんとね、貴方は愛されています。だから負けないで。
辛くなったらそう言えばいいんです。そうしたら助けに行きますよ。助けられなくても、こうやって話を聞くくらいは出来ます。
ね?1人なんかじゃないでしょう?」
「……どれだけお人好しなの」
「ふふ。こんな自分が案外好きなんです。最近知りました」
それはフェミィ様とコニー様のおかげです。
「子供達は絶対に守ります。だから、ダイアナさんも頑張って下さい」
ダイアナさんは号泣してしまいました。もしかしたら泣き上戸なのかもしれません。
初の新旧妻の女子会はこうして終了致しました。
そして、その後に意外なお誘いがありました。
「お泊り会……私とですか?」
「女同士のお話をしましょう?」
一体なぜ?
「どうせならユーフェミア様とされた方が良いのではありませんか?」
「あの子達は今夜はグレンの所に行くそうよ」
あら。フェミィ様まで?珍しいです。レディだからとお断りされていましたのに。
「畏まった話し合いじゃなくて、友達みたいに話がしてみたいのよ。駄目かしら」
何か企んでいるわけでは無さそうです。
「いいですよ。ダイアナ様のお部屋でいいですか?」
「ええ。枕だけ持っていらっしゃい」
「枕……」
ふふ。何だかおかしな気分です。
どちらかというと敵対していたはずですのに。
「分かりました」
♢♢♢
「いらっしゃい」
「これ、よかったら飲みませんか。エイディーさんには確認したから大丈夫ですよ」
そう言って取り出したのは、ノーランに用意してもらった果実酒です。
「あら、気が利くじゃない。さっそく乾杯しましょうよ」
「乾杯。何にです?」
「何でもいいじゃない。とりあえず今日という日に、乾杯!」
何とも適当な乾杯です。でも、今夜は畏まらずがモットーですものね。
「では、初の女子会に乾杯っ!ですか?」
「いいわね、それ」
元妻との女子会ってなかなか貴重だと思います。
それからは、当たり障りのない、でも、何となく笑ってしまう、そんな話ばかりしていました。
ダイアナさんは楽しい場を作るのが上手いのでしょう。彼女がモテていた理由が垣間見えました。
「ねえ?……貴方は逃げたいと思ったりしないの?」
しばらく会話を楽しんだ後、ようやく本題に入るようです。
「逃げる、ですか」
それは何から?
「だって親に騙されて結婚したのでしょう?バツイチ子持ち、こんな元嫁まで現れて、普通なら実家に帰っちゃってもおかしくない状況よ?」
ああ、そういう……。
「ダイアナさんは、逃げたら何か変わりましたか?」
「……意地悪ね」
「ね?望んだ通りの世界なんてこの世には無いのですよ」
グラスをクルクルと揺らすと、薄紅の果実酒がちゃぽんと揺れた。
「……たぶん、ダイアナさんと違って、私は世の中が不公平で優しくないって小さい頃に学んでしまったんです」
「なにそれ」
「私は両親に愛されなかったんです。愛されるのは弟だけでした。おまけにすっごく貧乏でしたし」
「……そんなダメ親捨てたらいいのに」
「どうやってですか?それって捨てるというより私が捨てられる感じですよね。それに、私にとって弟が唯一愛してくれる存在だったから、家を出るなんて考えられなかった。
……ちゃんとね、大切だったんですよ。あんな家でも。だって弟が私を愛してくれていたもの」
ゴミ溜めのような家でも、大切なものはちゃんとあったのです。
「もし逃げていたら、私は弟という宝物に気付くことが出来ませんでした。それって凄く勿体無いでしょう?
結局ですね、落ち着いて周りを見渡せば、どれだけ困難な場所でも、ちゃ~んと愛すべき、守るべきものがいるんです。
……もしかしたら、逃げた先にも、そんな存在があるのかもしれないけれど……でもねぇ。それって楽しいのかな?嬉しいですかね。
他の人がどうかは知りません。でも私は……逃げた先の幸せには興味がないんですよ」
「……どうして?」
「だって、手の届くところにちゃんと幸せがあるのですよ?どうしてそれで満足出来ないのか私には分かりません。困難?そんなもの、案外どうにでもなります。努力は最大の武器だって思ってます。
周りが変わることを祈るより、まずは自分で努力して幸せを掴みとる方が私には合ってるんです。
私は、知らない誰かに幸せにして欲しいんじゃない。自分で頑張って幸せになりたい。そういう幸せがいいんです」
ふう。語ってしまいましたね、ちょっと恥ずかしいです。少し酔ったのかもしれません。
「……私は怖いわ」
「逃げたいですか?」
「違う……逃げたくはないの。これ以上子供達に嫌われたくないもの。それでも、怖いものは怖いの。自業自得だって知ってる。貴方みたいに……今あるもので幸せになる努力を続けていたらって後悔しているわ。
これからは平民として1人で生きていくの。グレンもブレイズも子供達もいない世界で……たった一人っきりで……怖いのよ」
ダイアナさんがポロポロと泣き出してしまいました。
「一人じゃないですよ」
「……うそ。一人よ」
「子供達も、ご両親も。たとえ側にいなくても貴方を思っているわ。助けてって声がしたら、一目散に駆けつけるでしょう。
ちゃんとね、貴方は愛されています。だから負けないで。
辛くなったらそう言えばいいんです。そうしたら助けに行きますよ。助けられなくても、こうやって話を聞くくらいは出来ます。
ね?1人なんかじゃないでしょう?」
「……どれだけお人好しなの」
「ふふ。こんな自分が案外好きなんです。最近知りました」
それはフェミィ様とコニー様のおかげです。
「子供達は絶対に守ります。だから、ダイアナさんも頑張って下さい」
ダイアナさんは号泣してしまいました。もしかしたら泣き上戸なのかもしれません。
初の新旧妻の女子会はこうして終了致しました。
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