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59.新しい関係(4)
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「あらまぁ、女神級だわ」
目覚めると、目の前にはダイアナさんの柔らかなお胸が。何故かダイアナさんに抱きしめられて眠っていたようです。
私のお馬鹿なつぶやきでダイアナさんも目が覚めたよう。ぼうっと私を見つめながら、頭を撫でてくれています。
「ダイアナさん、ユーフェミア様ではありませんよ」
「……ミッシェル」
「そうです。おはようございます」
「ふふ、ユーフェミアが大人になったらこんな感じかしら」
チュッと額にキスをされてしまいました。
私を落としに掛かっているのでしょうか?
「おはよう、ミッシェル。昨日はありがとう。おかげでスッキリしたわ」
「それならよかったです」
あれだけ大泣きしていたのに、美人なままなのがズルいと思います。
「ねえ、髪を弄らせて。どうしていつも同じ髪型なのよ。もっと可愛くしましょう?」
「え」
だって面倒臭いです。そう思ったのに、何故かメイドまで呼んで弄くり回されました。
髪を緩く巻いて、サイドを編み込んだりしながら纏めていく。その手つきは迷い無く、きっとユーフェミア様の髪も結ってあげていたのでしょう。
なぜか結いながら軽食までいただき……私の憎きコルセットまで登場したのです。
「ダイアナさん?どうしてドレスを着る必要が?」
「コニーが怒っていたのよ。せっかくお揃いの衣装を準備したのに着る機会がないって。『ぼく、大きくなっちゃうのに!』って言ってたから、申し訳ないなと思っていたのよね」
そう言われてしまうとこれ以上文句は言えなくなってしまいました。
しっかりとお化粧もされて、あの時買ったドレスを着ます。
「いいわね。とっても綺麗だわ」
美人なダイアナさんに言われると何とも微妙な気持ちになりますが、その顔を見れば本当にそう思ってくれている様に感じます。
「ありがとうございます。髪型も、とっても素敵です。本当にお上手ですね」
「でしょう?」
謙遜しないあたりがダイアナさんですね。
「さあ、あの子達に見せてあげて。きっと喜ぶわ」
「ダイアナさんは?」
「家族の団欒にお邪魔する気はないわよ。リハビリを頑張るから気にしないでちょうだい」
「……分かりました」
ドアの外にはノーランが立っていました。
「どうしたの?」
「皆様がいる所までエスコートさせていただけますか?」
エスコート!一体どうして?
「いえいえいえ。そんな、誤解を生むようなことはしませんよ?」
「旦那様に頼まれたことですので、誤解されることはありません。さぁ、どうぞ」
……どうぞと言われても。
ここで何時までも立ち止まっているわけにもいかず、仕方なくノーランの手を取りました。
「覚悟が決まったようですね」
覚悟ですか。それは何のことでしょう。
「曖昧な質問は止めてもらえる?」
「フッ、ずいぶんと変わりましたね。最初の頃は事なかれ主義みたいでしたのに」
「今でも平穏が好きですよ。でも、黙っているなと言ったのは貴方でしょう?」
「そうでしたね」
彼に寄り添いながらゆっくりと歩く。たぶん、こんなふうにノーランと歩くのは最初で最後になるでしょうね。
「ありがとう、ノーラン」
「……曖昧な感謝は止めて頂けますか?」
もう。可愛くないのだから。
「ずっと私を支えてくれたでしょう。甘やかさず、でも、幸せになれるように守ってくれたわ。
貴方がいなかったら、私は潰れていたかもしれない。頑張れなかったかもしれない」
あの時、一人取り残された夜。貴方の温もりがあったから。
「だから、本当にありがとうね」
「もし……貴方が結婚する前に出会っていたらどうなったでしょうね」
「さあ、どうかしら」
もし。それは誘惑の言葉ですよ。貴方はそれを言っては駄目ですのに。
「たらればを言い出したらきりが無いですよ。貴方との出会いは、旦那様との結婚があったから生まれたものです。
貴方に初めてあった時、なんて立派な執事さんなのかと思いました。
だから……これからもよろしくお願いします。貴方に恥ずかしくない主になれるように頑張るわ」
ダイアナさんに本当は好きなのではないかと聞かれて……少しだけ胸が痛みました。
もしかすると、ノーランは私の初恋なのかもしれません。
でも、私はすでに一番大切なものを手に入れてしまいました。それは残念ながら彼では無いのです。
ノーランは確かにあの夜、私を救ってくれました。でも、この屋敷で一番に私を救い、癒やしてくれたのは子供達なのです。
あの子達がいるから幸せだと思えるし、頑張ろうと思える。
ダイアナさんの言う通り、私は恋愛に向いていないのでしょう。
「……そうですね。私もこれからもっと精進して、奥様のお役に立てるよう努力致します」
「ふふ、頼もしいわね」
「貴方は、私の一等大切なお方ですから」
「……ありがとう」
私を一番だと言ってくれるのですね。
あの夜、私は誰の一番にもなれないと泣いていた私への慰め?それとも……
考えるのはここまで。私はそっと蓋をしました。
私が、そして貴方が、誰にも恥じない生き方をするために。
今度こそ、父のせいでも弟の為でもなく、自分の幸せの為に私は子供達の母であることを選んだのです。
それからは特に話すこともなく。
ああ、どうやら向かうのは庭園のようです。
「さあ、あちらでお待ちですよ」
「「ミッチェっ!!」」
お揃いの衣装を纏ったお二人が駆けて来ます。
私の最愛の天使たちが出迎えてくれました。
目覚めると、目の前にはダイアナさんの柔らかなお胸が。何故かダイアナさんに抱きしめられて眠っていたようです。
私のお馬鹿なつぶやきでダイアナさんも目が覚めたよう。ぼうっと私を見つめながら、頭を撫でてくれています。
「ダイアナさん、ユーフェミア様ではありませんよ」
「……ミッシェル」
「そうです。おはようございます」
「ふふ、ユーフェミアが大人になったらこんな感じかしら」
チュッと額にキスをされてしまいました。
私を落としに掛かっているのでしょうか?
「おはよう、ミッシェル。昨日はありがとう。おかげでスッキリしたわ」
「それならよかったです」
あれだけ大泣きしていたのに、美人なままなのがズルいと思います。
「ねえ、髪を弄らせて。どうしていつも同じ髪型なのよ。もっと可愛くしましょう?」
「え」
だって面倒臭いです。そう思ったのに、何故かメイドまで呼んで弄くり回されました。
髪を緩く巻いて、サイドを編み込んだりしながら纏めていく。その手つきは迷い無く、きっとユーフェミア様の髪も結ってあげていたのでしょう。
なぜか結いながら軽食までいただき……私の憎きコルセットまで登場したのです。
「ダイアナさん?どうしてドレスを着る必要が?」
「コニーが怒っていたのよ。せっかくお揃いの衣装を準備したのに着る機会がないって。『ぼく、大きくなっちゃうのに!』って言ってたから、申し訳ないなと思っていたのよね」
そう言われてしまうとこれ以上文句は言えなくなってしまいました。
しっかりとお化粧もされて、あの時買ったドレスを着ます。
「いいわね。とっても綺麗だわ」
美人なダイアナさんに言われると何とも微妙な気持ちになりますが、その顔を見れば本当にそう思ってくれている様に感じます。
「ありがとうございます。髪型も、とっても素敵です。本当にお上手ですね」
「でしょう?」
謙遜しないあたりがダイアナさんですね。
「さあ、あの子達に見せてあげて。きっと喜ぶわ」
「ダイアナさんは?」
「家族の団欒にお邪魔する気はないわよ。リハビリを頑張るから気にしないでちょうだい」
「……分かりました」
ドアの外にはノーランが立っていました。
「どうしたの?」
「皆様がいる所までエスコートさせていただけますか?」
エスコート!一体どうして?
「いえいえいえ。そんな、誤解を生むようなことはしませんよ?」
「旦那様に頼まれたことですので、誤解されることはありません。さぁ、どうぞ」
……どうぞと言われても。
ここで何時までも立ち止まっているわけにもいかず、仕方なくノーランの手を取りました。
「覚悟が決まったようですね」
覚悟ですか。それは何のことでしょう。
「曖昧な質問は止めてもらえる?」
「フッ、ずいぶんと変わりましたね。最初の頃は事なかれ主義みたいでしたのに」
「今でも平穏が好きですよ。でも、黙っているなと言ったのは貴方でしょう?」
「そうでしたね」
彼に寄り添いながらゆっくりと歩く。たぶん、こんなふうにノーランと歩くのは最初で最後になるでしょうね。
「ありがとう、ノーラン」
「……曖昧な感謝は止めて頂けますか?」
もう。可愛くないのだから。
「ずっと私を支えてくれたでしょう。甘やかさず、でも、幸せになれるように守ってくれたわ。
貴方がいなかったら、私は潰れていたかもしれない。頑張れなかったかもしれない」
あの時、一人取り残された夜。貴方の温もりがあったから。
「だから、本当にありがとうね」
「もし……貴方が結婚する前に出会っていたらどうなったでしょうね」
「さあ、どうかしら」
もし。それは誘惑の言葉ですよ。貴方はそれを言っては駄目ですのに。
「たらればを言い出したらきりが無いですよ。貴方との出会いは、旦那様との結婚があったから生まれたものです。
貴方に初めてあった時、なんて立派な執事さんなのかと思いました。
だから……これからもよろしくお願いします。貴方に恥ずかしくない主になれるように頑張るわ」
ダイアナさんに本当は好きなのではないかと聞かれて……少しだけ胸が痛みました。
もしかすると、ノーランは私の初恋なのかもしれません。
でも、私はすでに一番大切なものを手に入れてしまいました。それは残念ながら彼では無いのです。
ノーランは確かにあの夜、私を救ってくれました。でも、この屋敷で一番に私を救い、癒やしてくれたのは子供達なのです。
あの子達がいるから幸せだと思えるし、頑張ろうと思える。
ダイアナさんの言う通り、私は恋愛に向いていないのでしょう。
「……そうですね。私もこれからもっと精進して、奥様のお役に立てるよう努力致します」
「ふふ、頼もしいわね」
「貴方は、私の一等大切なお方ですから」
「……ありがとう」
私を一番だと言ってくれるのですね。
あの夜、私は誰の一番にもなれないと泣いていた私への慰め?それとも……
考えるのはここまで。私はそっと蓋をしました。
私が、そして貴方が、誰にも恥じない生き方をするために。
今度こそ、父のせいでも弟の為でもなく、自分の幸せの為に私は子供達の母であることを選んだのです。
それからは特に話すこともなく。
ああ、どうやら向かうのは庭園のようです。
「さあ、あちらでお待ちですよ」
「「ミッチェっ!!」」
お揃いの衣装を纏ったお二人が駆けて来ます。
私の最愛の天使たちが出迎えてくれました。
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