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5.伯爵邸の門前で家族愛を叫ぶ
「あの、今からでは駄目ですか?」
「こんな時間に訪問するやつはいないぞ。それでなくても会える可能性が低いのに、さらに心証を悪くしてどうするんだよ」
……確かに、日が暮れてからの訪問は失礼なのかも。でも、こうしてる間にもグレースはきっとてんてこ舞いになっているはず。
妊娠が分かったらお父さんの過保護が加速するもの。きっと、大慌てでお母さんを寝かしつけ、自分はそのそばに付きっきりになるだろう。
そうなると、グレースが家のことをすべてやらなくてはいけなくなるわ。
九歳のエイデンはお手伝いを頑張ってくれると思うけど料理は下手だし、七歳のノアと六歳のネイサン、四歳のバネッサはまだまだいたずら盛り。
何より、ニ歳になったばかりのエレノアは最近、何でも自分でやりたがって大惨事を引き起こす。
……だめ、想像しただけで今すぐに帰りたくなってきた。
「……嫌われてもいいんです。会えさえすれば」
「頑固だな」
「切羽詰まってるんです、お願いします!」
嫌がるレイさんにお願いをしまくり、何とか案内してもらう。
「やっぱりレイさんは優しいですね!」
「……お前の粘りがちだ」
そんなにうんざりした顔をしなくても。
それにしても、まさか辻馬車が必要な距離だとは思わなかった。王都って本当に広いのね。
「レイさん、家に帰るのが遅くなってしまうわね。ごめんなさい」
すっかり日が暮れた町並みを眺めながら、ようやくそのことに気がついた。
「別に。待っているやつなんざいないから平気さ」
「……そうなの? 私は逆。待っている人が多過ぎて心配なの」
「心配させているの間違いじゃないか?」
どうかしら。心配は……しているだろう。
でも、それ以上に働き手がいなくて困っている方だと思う。
「私、七人兄弟なの。あ、もう一人お母さんのお腹にいるから八人兄弟になったのだったわ」
「うん」
ただ、静かに相槌だけを打つレイさんはやっぱり優しいと思う。
「……お父さんはお母さんが大好きでね? きっと、悪阻は平気か。めまいはしないか。何か食べたい物や飲みたい物は? きっと今頃はそうやって大騒ぎしていると思う」
愛されていないわけではない。
ただ、お母さんという絶対の存在がいて、その光の強さに、私達の存在が霞んでしまうだけ。
思わず俯きそうになった私の頭を、レイさんがくしゃりとなでた。
何も言わず、不器用になでる彼の手に、なんでか不整脈が起きる。
……だめね。今日は心的疲労が大きかったのかな。でも、まだまだ。もっと頑張らなきゃ。だって、私はお姉ちゃんだもん。
すぅ、はぁと大きく深呼吸をした。
「レイさん、聞いてくれてありがと!」
「どういたしまして。そろそろ着くぞ」
お屋敷の正面には停められないと言われ、少し離れた場所で下ろしてもらう。
また、お金が飛んでいってしまった。
入り口に近づくと、やはり門番に止められた。
「私、お祖父様に会いに来ました」
私がお母さんのブローチを見せようとすると、門番は、
「こら、いたずらは止めて早く家に帰りなさい」
うそ、まったく信じてもらえない!
チラッとこちらを見ただけで、ろくに確認することなく、追い返そうとするではないか。
「え⁉ ちょっ、嘘じゃないんです!」
ブローチを見てくれたら分かるはずなのに、相手にする気がないのか全然見てくれない。
「ほら、言っただろう。相手にされるわけ無いって」
レイさんがまた頭をポンポンしてくれるけど、今はそれどころじゃない。
これくらいで諦めるくらいならここまで来ないんだってば!
「おじいちゃ──────んっっ‼」
いいもん! 門番さんが呼んでくれないなら、気付いてくれるまで叫んでやるっ!
「こら! 止めないか!」
「やだ、放して! おじいちゃーん! 助けてー‼ 家族はっ! 助け合うんだって、お母さんが言ってたの! だから、おじいちゃんも助けてよぉっ‼」
「こんな時間に訪問するやつはいないぞ。それでなくても会える可能性が低いのに、さらに心証を悪くしてどうするんだよ」
……確かに、日が暮れてからの訪問は失礼なのかも。でも、こうしてる間にもグレースはきっとてんてこ舞いになっているはず。
妊娠が分かったらお父さんの過保護が加速するもの。きっと、大慌てでお母さんを寝かしつけ、自分はそのそばに付きっきりになるだろう。
そうなると、グレースが家のことをすべてやらなくてはいけなくなるわ。
九歳のエイデンはお手伝いを頑張ってくれると思うけど料理は下手だし、七歳のノアと六歳のネイサン、四歳のバネッサはまだまだいたずら盛り。
何より、ニ歳になったばかりのエレノアは最近、何でも自分でやりたがって大惨事を引き起こす。
……だめ、想像しただけで今すぐに帰りたくなってきた。
「……嫌われてもいいんです。会えさえすれば」
「頑固だな」
「切羽詰まってるんです、お願いします!」
嫌がるレイさんにお願いをしまくり、何とか案内してもらう。
「やっぱりレイさんは優しいですね!」
「……お前の粘りがちだ」
そんなにうんざりした顔をしなくても。
それにしても、まさか辻馬車が必要な距離だとは思わなかった。王都って本当に広いのね。
「レイさん、家に帰るのが遅くなってしまうわね。ごめんなさい」
すっかり日が暮れた町並みを眺めながら、ようやくそのことに気がついた。
「別に。待っているやつなんざいないから平気さ」
「……そうなの? 私は逆。待っている人が多過ぎて心配なの」
「心配させているの間違いじゃないか?」
どうかしら。心配は……しているだろう。
でも、それ以上に働き手がいなくて困っている方だと思う。
「私、七人兄弟なの。あ、もう一人お母さんのお腹にいるから八人兄弟になったのだったわ」
「うん」
ただ、静かに相槌だけを打つレイさんはやっぱり優しいと思う。
「……お父さんはお母さんが大好きでね? きっと、悪阻は平気か。めまいはしないか。何か食べたい物や飲みたい物は? きっと今頃はそうやって大騒ぎしていると思う」
愛されていないわけではない。
ただ、お母さんという絶対の存在がいて、その光の強さに、私達の存在が霞んでしまうだけ。
思わず俯きそうになった私の頭を、レイさんがくしゃりとなでた。
何も言わず、不器用になでる彼の手に、なんでか不整脈が起きる。
……だめね。今日は心的疲労が大きかったのかな。でも、まだまだ。もっと頑張らなきゃ。だって、私はお姉ちゃんだもん。
すぅ、はぁと大きく深呼吸をした。
「レイさん、聞いてくれてありがと!」
「どういたしまして。そろそろ着くぞ」
お屋敷の正面には停められないと言われ、少し離れた場所で下ろしてもらう。
また、お金が飛んでいってしまった。
入り口に近づくと、やはり門番に止められた。
「私、お祖父様に会いに来ました」
私がお母さんのブローチを見せようとすると、門番は、
「こら、いたずらは止めて早く家に帰りなさい」
うそ、まったく信じてもらえない!
チラッとこちらを見ただけで、ろくに確認することなく、追い返そうとするではないか。
「え⁉ ちょっ、嘘じゃないんです!」
ブローチを見てくれたら分かるはずなのに、相手にする気がないのか全然見てくれない。
「ほら、言っただろう。相手にされるわけ無いって」
レイさんがまた頭をポンポンしてくれるけど、今はそれどころじゃない。
これくらいで諦めるくらいならここまで来ないんだってば!
「おじいちゃ──────んっっ‼」
いいもん! 門番さんが呼んでくれないなら、気付いてくれるまで叫んでやるっ!
「こら! 止めないか!」
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