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中編
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今日は結婚記念日だからと、私とクライドは一日お休みの予定だ。
だからこんな朝早くからやってくる使用人はいない。要するに喧嘩を止める者もいない。
「どうして……。君は父上にその美しい体を差し出すのか! そんなの考えただけで気が狂いそうだ‼」
「私だって同じだとどうしてわからないの⁉ それに、お義父様と寝るのは数回だけど、側室なんて一生ものじゃない! そっちのほうが酷いわ!」
「寝るっていうな! そんな、そんなの……」
クライドの瞳からポロポロと涙があふれた。
「……わかった。側室は持たない」
「ほんと?」
「その代わり覚悟して」
「……え?」
「よりにもよって父上と浮気だなんて二度と考えられないようにしてあげる」
いや、貴方こそ浮気どころか第二の妻を──
そう文句を言おうとしたのに、まるで噛み付くように口づけられ、言葉を封じられた。
「んっ~~」
「好きだ、アイレット。すき……すき……私だけのアイだ」
何度も口づけながら、愛の言葉を降らせていく。
「好きならよそ見しないで、ちゃんとあがきなさいよ」
「……うん、愛してる」
「次に言ったら、断りもなくお義父様を襲うわ」
「許すはずがないだろう。君に触れていいのは私だけだ」
その私だけを増やそうとするからこうなったのだと言ってやりたかったけど、そこからはもう貪りまくられて何も言えなかった。
「……も……むり……しんじゃう」
「覚悟しろと言っただろう」
「あっ!」
本当に死ぬ……だって今、何時……。
何度も抱かれ、時折、水や果物を口に入れられながら、さらに抱かれた。
……どこにこんな元気があったの、この人。
どうやら、少し眠っていたらしい。気がつけば二人で湯船につかりながら、彼が手ずから洗ってくれていた。
「……くすぐったい」
「なに、誘ってる?」
ちゅっと、うなじにキスされてビクリと反応してしまう。
「……違うから」
これ以上は本当に死ぬ。明日は筋肉痛になっていそうだわ。
「……アイレット。私を捨てないでくれ」
縋るように私を後ろから抱き込み、首筋に顔を埋めながら懇願された。
「言い出しっぺはクライドよ」
「二度と言わない。あんなにも不快だとわかっていなかった私が悪い。……もう少しで父上を殺すところだった」
「……子ども。宿っているといいわね」
クライドの怖い言葉には返事をしない。
だって、ちょっと嬉しいなんて言ってしまったら大変なことになる。
だから、まだ、何もない薄いお腹にそっと手を当てた。
「うん。アイに似た子がほしい」
私の手にクライドの大きな手が重ねられる。
「……どっちに似てもきっと可愛いわよ」
本当は怖い。今回を乗り切っても、子どもができない限り、いつかは必ず側室を持つ日が来るのだ。
「二人で逃げちゃおうか」
「……はい?」
「私以外にも王子はいるんだ。逃げてもいい気がしてきた」
「いや、よくないでしょう」
「いいんだ。父上なんて苦労したらいい」
すっかり陛下が敵認定されてしまったようだ。
「知らなかった。あなたってそんなに私のことが好きだったの?」
「自分でも知らなかった。こんなにも好きだったなんて」
見つめ合い、どちらからともなくキスをする。
愛おしい。こんなにも大切だなんて、私だって知らなかった。
「すき」
「うん、私も好きだ」
せっかくお風呂に入っている間にきれいにしてくれていたベッドを、また、ぐちゃぐちゃにしてしまった。
「側室は必要ない。もし、あと三年たっても子どもができなければ、私は王太子から降りる」
クライドが本当に宣言してしまった。
これには本当に驚いた。
「最初からこうしていればよかった」
「でもきっと、あの喧嘩は必要だったのよ」
だって、あれがなければ、私達は互いの愛を理解することができなかったのだから。
「そうだね。……ああ。もしかしたら、そのために私達にはまだ与えられなかったのかもしれないな」
「……そうかもね」
これからどうなるのかはわからない。それでも。
きっと、今の私達なら乗り越えられる。そう思えた。
だからこんな朝早くからやってくる使用人はいない。要するに喧嘩を止める者もいない。
「どうして……。君は父上にその美しい体を差し出すのか! そんなの考えただけで気が狂いそうだ‼」
「私だって同じだとどうしてわからないの⁉ それに、お義父様と寝るのは数回だけど、側室なんて一生ものじゃない! そっちのほうが酷いわ!」
「寝るっていうな! そんな、そんなの……」
クライドの瞳からポロポロと涙があふれた。
「……わかった。側室は持たない」
「ほんと?」
「その代わり覚悟して」
「……え?」
「よりにもよって父上と浮気だなんて二度と考えられないようにしてあげる」
いや、貴方こそ浮気どころか第二の妻を──
そう文句を言おうとしたのに、まるで噛み付くように口づけられ、言葉を封じられた。
「んっ~~」
「好きだ、アイレット。すき……すき……私だけのアイだ」
何度も口づけながら、愛の言葉を降らせていく。
「好きならよそ見しないで、ちゃんとあがきなさいよ」
「……うん、愛してる」
「次に言ったら、断りもなくお義父様を襲うわ」
「許すはずがないだろう。君に触れていいのは私だけだ」
その私だけを増やそうとするからこうなったのだと言ってやりたかったけど、そこからはもう貪りまくられて何も言えなかった。
「……も……むり……しんじゃう」
「覚悟しろと言っただろう」
「あっ!」
本当に死ぬ……だって今、何時……。
何度も抱かれ、時折、水や果物を口に入れられながら、さらに抱かれた。
……どこにこんな元気があったの、この人。
どうやら、少し眠っていたらしい。気がつけば二人で湯船につかりながら、彼が手ずから洗ってくれていた。
「……くすぐったい」
「なに、誘ってる?」
ちゅっと、うなじにキスされてビクリと反応してしまう。
「……違うから」
これ以上は本当に死ぬ。明日は筋肉痛になっていそうだわ。
「……アイレット。私を捨てないでくれ」
縋るように私を後ろから抱き込み、首筋に顔を埋めながら懇願された。
「言い出しっぺはクライドよ」
「二度と言わない。あんなにも不快だとわかっていなかった私が悪い。……もう少しで父上を殺すところだった」
「……子ども。宿っているといいわね」
クライドの怖い言葉には返事をしない。
だって、ちょっと嬉しいなんて言ってしまったら大変なことになる。
だから、まだ、何もない薄いお腹にそっと手を当てた。
「うん。アイに似た子がほしい」
私の手にクライドの大きな手が重ねられる。
「……どっちに似てもきっと可愛いわよ」
本当は怖い。今回を乗り切っても、子どもができない限り、いつかは必ず側室を持つ日が来るのだ。
「二人で逃げちゃおうか」
「……はい?」
「私以外にも王子はいるんだ。逃げてもいい気がしてきた」
「いや、よくないでしょう」
「いいんだ。父上なんて苦労したらいい」
すっかり陛下が敵認定されてしまったようだ。
「知らなかった。あなたってそんなに私のことが好きだったの?」
「自分でも知らなかった。こんなにも好きだったなんて」
見つめ合い、どちらからともなくキスをする。
愛おしい。こんなにも大切だなんて、私だって知らなかった。
「すき」
「うん、私も好きだ」
せっかくお風呂に入っている間にきれいにしてくれていたベッドを、また、ぐちゃぐちゃにしてしまった。
「側室は必要ない。もし、あと三年たっても子どもができなければ、私は王太子から降りる」
クライドが本当に宣言してしまった。
これには本当に驚いた。
「最初からこうしていればよかった」
「でもきっと、あの喧嘩は必要だったのよ」
だって、あれがなければ、私達は互いの愛を理解することができなかったのだから。
「そうだね。……ああ。もしかしたら、そのために私達にはまだ与えられなかったのかもしれないな」
「……そうかもね」
これからどうなるのかはわからない。それでも。
きっと、今の私達なら乗り越えられる。そう思えた。
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